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平成十八年一月二十日提出
質問第二号

被爆体験者精神影響等調査研究事業に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




被爆体験者精神影響等調査研究事業に関する質問主意書


 政府の被爆体験者精神影響等調査研究事業は、原爆被害に苦しむ被爆未指定地域の住民が、二六年にわたって被爆地域の拡大を求める切実な訴えと運動によって、ようやく二〇〇二年四月に実施された。
 しかるに、政府は、本事業が三年を経過した二〇〇四年十二月、「被爆体験者精神影響等調査研究事業の在り方に関する検討会報告書」を受けて、同事業の全面的な見直しを行い、二〇〇五年四月の「被爆体験者精神影響等調査研究事業の適正な実施について」による新たな「被爆体験者精神影響等調査研究事業実施要綱」(以下「新要綱」という。)を発出し、「被爆体験者」の声を全く無視して、同年六月から「新要綱」に基づいて事業を強行した。
 私は、昨年の十一月二十一日、日本共産党の長崎市議団とともに、現地におもむき「被爆体験者」の方々の心の叫び、訴えを直接伺ってきた。
 長崎県及び長崎市の資料によると、「新要綱」に基づく事業の実施によって、これまで同事業により医療受給者証を受けていた八、九二九名を含めた一〇、〇四〇名の「被爆体験者」のうち、スクリーニング検査で三、〇七九名もの方々が除外されており、こうした事態は深刻である。
 政府は、「新要綱」に基づくこの事業を「適正な実施を図る」と説明しているが、その一方で予算の範囲内で行おうとしており、そのために医療受給者証を受けていた「被爆体験者」を、最初のスクリーニング検査の段階で、ふるい落としたのである。
 まさに、新しい判断基準によるスクリーニング検査は「被爆体験者」を切り捨てるための手段であったことは、検査結果をみれば明瞭である。
 本来、被爆者である「被爆体験者」に対する、こうした政府の乱暴なやり方は、断じて容認することはできない。私は満身の怒りを込めて抗議するものである。
 十一月二十九日には、私と長崎市議団は、厚生労働省に対して、この事業の「新要綱」による実施は、スクリーニング検査の内容、やり方には科学的合理性がないなど重大な問題があることを具体的に示して厳しく指摘するとともに、除外された「被爆体験者」に二重三重の苦痛をあたえており、抜本的な是正を強く要求したところである。
 「新要綱」に基づく事業の早急な再検討を求めて、以下の事項について質問する。

一 スクリーニング検査について
 1 「被爆体験者精神影響等調査研究事業」(以下「被爆体験者支援事業」という。)によって、医療受給者証を受けていた方を含めた一〇、〇四〇名の「被爆体験者」のうち、保健師によるスクリーニング検査段階で、三、〇七九名という多くの方が、除外されたのはどのような理由と根拠によるのか、判断基準を含めて明確にされたい。
 2 「新要綱」によって、スクリーニング検査の判断基準を変更したのではないのか、従前の判断基準をどのように変えたのか。
 3 従前のスクリーニング検査においては、「被爆体験者」の被爆体験の有無については、被爆当時、0歳から5歳という方々もおられることから、原体験もしくは追体験のいずれかの要件を充たせばよかったのではないのか。
 「新要綱」によるスクリーニング検査では、原体験と追体験をセットにして両方の要件を充たさなければ、認めなかったのは何故か。また判断基準を変えた理由について納得のいく説明をされたい。
 4 判断基準の変更が三、〇七九名の除外者を生じさせたと考えるがどうか。
 5 長崎県及び長崎市の集計をみると、除外された方々のほとんどは、被爆当時0歳から5歳の方々に集中しているが、それはどのような理由によるのか。被爆当時幼く、当時の記憶がなくても、被爆地域に居たことは事実であり、放射能の影響に不安を憶え、精神的に影響を受けている人もこの事業の対象であると考えるが、如何か。
 6 被爆当時、0歳から3歳の方などは原爆被爆体験など記憶しているはずがなく質問のあり方がおかしいのではないか。これらの年齢層は家族から被爆体験を聞かされ、さらに放射能被害の実態を知り、精神的影響を受けているものであり、それに適合した聞き取り調査をすべきではないか。明確に答えていただきたい。
 7 除外された本人に対して、その理由について明らかにして納得いく説明をするのは当然のことである。それをしないのは何故か。
 8 スクリーニング検査を実施する際に、「被爆体験者」には、どのような質問をされたのか、その場合の質問事項を作成していると思うがそれを明らかにされたい。
 9 私が、スクリーニング検査で、除外された「被爆体験者」の方から聴いてきたことを紹介したい。
 Aさん(当時2歳 男性)「三人兄弟で、同じ場所にいながら上の二人の姉は認められたが、私は除外された」
 Bさん(当時3歳 男性)「同じ部落、村で体験しながら、他の人は該当したのに私は除外された」
 Cさん(当時0歳 男性)「原爆投下の記憶はありませんが、姉達から当時のことは詳しく聞いているのに除外された」
 Dさん(当時0歳 女性)「生後四ヶ月で被爆体験の記憶はありません。母親から被爆のことを聞いているのに認められなかった。認められなかったのは納得できない」
 Eさん(当時0歳 女性)「当時の状況は親、親類などから聞き、大きくなるにつれ大変だったことを理解できるようになった」
 Fさん(当時13歳 女性)「一緒の家にいて被爆体験したのに、姉と妹は認められ私は却下された」
 Gさん(当時4歳 女性)「当時、伯母と畑で遊んでいたときに爆風、黒い灰が降ってきたのを記憶している。伯母は認められたが私は却下された。一緒の町内の同級生も認められているのに、納得できません」
 Hさん(当時4歳 女性)「当時のことはわかりません。兄、姉、父母の話を聞いたことを話しましたが認められなかった」
 Iさん(当時26歳 男性)「私をはじめ四人は同じ地区に住み、同じように通院していながら、三人は認められていますが、私だけ認められませんでした。理由が全くわかりません」
 Jさん(当時4歳 男性)「(保健師に)いまかかっている病気で一番怖いのはなにかと聞かれ、三〇年来の高血圧と狭心症、原因不明の痙攣と答えたが、認められなかった。被爆時、一緒にいた三人の従姉妹は認められている」
 Kさん(当時0歳 女性)「(保健師に)原爆が落とされたことをどう感じるかと聞かれ、0歳児ではわからないと答えるしかありません。大きくなり親、兄弟から聞いた話しか憶えていません」
 まだ、数多くの事例がある。このように除外された方々について、政府はどのような認識を持っているのか。
 10 また、この他にも精神的疾患が認められるが、くも膜下出血による言語障害や認知症の「被爆体験者」が、検査に際し十分コミュニケーションがとれず、今度のスクリーニング検査で、認められないというケースもある。これについてどのように考えるのか。
 11 「被爆体験者」で除外された方の中には、被爆体験や放射能不安に起因すると思われる精神疾患の治療を受けている方もおられる。また、被爆原体験について「わからない」と答えた方でも、放射能不安によると思われる心身の問題を抱えているとのことである。政府はどのように考えているのか。
 12 政府としても、今回の検査で除外された「被爆体験者」の方々の切実な訴え、声を直接聴取するとともに、どのようにスクリーニング検査が実施されたのか、その内容、方法、判断基準について調査すべきと考えるがどうか。
 13 スクリーニング検査の判断基準に重大な問題がある。検査結果について早急に再検討するとともに、判断基準を従前の基準に戻して、除外された「被爆体験者」についての精査をただちに実施すべきと考える。政府の見解を伺いたい。
二 「新要綱」について
 1 受給者証の更新時の精神科医師による診断が、これまでの三年に一回が、年一回に変更されたために、精神科医師の事務が輻輳し、一般診療にも影響が出ており、また、対象者の経済的、身体的負担が大きくなっていることなどから、元に戻すべきと考えるが、政府の見解を伺いたい。
 2 このような変更は、被爆者援護法に準じて創設された事業の精神からも大きくかけ離れているだけでなく、被爆体験による精神的要因から疾病を生じやすくなっている対象者に対し、二重、三重の精神的不安を与える施策と断ぜざるを得ない。
 本事業は、医療給付対象者を「爆心地から一二キロ圏内居住」としつつ、被爆地域の拡大という地元の永年にわたる切実な願いに対し、精神的影響という視点に着目し、対象者の方を救済するために創設された制度であることから、対象者の立場に立った事業の運営を行うべきではないか。そもそも「被爆体験者」は、被爆者である。よって「被爆体験者支援事業」の救済にとどまらず、被爆者援護法に基づく原爆被爆者として認めることこそ必要ではないか。政府の見解を伺いたい。

 右質問する。



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