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平成十七年十月二十八日提出
質問第四三号

BSE問題に関する質問主意書

提出者  川内博史




BSE問題に関する質問主意書


 米国産牛肉のわが国への輸入が年内にも再開される、ということが報道されている。食品安全委員会のプリオン専門調査会では「米国・カナダの輸出プログラムにより管理された牛肉・内臓を摂取する場合と、我が国の牛に由来する牛肉・内臓を摂取する場合のリスクの同等性に係る評価」について議論が行われているが、これも十一月十六日に予定されている日米首脳会談までには結論が出る、と同じように報道されている。
 しかし、BSE問題には不明な点が数多くあり、プリオン専門調査会の議論でも資料・データの不足、未検討部分が少なからず残されている。国民の健康に重大な影響のある食品の安全性について、科学的知見に基づいて、客観的かつ中立公正に行われるべき、食品安全委員会の議論が、日米両国政府の政治的判断によって左右されることがあってはならないのは当然であるが、事態は重大な局面を迎えている。
 よって、以下の通り質問する。

一 日本と米国のBSE対策について
 (1) 平成十四年のBSE対策特別措置法制定以来、わが国のBSE対策は
 @ と畜場での検査(全頭検査)
 A 厳格な飼料規制
 B 特定危険部位(SRM)の除去
 C トレーサビリティーの確立
 の四本柱を中心に行われてきた。今後ともこの四本柱を中心に、これらをさらに充実・強化して、わが国からBSEを根絶することが政府の方針であると理解してよいか。政府の見解を求める。
 (2) 一方、米国のBSE対策の現状はどうなっていると政府は認識しているのか。
 四本柱のそれぞれについて、米国と日本の対策の実情を比較し、米国のBSE対策が、BSEの蔓延防止と根絶のために日本の対策と同等、あるいは同等以上の有効性を持っていると認識しているのか。四本柱のそれぞれについて政府の見解を求める。
二 米国の飼料規制について
  米国の飼料規制が、BSEの蔓延防止のためには、非常に不十分であると、多くの専門家が指摘している。
 (1) 米国では牛由来の肉骨粉を牛に与えることは禁止されているが、これを豚や鶏に与えることは禁止されていない。また、鶏糞や鶏舎のごみ(チキンリッター)を牛の飼料とすることが許可されている。毎年一〇〇万トンの鶏糞が牛に与えられているが、鶏舎の床などからかき集めるために、この中に肉骨粉入りの飼料が混入している可能性が大きい。米国食品医薬品局(FDA)のクロフォード長官代理は、肉骨粉の鶏糞への混入率を三〇%程度と見積もっている(米国化学会発行Chemical & Engineering News August4.2003 Volume81,Number 31 CENEAR 8131 pp.22−24 ISSN 0009−2347)。この情報の事実確認の上、このことが米国でのBSE蔓延のリスクを増幅させること、また米国産牛肉のリスクを増大させることはないのか、政府の見解を求める。
 (2) 食品安全委員会プリオン専門調査会は(1)の情報を承知しているか。政府の答弁を求める。このリスクについて専門調査会で検討するべきだと思うが、政府は事実確認された(1)の情報を専門調査会に提出すべきではないか。答弁を求める。
 (3) 食品安全委員会プリオン専門調査会は、上記に加え、複数の委員が「鶏や豚に与えられた異常プリオン蛋白質は排出される=糞となる」と調査会以外の場で見解を述べているが、調査会では議論されていない。そのことについて専門調査会において(1)とともに検討するべきだと思うが、政府の見解を求める。
 (4) 米国のレンダリング(牛、豚、ニワトリの解体残物を熱処理し肉骨粉などへ加工すること)業界団体であるNational Renderers Associationが発表した二〇〇五年四月のマンスリーレポートによれば、二〇〇四年度に牛のSRM(特定危険部位)が肉骨粉に一六万トン、動物性油脂に一六万トン混入している、と報告されている。この情報を事実確認の上、このことが米国でのBSEの蔓延リスクを増幅させること、また米国産牛肉のリスクを増大させることはないのか、政府の見解を求める。
 (5) 食品安全委員会プリオン専門調査会は(4)の情報を承知しているか。政府の答弁を求める。このリスクについて専門調査会で検討するべきだと思うが、政府は事実確認された(4)の情報を専門調査会に提出すべきではないか。答弁を求める。
 (6) 米国では牛のSRM由来の動物性油脂や牛の血漿たん白を代用乳などの形で牛の飼料とすることが認められている。この事実を確認の上、このことが米国でのBSEの蔓延のリスクを増幅させること、また米国産牛肉のリスクを増大させることはないのか、政府の見解を求める。
 (7) 食品安全委員会プリオン専門調査会は、(6)の事実を承知しているか。政府の答弁を求める。このリスクについて専門調査会で検討するべきだと思うが、政府は事実確認された(6)の情報を専門調査会に提出すべきではないか。答弁を求める。
 (8) 米国ではミンク脳症(TME)や狂鹿病(CWD)が発生しているが、そのミンクや鹿がレンダリングサイクルの中に混入し、肉骨粉となって鶏糞やチキンリッターを介して、牛に与えられ、あるいは動物性油脂となって牛に与えられている。また動物性油脂は液体で安定が悪いため、油と不純物が分離し、一部の油脂において不純物が規制濃度より高濃度となることが飼料の専門家から指摘されている。これらを事実確認の上、このことが米国でのBSE蔓延のリスクを増幅させること、また米国産牛肉のリスクを増大させることはないのか、政府の見解を求める。
 (9) 食品安全委員会プリオン専門調査会は、(8)の事実を承知しているか。政府の答弁を求める。このリスクについて専門調査会で検討すべきだと思うが、政府は事実確認された(8)の情報を専門調査会に提出すべきではないか。答弁を求める。
 (10) わが国は家畜飼料や肥料などを米国からの輸入に頼っているが、米国でBSEの飼料規制が不十分であるが故に、わが国へ輸出される飼料や肥料が汚染される可能性がある。現に国内外問わず、米国産の植物性の輸入飼料などから、動物の骨などが検出されている。国内家畜防疫などの観点からも、米国への飼料規制への提言を行うべきだと思うが、政府の見解を求める。
 (11) 食品安全委員会プリオン専門調査会は、(10)の事実に関し、国内家畜防疫の観点からもこのリスクについて検討すべきだと思うが、政府はこの(10)の事実についての資料を専門調査会に提出すべきではないか。答弁を求める。
 (12) SRM除去が完全に行えないことは、平成十七年五月二十日の米国産牛肉等のリスク管理措置に関する意見交換会にて、厚生労働省医薬食品局外口食品安全部長が指摘しているが、牛は一rの脳、サルは五〇rの脳ジュースという微量の病原体で経口感染したという報告がある。r単位でSRM除去を行うことはまず無理と考えるが、五月の食品安全委員会答申およびWHOの勧告と合わせ、米国の規制で国民の安全を確保できると考えるのか、政府の見解を求める。
 (13) 食品安全委員会プリオン専門調査会は、米国牛の安全性評価において、動物油脂について、輸入牛脂のみの侵入評価のみを行い、米国国内で、交差汚染も含め、規制のない牛や鹿などの動物油脂、血漿蛋白飼料リサイクル、つまり感染性増幅をリスク評価に含めていない。米国内でレンダリングによって製造された動物性油脂の科学的な検査をした上で、その資料を専門調査会に提出すべきではないか。政府の答弁を求める。今後、血液から異常プリオン蛋白質が検出できるようになるという報告がなされ、尿の汚染の論文も先日発表された。牛がたった一rの危険部位でも経口感染することが科学的に判明した現在、油脂、および血漿たん白の実態調査を行い、リスクをもっと考慮すべきと考えるが、政府の見解を求める。また、たたき台の米国内での増幅リスク試算において、EFSA(欧州食品安全庁)のWorking Group report on the Assessment of the Geographical BSE−Risk(GBR)of UNITED STATES OF AMERICA,2004に掲載されているレンダリング工程の実態と評価、「米国のレンダリング工程は大気圧の下で(つまり加圧することなく)加工しているから、BSE感染性が工程に入れば、これを大きく減らすとは考えられない。」「レンダリング産業は感染性を減らすとは立証されない工程で操業している。従って、レンダリングは『不合格』だったし、今も『不合格』」という評価を無視し、「通常のレンダリングでは感染価は約一\一〇〇に減少する」とする試算の科学的根拠はないと国会でも答弁されている。政府がEFSA(欧州食品安全庁)の米国レンダリング工程についての資料を専門調査会に提出したにもかかわらず、それらを無視して試算が行われていることについて、政府の答弁を求める。
三 米国におけるクロイツフェルト・ヤコブ病の発生および公衆衛生について
 (1) 米国ニュージャージー州やアイダホ州など各地でクロイツフェルト・ヤコブ病の集団発生が報道されている。この件に関して、政府は、米国当局に対して事実確認を行ったのか。答弁を求める。政府は、これらの症例がBSE由来の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)ではないとの確信を持っているのか。政府の見解を求める。
 (2) 英国では、vCJDを発症した患者が潜伏期間中に献血を行って、それが血液製剤となって、数千人に対して警告が発せられた事例がある。米国でも、vCJDの患者が一例出ているが、米国でvCJDの症例が出た場合、HIVやHCVなどと異なり、感染血液をスクリーニングする科学技術は現時点で開発されていないが、その患者の血液が、血液製剤などによって、わが国に輸入されるリスクについて、政府の見解を求める。また、そのような事例が発生した場合は、政府はどのような対策をとるのか、答弁を求める。
 (3) 米国では昨年、二六名の鹿のハンターがプリオン病にかかっていた事例が報告されている。これらの症例について、政府は米国当局に対して事実確認を行ったのか。答弁を求める。政府はこれらの症例がvCJDあるいは鹿由来の感染性プリオン病ではないことの確信を持っているのか。政府の見解を求める。また、鹿などが混入したレンダリング副産物の油脂や肉エキスが直接ヒトの食用となっていることはないのか、ヒトへの直接のリスクを増大させることはないのか、それらがわが国に輸入されていないかについても政府は確認をすべきと考えるが、見解を求める。
 (4) 食品安全委員会プリオン専門調査会は、(3)の事実を承知しているか。政府の答弁を求める。このリスクについて専門調査会で検討すべきだと思うが、政府は事実確認された(3)の情報を専門調査会に提出すべきではないか。答弁を求める。
 (5) 食品安全委員会プリオン専門調査会は、米国におけるCWDの発生、蔓延の状況をどのように把握しているのか。政府の答弁を求める。米国にCWDが蔓延しているとすれば、そのことと米国におけるBSEの状況との関係をどのように考えているのか。政府の見解を求める。
 (6) わが国では、ヒト胎盤由来製剤(プラセンタ)など、ヒト由来の特定生物由来製品が美容目的で多く使用されている状況があるが、ヒト由来のプラセンタやコラーゲンなどが米国から輸入されている(個人輸入も含めて)実態、および使用者からの献血規制がなされていないことを政府は承知しているか。答弁を求める。米国で、vCJD患者が発生した場合、プラセンタやコラーゲンほか、ヒト由来の特定生物由来製品を介したわが国へのvCJD感染のリスクと対策について、政府の見解を求める。
 (7) 今年一月に承認された、抗リウマチ薬エンブレルについて、牛由来血清を使用して製造されるため、クロイツフェルト・ヤコブ病患者との因果関係が問題とされたにもかかわらず、早期に販売が許可された経緯と理由について、答弁を求める。上記患者は脳の解剖検査を行ったのか。また、厚生労働省告示の生物由来原料基準によれば、米国産の反芻動物由来の血清を医薬品の原料に用いることはできないことになっているのに、米国産仔牛の血清を用いるエンブレルが承認されたのは何故か、答弁を求める。このような事例が他にもあるかどうかについて、また、いつまでに是正させるのか、あわせて答弁を求める。
 (8) わが国の歯科の院内感染対策については、歯を削るエアータービンを五〇%の歯科が患者ごとに交換していないなどの問題点が指摘されている。
 わが国でvCJD患者が増えた場合、異常プリオンが蓄積される盲腸(虫垂)角膜の手術や扁桃、脳や脊髄など、危険部位の手術に用いる器具などの滅菌消毒や使い捨てについては、英国同様、特別な対策がかかり、それには相応の費用がかかると考えられる。また、血液製剤については他国と比較しても使用量が多いとされる。政府に対し、それらの対策、見解を求める。
 (9) vCJDは場合によっては数十年潜伏する性質のものでありながら、現状の発症者数のみで安全性が語られている場合が多いが、ここ一年間の間に、虫垂(盲腸)を用いた調査で、英国でも三八〇〇名の異常プリオン蛋白質の保有者がいることが推計された。わが国には当時の発生国滞在者が多数いるが、保有者より医療行為を通じて感染が広がる可能性も否定できない。すでに英国では死亡者として確認されている一五〇幾人の他に、上記の三八〇〇名、血液製剤によるリスクを担わされた六〇〇〇名に影響が及んでいる。また、汚染の可能性がある血液製剤は世界各国に輸出されている。BSE問題は、これら重大な公衆衛生の問題に発展する可能性があるが、これらについての政府の認識と対策について見解を求める。
四 わが国のBSE感染源の解明と代用乳について
 (1) 平成十五年九月の農林水産省のBSE疫学検討チームによる「牛海綿状脳症(BSE)の感染源及び感染経路の調査について」では、わが国のBSE感染源として代用乳が否定された形になっているが、なお代用乳が感染源とする専門家の有力な意見も存在する。わが国のBSEの感染源は代用乳ではないのか。あらためて、政府の見解を求める。
 (2) わが国のBSE感染牛二〇頭のうち、平成七年十二月から平成八年八月までの八ヶ月間に生まれた最初のグループ一三頭の全てが、代用乳ミルフードAスーパー(北海道での商品名)かピュアミルク(主に関東での商品名)を摂取していた。したがって、BSE病原が全農の一〇〇%子会社である株式会社科学飼料研究所の高崎工場での一定時期に製造された代用乳製品に存在したと考えるのが妥当な見方と考えるが、これについて政府の見解を求める。
 (3) 代用乳中の動物性油脂や血漿たん白が感染源となり得るとすれば、油脂および血漿たん白の飼料使用に何ら規制のない米国牛の安全性評価に大きく関わる問題となる。食品安全委員会プリオン専門調査会では、アメリカ国内でSRM由来の動物性油脂と血漿たん白を代用乳などで牛が摂取するリスクについて、当然検討するべきだと思うが、政府はこの点について専門調査会に資料を提出すべきではないか。答弁を求める。
 (4) (1)のBSE調査報告書では、一頭の牛から肉骨粉が六五s、脂肪(ファンシータロー)四五.五s、と畜場で分離される内臓脂肪(イエローグリース)一三.五sがとれると仮定しているが、この数字の根拠は何か。答弁を求める。日本の実測値によると、一頭の牛からは、枝肉から分離されるファンシータローは五〇s、イエローグリースは五〇s程度となっている。イエローグリースのタンパク不純物を一%とすると〇.五sとなり、肉骨粉六五sは五〇%のタンパクを含むとすると三二.五sとなるので、肉骨粉はイエローグリースの六五倍のタンパクをもつことになる。本年十月十九日の衆議院内閣委員会で、食品安全委員会プリオン専門調査会吉川座長は、動物性油脂の中のタンパクと肉骨粉のタンパク量は一〇〇〇倍以上の違いがあると答弁されたが、この点について事実確認をすべきではないのか、また、イエローグリース中のタンパク不純物の危険性についての政府の見解を求める。
 (5) 農林水産省は新たに「牛海綿状脳症(BSE)感染源と感染経路に関する調査」を行うということであるが、前回の調査報告の中心人物であった、食品安全委員会プリオン専門調査会の吉川座長を、ここでも座長に任命した。これでは、結局前回と同じ結果しか出てこないのではないかと危惧されるが、吉川氏の任命の経緯と新たな調査の意義について、答弁を求める。
五 食品安全委員会の中立公正について
 (1) 食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会座長代理および動物医薬品・肥料・飼料等合同専門調査会座長唐木英明氏に対し、消費者団体:食の安全・市民監視委員会より罷免請求が提出された。唐木英明氏はリスクコミュニケーション専門調査会委員でありながら、直接利害にかかわる米国食肉輸出連合会の米国牛の安全パンフレットの監修を食品安全委員会専門委員の肩書を使用して行い、過去、米国食肉輸出連合会のポーク販売のPR事務局で使用されていたFAX番号と同一の番号を持つ事務局(電通PR社の住所)にて、「食の安全・安心を考える会」という団体の設立発起人として、米国食肉輸出連合会のほか、日本フードサービス協会加盟企業など多くの外食・輸入・米国牛関連企業が協賛したシンポジウムの開催を行っている。中立公正を求められる食品安全委員会の評価に係る専門委員でありながら、一方で米国産牛肉の輸入再開のPR活動の先頭に立つことは、国民に食品安全委員会の中立公正さに疑念を生じさせることになると思うが、政府の見解を求める。
 (2) 米国食肉輸出連合会や日本フードサービス協会加盟企業などの米国産牛肉輸入に利害関係をもつ企業・団体から報酬を受けていた場合、また「食の安全・安心を考える会」という団体で設立発起人という役職をもつ唐木氏は、平成十五年十月に食品安全委員会で決定された「食品安全委員会における調査審議方法等について」の中の第三項の「利害関係を有する委員又は専門委員」に該当するのではないか。政府の見解を求める。
 (3) 本年十月十九日の衆議院内閣委員会の答弁で、寺田委員長は唐木氏について「リスクコミュニケーションの中にいろいろなステークホルダーの方がいらっしゃるわけですね。・・・多分どこかでセミナーをしても報酬を伴っておると思います。そういうことまで全部ブロックしちゃうと、結局、国民全体をあらわす人は集まってこれなくなっちゃいますので、そういうことで、僕はぎりぎりだけどもお許し願いたいと前に申し上げましたし、その旨、唐木先生にも、きちっと誤解を招かないようにやってくださいよと、そこが精いっぱいでございます」と述べられて、唐木氏がステークホルダー(利害関係者)であることを認めている。しかし唐木氏は、リスクコミュニケーション専門調査会にステークホルダーではなく、中立公正を求められる評価に係る専門委員として参加している。食品安全委員会は、唐木専門委員について適切な措置をとるべきであると思うが、政府の見解を求める。
六 コンプライアンス・表示・消費者の選択について
 (1) 近年、食の不祥事、不正行為が後を絶たず、厳しい罰則を設けなければ、そのリスク管理遵守がなかなかなされない現実がある。遵守がなされなければ、リスクは飛躍的に増大する。食の安全を一番に脅かすそれら不正行為の防止についてはどのような対策を考えているか。政府の具体的な見解を求める。
 (2) 米国牛肉および内臓の輸入が再開された場合、外食や加工品などに表示義務がないため、国民の選択が出来ない状況にある。国民の選択を可能にするための詳細な表示およびJAS法の改正が必要であると考えるが、政府の具体的な対策および見解を求める。
 (3) 「個人の選択」について、いざ輸入が再開されれば、外食や加工品については表示義務もなく、消費者が選択できる状況にない。また、判断能力が成長途中の幼児・子どもが選択できるはずもなく、給食などによっても知らず知らずに多くの国民が口にすることになるが、それについての対策をどうするのか。答弁を求める。さらに、BSEは公衆衛生の問題でもある。病院や歯科、内視鏡などの検査、輸血や血液製剤で感染するとなれば、それは個人で選択できず、自己責任で済む問題ではない。これらの問題に関し、政府に対し、対策と見解を求める。
 (4) 学校給食においては、個人の選択ができないこと、その年齢から判断ができないこと、および国産牛や、よりリスクの低い国と比べ、より病気が感染しやすい子どもたちに感染牛の混入が多いと考えられる米国牛を提供することはWHOの、感染牛はそのすべての組織において食物連鎖に入れるべきでないとする勧告、および、予防原則の上で問題であると考えるが、政府の対策と見解を求める。
七 BSE感染牛と食肉加工上の労働安全と舌扁桃除去について
 (1) BSEの感染ルートは経口だけではなく、粘膜や傷口などからの接触ルートもある。消費者の口に入るまでの食肉加工の段階で多くの労働者や販売者、消費者が病原体に接触、曝露されるが、飼料管理に不備があり感染牛が増加するほど、病原体へのヒトの接触曝露機会は増加し、危険が増す現実がある。米国は飼料管理がずさんなため、BSEが急速に拡大する恐れがEUなどから指摘されている。実験室ではBSE牛の解剖は完全防備で行い、肉骨粉保管についても防塵マスクを着用し、完全防備で行う国もある。また、SRM除去が完全に行えないことは、前述にあるように、平成十七年五月二十日の米国産牛肉等のリスク管理措置に関する意見交換会にて、厚生労働省医薬食品局の外口食品安全部長が指摘しているが、それを踏まえて、わが国民の食肉加工上の安全の問題について、政府の対策と見解を求める。
 (2) 食品安全委員会プリオン専門調査会に対し、本年五月、「我が国における牛海綿状脳症(BSE)対策に係る食品健康影響評価」答申が提出される前の一月および四月に、日本生活協同組合連合会が、SRM除去における重要な指摘「(我が国の)舌扁桃の除去がなされていない点」などについて、申し入れを行ったが、それら審議にかかわる重要な問題点が、公開審議の場で討議されたり、公開審議の場で、要請書が配布されることはなかった。これらの重要な情報について、政府はこの問題を把握しているのか。この重要な問題が討議されず、答申にも反映されなかったのはなぜか。政府の見解を求める。
八 第三国経由での病原体の拡散について
 (1) 一rの脳でも牛を経口感染させ、五〇rの脳でもサルを経口感染させるBSEという病気は、飼料規制など病原体管理を徹底しなければ、病原体が牛の体内でますます増産され、分解が難しいために環境の汚染を増加させる。発生国の米国から、飼料や肥料などに含まれ、輸出により世界に拡散し、第三国ルートでわが国に到達する可能性がある。病原体のルートとして、汚染飼料で生産された食品や、飼料、肥料、医薬品などとしてわが国に到達するほか、海外旅行など人の移動を通してわが国民を感染させることが考えられる。それらもまた、米国牛からの曝露リスクとなるが、政府として、それらにどう対策を取るのか。政府の答弁を求める。
 (2) BSE/vCJD問題は、ヒトや動物、食品に国境がないことを考えると、わが国だけでは対処できない。今回、輸入分だけの安全評価を行い、それを確保できたとしても、このグローバル社会では国民の安全確保に対応していないと考える。わが国が米国全体のBSE対策改善を提言せず、輸入牛の安全性だけに限定した評価を行うことは、公衆衛生上の拡大防止対策には何の意味も持たないと考える。米国の不備のあるBSE対策を放置することで、病原体が増殖、長期に渡りわが国や世界の環境と食品を汚染することについて、政府に対し見解を求める。またグローバルな公衆衛生の見地から、米国の不十分なBSE対策、特に飼料規制の改善を提言すべきであると思うが、政府の見解を求める。
 (3) 米国や中国から、動物油脂や肉エキスが輸入されているが、それらの安全性の検証方法はどうなっているのか。それらにBSE病原体の混入や、鹿や他の動物、および死亡動物などが含まれている可能性はないのか。食品を包むラップ材や、家畜衛生のための薬剤など、食品原料以外の物質が含まれる余地はないのか。それらの検査はどのように、どのような頻度で行われているのか。政府に対し、事実確認のうえ、政府の見解を明らかにし、対策についての答弁を求める。
九 輸出プログラムの輸出再開前の渡米確認検査について
 (1) 厚生労働省と農林水産省により、米国で未実施の規制が完全に遵守されることを前提に、食品安全委員会において米国牛肉および内臓の安全性評価が行われているが、輸出再開以前に、対象工場における具体的な完全遵守の確認方法や、SRM除去率などの科学的キットを用いた調査結果、調査人員、予算、確認頻度などを渡米して確認すべきだと思うが、政府の見解を求める。また、完全遵守にはマニュアル策定や定期検査のスケジュール策定や抜き打ち検査なども必要と考えるが、それら具体的計画について答弁を求める。
 (2) また、月齢確認や危険部位除去などについて、米国ではすべて民間に任せており、農務省の獣医はたまに見る程度で、日本のように公の機関が検査に介在していないという指摘があるが、それについての政府の対策と見解について答弁を求める。
 (3) 米国のSRM除去について、背根神経節や扁桃、小腸など、全ての危険部位の具体的な除去方法はどうなっているのか。政府に対し、SRM除去法の詳細マニュアルの内容を明らかにしたうえで、政府の対策と見解について答弁を求める。
 (4) SRM除去について、除去が確実になされていることを証明するために、科学的な中枢神経組織の付着検査キットを用いて日本の食肉加工場においても検査が行われているが、EUでもかなりの頻度で科学的に調査をし、公表をしている。米国牛において、SRMの確実な除去を担保するための科学的調査について、政府の対策の答弁を求める。
 (5) SRM除去の方法について、二〇〇五年五月二十日の意見交換会で、BSE検査にかかわる現場から「背割り後に脊髄を吸引しその後高圧洗浄をすると汚染が広がるのではないか」という指摘がなされた。この指摘についての見解と対策について答弁を求める。
 (6) 米国の食肉加工場やレンダリング工場は、日本の消費者に対して殆ど公開がなされず、安全性の告発も続いているため、多くの国民が不信を抱いている。日本に輸出を行う企業に対しては消費者やメディアへの工場の公開を国として要請すべきと考えるが、政府に対し、見解を求める。
 (7) 米国牛がメキシコを経由して日本に輸出されているという指摘がなされているが、そのような違反があるとすれば、輸入再開の規制管理遵守について、根底からその信頼が覆されると考える。政府に対し、事実確認の上、対策と答弁を求める。
十 政府の諮問、および日米協議の内容について
 食品安全委員会の本年五月の答申書に記載されている、「基本的には背景に予想されるBSEの汚染度、と畜場における検査でのBSE陽性牛の排除、安全なと畜解体法とSRMの除去などの効率について評価し、二〇〇五年三月の時点での若齢牛のリスク等を総合的に評価したものである。このような様々な背景リスクから切り離して年齢のみによる評価を行ったものではない。」という見解にもかかわらず、二〇ヶ月齢以下の米国牛と国内牛の肉と内臓の同等の安全性評価を求める政府の諮問の仕方、「飼料管理の有効性を諮問事項としない」などとまでコメントしていた農林水産省側の見解は、食品安全委員会の科学的知見に基づく、客観的かつ中立公正な議論を妨げるものである。政府は、ほとんどの専門家の一致した見解である、日本と比べて非常に不十分な米国の飼料規制で改善されることのないままに米国産牛肉の輸入再開を行うつもりなのか。政府の明確な答弁を求める。

 右質問する。



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