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平成十六年十二月二日提出
質問第七四号

四国電力伊方原発等のコンクリートのアルカリ骨材反応に関する質問主意書

提出者  吉井英勝




四国電力伊方原発等のコンクリートのアルカリ骨材反応に関する質問主意書


 二〇〇四年十月十四日に提出した「原子力発電所で使用されているコンクリートのアルカリ骨材反応に関する質問主意書」に対する答弁書に先立って、すでに原子力安全保安院は、中部電力浜岡原発四号機と東京電力福島第一、第二原子力発電所について、コンクリートの「試験成績書」の改ざんや試験サンプルのすり替えという不正行為を行ったことを確認したと記者発表していた。
 コンクリート構造物のアルカリ骨材反応については、国土交通省が二〇〇三年三月十九日に発表した通知文書において、「アルカリ骨材反応に起因する橋梁の損傷は、主にコンクリートの膨脹によるひび割れが問題とされ、コンクリート内部への水分の供給を防ぎアルカリ骨材反応の進行を抑制する対策を実施して」きたが、調査によって、さらに「鉄筋の破断が報告され」たとした。
 すなわち、アルカリ骨材反応は、コンクリートの膨脹や劣化とともに、鉄筋の破断まで引き起こすことが示された。この国土交通省調査報告に関わって、さらに指摘すると、大断面のコンクリート構造物では、ひび割れの生じている表層部よりも内部においてコンクリートの強度低下などの劣化現象が著しいことが明らかにされている。すなわち、アルカリ骨材反応はコンクリート部材中において一様に進行するのではなく、それに伴う異常現象も均一には起こらないということである。
 ところで、昨年九月に独立行政法人原子力安全基盤機構(当時・財団法人原子力発電技術機構・原子力安全解析所)は、「確率論的手法を用いた設計地振動の作成手法の整備に関する報告書」を出して、その中で原発の地震時の炉心損傷確率を発表した。しかし、この報告書の中における原発の損傷確率は、コンクリート構造物の膨脹・劣化、あるいは鉄筋の破断や腐食を含めた検討ではなかった。
 阪神大震災や今回の新潟中越大震災などを上回る大規模地震の可能性が予測されている今日、原子炉本体はもとより、配管類やタービンと発電機など、原発の安全性を揺るがす重大な問題についての検討が必要である。
 そこで、十月十四日の質問主意書に対する十一月二十六日閣議決定の政府答弁書を踏まえて、以下に示す問題についての政府の取り組みについて質問する。

(一) 答弁書によると、「原子炉に係る主要な建物及び構築物のコンクリートから試験体を採取し、長期的にアルカリ骨材反応が起こる可能性を確認するための促進膨張試験及びコンクリートの強度を確認するための圧縮強度試験を第三者に委託して早急に実施するよう指示した」とある。
 セメント中のアルカリ量の高い時期である一九六〇年代から八〇年代初めにかけて建設された原発については、セメント中のアルカリ量(酸化ナトリウムと酸化カリウムの合計量を酸化ナトリウムに換算した量)と粗骨材及び細骨材の中に含まれるアルカリ反応性成分の組成、及び水/セメント比で示される加水の状況を調べることが重要だとされているが、この調査も指示しているのか。
(二) これらの原発の「アルカリ骨材反応性に係る調査を行っているところであり、他の原発のアルカリ骨材反応に対する健全性の確認については、今後、当該調査を踏まえ、適切に対処してまいりたい」と答弁している。
 しかし、関西電力美浜三号機については、二〇〇〇年二月二十二日の予算委員会で取り上げたものであり、当時の通産大臣は確認調査を行うことを答弁していたものであり、こちらの調査結果は出ているのではないのか。その結果を明らかにされたい。
(三) 二〇〇二年九月に、四国電力は、伊方原発一号機のタービン発電機架台のアルカリ骨材反応による亀裂は無数にあり、建設時から約二十年で架台が三十二ミリメートル膨張していた事などを「報告書」で明らかにした。
 国の調査によって、以下の亀裂の確認とその原因について何が明らかになったのかを示されたい。
 一) タービン架台上面のPタイルの歪みは、Pタイルの下部でどのようなコンクリートの膨張や亀裂があって生じたものなのか。
 二) 架台側面上部と真ん中に長くできた亀裂は、どうしてできたのか。
 三) アルカリ分の多いセメントを用いた場合、コンクリートの中性化は急速に進行することが指摘されている。中性化の進行(或る時点における中性化深さ)はどの程度であったのか。また、中性化した部分と内部の非中性化部分の圧縮弾性係数の値はどのようなものであったのか。
 四) 鉄骨・鉄筋の腐食はどうであったのか。鉄筋の破断まではいかない程度のコンクリートの膨張や腐食であったのか。それとも膨張の影響ないし腐食は全くなかったのか。
(四) 四国電力は、この膨張・亀裂の発生により、「タービン発電機の軸受部における軸方向の隙間の変化が確認された」とし、また「タービンミサイル評価については、国の安全評価を受けており、問題ない」とした。
 しかし、タービンの軸がズレることは、高速回転においては軸の異常振動の原因ともなり、実際、諸外国の原発などで、タービンの軸の激しい振動が生じた結果、動翼が破損して、それがタービンミサイルとなってケーシングを突き破って飛び出して原発の配管など機器類を破損させる事故が起こっている。
 また、タービンと発電機の軸のズレなどは、カップリングの部分で破損する可能性を持っている。実際、関西電力海南火力発電所一号機では、一九七〇年に振動試験を行っている時、メカニカルシールの部分で油火災が発生し、それが冷却用水素の火災を引き起し、二・六トンのカップリング部のカバーが屋根を突き破って約百メートルも吹き飛ぶ事故が発生した。
 こうした事故例があるにもかかわらず、伊方原発でアルカリ骨材反応による架台の膨張や亀裂が無数に発生していても、原発の健全性は保たれているとした根拠は何か。
(五) こうした事故例は、
 一) すべての原発について、アルカリ骨材反応によるタービン架台の膨張や亀裂の発生の有無の調査を行うこと、
 二) コンクリート構造物の中で、アルカリ骨材反応の起こっていない健全部分とアルカリ骨材反応によって強度の低下を来している部分が共に存在する場合、コンクリート構造物の不均一性が、据付け機器類や貫通する配管類にどのような影響を及ぼすかを検討し、個々の原発について評価すること、
 三) 大規模地震発生時に、アルカリ骨材反応の進行している原発のコンクリート構造物の歪みがどう現れるかを検討すること、
 四) 前記二)と三)に合わせて、すでに進行している原発の配管類の減肉や、金属疲労や、溶接時の残留熱応力などが、大規模地震発生時に原発の健全性にどのような影響を及ぼすことになるか評価すること
 −などについて、総点検をはじめ総合的な取り組みが必要と考えるが、前記四項目についての政府の見解を求める。またすでに点検計画のあるものについては、それを示されたい。
(六) 前記(独)原子力安全基盤機構が発表した「確率論的手法を用いた設計地振動の作成手法の整備に関する報告書」において、原発の地震時の炉心損傷確率を出しているが、この中で、サイト一(東京電力福島原発)の損傷確率を〇・〇〇〇〇一七一〇、サイト二(関西電力大飯原発)では〇・〇〇四四八八、サイト三(中部電力浜岡原発)では〇・〇二三七〇とした。
 しかし、この中ではコンクリート構造物の膨脹・劣化、或いは鉄筋の破断や腐食までは検討にいれていない。前回の質問主意書で取り上げた東京電力福島原発や中部電力浜岡原発などで「生コン納入業者の不正」によってアルカリ骨材反応が進行していたり、大飯原発に隣接する関電美浜原発での加水問題、四国電力伊方原発での明白なアルカリ骨材反応によるコンクリートの膨張や劣化がある事例を考えれば、原発の地震時の炉心損傷確率は前記「報告書」よりさらに高くなるのではないのか。

 右質問する。



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