衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十六年十一月十二日提出
質問第三九号

文化庁著作権課が最近一年間に実施したパブリックコメント及び意見募集等に関する質問主意書

提出者  川内博史




文化庁著作権課が最近一年間に実施したパブリックコメント及び意見募集等に関する質問主意書


 文化庁長官官房著作権課(以下「著作権課」という。)は最近一年間にパブリックコメント(平成十一年三月二十三日閣議決定)を一件、意見募集を三件実施しているが、その実施方法や寄せられた意見への対応を批判ないし疑問視する声が意見提出者から相次いでいる。著作権制度は著作権者及び著作隣接権者(以下「著作権者等」という。)のみならず一般消費者等の著作物利用者(以下「利用者等」という。)が多大な影響を受ける事項であり、施策の実行においては団体としての意見を表明する事が困難である利用者等の意見をパブリックコメント等の方法により十分に聴取、忖度することは重要である。しかし、その実施に際していやしくも国家公務員たる者が国民から幅広く意見を募るに際して著作権者等の主張に偏し、利用者等の意見を軽視する姿勢であってはならないのは日本国憲法第十五条第二項「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」を挙げるまでも無く、当然のことである。
 また、総務省が来年度以降にパブリックコメント制度を法制化する準備を進めている等の諸状況を踏まえ、今後の著作権課におけるパブリックコメント及び意見募集実施に当たって改善すべきと考えられる点を中心に質問する。

一 平成十五年十二月十日より同月二十四日まで実施された『「文化審議会著作権分科会報告書(案)」に関する意見募集』(以下「報告書(案)意見募集」という。)、平成十六年九月三十日より十月十三日まで実施された『著作権法施行令の改正に関するパブリックコメント(意見提出手続)』(以下「政令パブリックコメント」という。)並びに平成十六年十月八日より同月二十一日まで実施された『著作権法改正要望事項に対する意見募集』(以下「改正要望意見募集」という。)はいずれも実施期間が二週間と短期間であるが、パブリックコメント及び意見募集ごとにその理由を明らかにされたい。また、報告書(案)意見募集が二週間しか実施されなかったことに関して河北新報・平成十五年十二月二十八日付社説は「文化庁は、急きょ二週間にわたりパブリックコメントを受け付けたが、期間も、必要な情報の提供も十分ではなかった。法案提出のスケジュールを優先した形式的処理でなく、消費者の支持が得られるような議論をじっくり進めることを求めたい」と批判しているが、この後に実施された三件のパブリックコメント及び意見募集のうち、平成十六年八月十六日より九月三十日まで実施された『著作権等管理事業法の施行状況等に関する意見募集』では一月半と十分な周知徹底を図る期間設定が為されたにも関わらず、他の二件においてはこうした批判を顧みること無く、従前通り二週間しか実施していないのは明らかに問題があるのではないか。特に、本年六月二日の衆議院文部科学委員会における政府参考人の答弁では報告書(案)意見募集に関連して「期間につきましても、通常一カ月行うということでございますけれども、パブリックコメントということではなく行ったものでございますから二週間という期間になったわけでございますが」と、明らかに平成十一年三月二十三日閣議決定を根拠とするパブリックコメントの場合は「一カ月」を基準に実施期間を設定するという認識を有しているものと認められるにも関わらず、その後に実施した政令パブリックコメントは報告書(案)意見募集と同様に二週間しか行わなかった理由を明らかにされたい。
二 報告書(案)意見募集について、質問する。
 1) 一において指摘した河北新報社説では「パブリックコメント」という表現が用いられているが、前述した政府参考人の答弁や本年六月二十三日に著作権課長が行った講演では本意見募集について再三「パブリックコメントと呼ばれる公式な物ではない」との見解を表明している。他方、本意見募集に際して寄せられた意見の現物を見る限り、音楽業界や出版業界の関係者が大挙して同一文面の組織票を動員した形跡が認められるが、こうした業界関係者の組織票は本意見募集が「官公庁によって実施される公式な物」であると認識していたからこその行動と考えるべきではないのか。また、同一文面の業界関係者の組織票の存在をどのように認識しているか、これらの組織票をどのように評価したのか、明らかにされたい。
 2) 著作権課長は本意見募集の実施期間中である平成十五年十二月十六日に成蹊大学著作権特殊講義において「皆さん、何か意見ありますか。もし意見があれば最後に言おうと思ったけれど、文部科学省のサイトのパブリックコメント・意見という所で著作権分科会の報告書案がかかっていて意見を求めています。だから、今の話を聞いて、こういうところは納得できないとか、自分はこう思うとか、よかったら書いてみてください。立法政策論の観点から、皆さんには考えてもらいたいのです。自分は消費者だから、安いものを買いたいからと、それだけでは駄目です。そういうふうに書いてきている人も随分います。今日パソコン開けたら、上から画面いっぱいに意見があって、反対している人も相当あります。いろいろ読んでいくと、もうちょっと考えてほしいなというのが多いのです。皆さんがもし書くのだったら、今の話を聞いて、政策論としていろいろと考えてもらえばいいと思います」と、反対意見を批判するが如き発言を行った事実が議事録により認められる。本意見募集に寄せられた意見の現物を参照する限り、反対意見は日本の商業用レコードが欧米先進国に比して著しく高額であることを指摘するのみならず、国際条約における内外無差別原則の存在を理由に還流防止措置が洋楽輸入盤の流通阻害に繋がることを指摘するものや、発売元のレコード会社においても正常な再生を保証していないにも関わらず返品・交換には一切応じないことを表明しているコピーコントロールCDの問題を指摘するものなど多種多様であり、著作権課長がこの講演で行った批判は当たらないと思われるが、政府の見解を求める。また、意見募集の実施期間中に一方で業界関係者の同一文面による大量の組織票を許容しておきながら、利用者に対しては批判を行うという特定の立場に偏した発言を公にすることは、意見募集の公正さを著しく損なうものではないのか。
 3) この講演で述べられている認識は憲法第十五条第二項に反し、或いは国家公務員倫理法(平成十一年八月十三日法律第百二十九号)第三条における「職員は、国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないこと」の自覚が著しく欠如しているものではないのか。
三 政令パブリックコメントについて質問する。
 1) 本パブリックコメントの募集に際して「七年を超えない範囲内において政令で定める期間」の算定根拠について「関係権利者の利益の確保と、関係事業者や消費者の利益の調和を図ることを基本としつつ、音楽レコードの国内市場における流通期間や、相当の売上げが期待される期間を総合的に勘案して検討した結果」であるとの至って簡略な説明しか行わず、算定の根拠たる資料を公表しなかった理由は何か。
 2) 規制の設定又は改廃に係る意見提出手続に関する閣議決定(平成十二年十二月二十六日一部改正。以下「閣議決定」という。)の「(3)公表方法」においては「なお、複数の方法を活用する場合であって、公表する内容が相当量に及ぶ場合には、案等の概要と公表資料全体の入手方法等を明確にしておけば、活用する公表方法の全てにおいては、公表資料全体を公表する必要はない。」とされているが、閣議決定「(3)公表方法」には「(考え方)(1)公表資料については、関心を持つ一般の国民が入手できるようにする必要があり、公表資料自体がさまざまな方法によって広く周知されることが望ましい。」との但し書きもあり、本パブリックコメントのように政令で定める期間を「四年」とする算定根拠についての資料を全く提示せずに実施するのはこの「(考え方)」に反しているのではないか。
 3) 本パブリックコメントは寄せられた意見の大多数を否定し、文化庁による原案を維持する結果とされたが1)及び2)で指摘したとおり、政令で定める期間を「四年」とする算定根拠についての情報開示が一般国民に対して全く行われない中で決定後に「後出し」のような形で算定根拠に用いた資料の一部を公表するという今回の手法は「始めに結論ありき」の欺瞞的手法であり、このような手法によるパブリックコメントの実施は「規制の設定又は改廃に当たり、意思決定過程において広く国民等に対し案等を公表し、それに対して提出された意見・情報を考慮して意思決定を行う」というパブリックコメント制度本来の趣旨を著しく損なうものではないか。また、政府答弁においても再三にわたり還流防止措置自体の見直しを公約している等の事情に鑑みて、施行後一年程度を目処に法律の施行状況を検証し、改めて政令の見直しをパブリックコメントに諮るべきではないか。それぞれについて、政府の見解を求める。
四の一 改正要望意見募集及び、本意見募集の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(以下「小委員会」という。)での取扱いについて質問する。
 1) 今後の小委員会においては、本意見募集において寄せられた意見をどのような形で検討材料として用いる予定なのか。
 2) 本意見募集に先立つ形で関係諸団体に対する意見照会を行い、関係諸団体が提出した要望に対する意見募集という形式を取った理由は何か。「関係諸団体に対する意見照会は一般国民及び関係省庁に対する意見募集に優先して行われるべきものである」というのが文化庁の認識なのか。
 3) 小委員会における「『著作権法に係る検討事項(仮題)』の整理」に際して本意見募集で寄せられた意見は、関係諸団体への照会に際して寄せられた要望及び関係省庁の意見、各委員及び専門委員(以下「委員等」という。)が審議会事務局に提出した意見との間でどのような位置付けになっているのか。
 4) 本意見募集に際しては、文化庁が指定する「柱立て」ごとに電子メールの件名を変更したり、細目番号を必ず使用することとされるなど、記入方法が難解かつ煩雑であり意見を収集する側の都合が優先されている感が否めない。今後、同様の形式で意見募集を実施する際は知的財産戦略本部が実施しているようにCGIを用いたメール送信フォームを設置するなどの方法を検討すべきではないか。
 5) 本意見募集に際して資料2−1「関係諸団体より寄せられた要望」(以下「資料2−1」という。)が文部科学省のウェブサイト上で公表された際にPDFファイル形式が使用されていたが、資料2−1のPDFファイルは一旦、紙に印刷したものを画像の形でスキャンしているために光学式文字読取処理(以下「OCR処理」という。)がなされておらず、視覚障害者が音声読み上げソフトなどを使用することができなかったという問題が寄せられた意見において指摘されている。資料1「著作権法改正要望について(照会)」においては、各団体に対して著作権課法規係へ電子メールで提出するように求めており、PDFファイル作成に際しては提出された文章ファイルを一旦、紙に印刷して画像の形でスキャンせずとも自動的にOCR処理がなされた状態でPDF出力が可能だったはずである。今後はこの点を踏まえPDFファイル形式で資料を公開する場合、OCR処理を行った状態で公開すべきではないか。
四の二 本意見募集が参考資料として各委員等に配付された小委員会の進行について質問する。
 1) 本年十一月二日の小委員会において各委員等より提出された意見の中には「要望に対して専門的な立場から必要性・重要性を評価する」という小委員会の目的を逸脱し、委員等個人の要望又は委員等が特定業界の要望を代弁する形となっているものが散見されるが、文化審議会は委員等個人ないし委員等が代弁する特定業界の要望を実現する場ではないはずである。この点について政府の見解を求める。
 2) 小委員会における今後の検討の方向性の素案は審議会事務局が主査と協議のうえ決定するとのことであるが、決定に際しては本意見募集において寄せられた意見を十二分に尊重し、決定するのは飽くまでも「方向性」の素案であって、審議会事務局が各委員等の意見やその他の材料を根拠に個別の具体的事項を小委員会における検討課題とするよう小委員会内外の場において各委員等に求めるものではないと思われるが、この点について政府の見解を求める。
 3) 本意見募集は本年十一月二日の小委員会開催日程に合わせて実施され、寄せられた意見は各委員等に郵送で配布されたとのことであるが、当日は各委員等から提出された意見が読み上げられるだけで本意見募集において寄せられた意見を基に議論が行われる機会は全く無く、出席者からもこの点について批判が出ている。小委員会の日程に基づき本意見募集を実施したのであれば、寄せられた意見を委員等に配布のうえ、その内容を周知徹底してから各委員等に意見を求めるのが本来あるべき順序ではないのか。
五 著作権課長は本年九月十七日に開催された著作権フォーラムで行った講演に際して「今回の改正に当たっては『著作権は文化のためだけではない』という意識で取り組んだ」と発言したと報じられているが、この発言は著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号)第一条の「文化の発展に寄与することを目的とする」と定められている基本理念や、文部科学省設置法(平成十一年七月十六日法律第九十六号)第二十七条において「文化庁は、文化の振興及び国際文化交流の振興を図るとともに、宗教に関する行政事務を適切に行うことを任務とする。」と定められている文化庁の設置目的を逸脱しているのではないか。この点に関しては、東京新聞・平成十六年六月十八日付社説でも「著作権など保護の名の下に、実際は業界の利益擁護に走っているとしか思えない文化庁の姿勢にも問題がある。文化庁設置の目的はわが国文化の振興で、特定業界の保護ではない。文化庁の役人も公務員の一員のはずだ。国民全体の奉仕者との自覚を忘れてはならない」と指摘されているところであるが、こうした批判について政府はどのように考えているのか。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.