衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成十八年四月二十四日提出
質問第二三七号

沖縄県立八重山病院及び県立北部病院等の産婦人科の存続・再開に関する質問主意書

提出者  赤嶺政賢




沖縄県立八重山病院及び県立北部病院等の産婦人科の存続・再開に関する質問主意書


 多くの離島を抱える沖縄県においては、全国的な医師の地域的偏在のために、特に産科医の不足、不在は深刻な問題となっている。
 地域医療の中核である県立八重山病院(石垣市)は、昨年八月から医師の確保ができず脳神経外科が休診し、さらに産婦人科の存続が危ぶまれている。同病院の産婦人科は、現在、九州大学産婦人科教室が派遣する医師二名と県立中部病院の研修医二名の四人体制で診察を行っている。しかし、九州大学からの医師二名の派遣は五月末で終了し、伊江院長は「二人体制では産科の存続は厳しい」と述べており、後任の産科医が確保できない場合には、他の二名の医師も離職せざるを得なくなり、産婦人科の休止という事態に追い込まれることになる。
 また、県立宮古病院(宮古島市)では、常勤の脳神経外科医が不在で島での手術ができないという状態が続いている。
 本島北部地域では、県立北部病院(名護市)の産科医が退職し、昨年四月から医師が不在のまま休止状態にある。
 このため沖縄県をはじめ、大学、医療機関、医師養成機関等と連携し、県内外から産科医の派遣を含めて産科医の確保について、あらゆる努力を尽くしているが、沖縄県だけの取り組みでは限界があり、産科医の不足・不在は一向に改善されず、地域住民の不安は募るばかりである。
 国においては、こうした危機的状況を打開するために、産科医の派遣・確保のための即効性・実効性のある緊急的な措置を速やかに講ずるべきと考える。
 従って、以下の事項について質問したい。

一 県立八重山病院産婦人科の存続と産科医の派遣・確保について
 1 離島のさらに離島である八重山地域では、これまで年間六〇〇人余の分娩があり、その処置を一手に引き受けていた県立八重山病院の産婦人科が休止するということになれば、母子の生命の安全への不安や経済的な負担から、今後、島では子供が生めない状態になるのではないかと危惧されている。同地域は、県立病院以外に分娩できる医療機関がないために、妊娠中の出血、破水、帝王切開等の緊急処置に対応するために医師の確保は不可欠である。こうした危機的な状況について、政府の認識を問う。
 2 県立八重山病院の産婦人科の存続のために後任の産科医の派遣・確保について、政府においては、どのような努力をしているか、取組みの現状と見通しを問う。
二 県立北部病院の産婦人科の再開と産科医の派遣・確保について
 1 県立北部病院の産婦人科医が退職し、産婦人科が休止して一年が経過するが再開のめどが立っていない。そのために、片道数時間かけて医師のいる県立中部病院(うるま市)などの他地域の病院へ救急搬送を行っており、救急車内で出産するという、きわめて異例な事態も生じている。
 同病院の産婦人科の休止がもたらしている尋常ならざる事態について、政府の認識を問う。
 2 政府は、本年四月、県立北部病院への防衛医官の派遣を決定したと聞いているが、派遣時期、派遣期間について伺いたい。また、同病院の産婦人科の再開の目途と、その後の二十四時間体制に向けた県立北部病院の医師派遣・確保のためのどのような努力をされているのか。
 3 産婦人科の閉院のおそれのある、他の自治体病院に対する防衛医官の派遣の可能性について伺いたい。
三 県立八重山病院等の医師不足・不在の解決策について
 1 離島等における産科医等の確保について、政府が、本年度予算において、離島等に勤務する医師が一時的に勤務地を離れる場合には、その医師に代わって患者を診察する代診医の派遣要請に応えるための制度の充実を図ることとし、国会で審議中の「改正医療法」第三十条の十二に基づき産科医等の確保を推進するための必要な措置を講ずることとしていることは承知している。いわゆる「代診医派遣要請制度の充実」とは、どのような施策で、どのような取組みを進めるのか。
 2 県立八重山病院及び県立北部病院においては、「代診医派遣要請制度」等の充実によって産科医の派遣・確保が期待されるものの、両病院の状況はきわめて緊急を要する事態にある。従って、政府においては、即効性、実効性のある緊急避難的な措置によって、今の状況を打開する必要があると考えるのか、政府の対応策を伺いたい。
 3 政府は、いわゆる「小児科医等の確保が困難な地域における当面の対応策」を「当面最も有効な手段方策である」として進め、産科医の確保が困難な地域について、圏域の設定、医療機関の連携による医療資源集約化・重点化を推進するための計画の策定を都道府県に要請しているとのことである。
 政府は、同計画の策定がなされ、それが実施に移された場合には、沖縄県における県立八重山病院、同北部病院の産科医の不足・不在は解消されるものと考えているのか。
四 九州の離島における産婦人科及び産科医不足の実情について
 1 離島の多い長崎県、鹿児島県においても、県当局をはじめ医療機関等と連携しながら、離島での産科医の不足の解消を図るために懸命の努力をしているが、産科医を確保することがきわめて困難な状況にある。島によっては、産科医不在のために本土での分娩を余儀なくされる事態も生じており、産科医不足・不在は、九州の離島においても深刻である。
 人口一万人で少なくとも約一人の産科医が必要だとされているにもかかわらず、長崎県の対馬(人口三九、〇〇〇)、壱岐(人口三三、〇〇〇)、中通島(人口二三、〇〇〇)、福江島(人口四四、〇〇〇)、鹿児島県の種子島(人口三四、〇〇〇)、屋久島(人口一三、〇〇〇)、奄美大島(人口七〇、〇〇〇)、徳之島(人口二八、〇〇〇)、沖永良部島(人口一四、〇〇〇)等離島の多くでは、その水準に達していないとの指摘があるが、産婦人科及び産科医の実情がどのようになっているのか、政府の現状認識を問う。
 2 これらの離島について、島毎の病院数(分娩可能な施設を含めて)、産科医数(常勤・非常勤別)並びに分娩をはじめ妊娠中の出血、破水、帝王切開等の緊急処置、二十四時間体制の有無の対応方がどのように行われているのか、その実情を具体的に明らかにされたい。
 3 また、政府においては、かかる離島における産科医の確保のためにどのような努力をしているのか、取組みの現状と見通しを問う。
五 伊藤恒敏東北大学大学院医学系研究科教授は、朝日新聞紙上で医師不足について次のような趣旨のことを述べられている。
 @ 厚生労働省は、地域の医師不足解消策として、都道府県知事に医師派遣命令を与えるとか、へき地での診療経験を院長の資格や開業の条件にするとかいう方針を打ち出し、即効性や実効性を強調するが、一貫性があるとは思えない。
 医師は常に技量を高められる職場を求めており、医師を派遣するにしても、育成という観点がないと効果が乏しい。
 A 医師をへき地に派遣する場合、それまで勤務していた病院を退職させることになり、医師は自分が望む病院に復帰できる保障がないと不安である。勤務医の労働条件と収入は開業医に比べ見劣りし、勤務時間も長く休日も取りにくい。地域の職場環境は一段と苛酷になり、悪循環に陥る。「地方の医師不在」がさらに深刻になる。
 B 院長や開業の資格に、へき地医療の経験を義務化するのも、医師育成の視点がなければ、単なる数合わせで、医療の質が下がるのではないか。
 C 医師の育成には、働きながら学ぶ研修が不可欠で、時間もかかり、現場には指導医も必要である。
 D 医療政策を立案する場合に重要なのは、医師不足という「症状」の背後にどんな「病態」があるかを見極めることであり、その分析が足りない。長い目で、医師を育成しようという観点やビジョンが感じられない。
 E その上で、同氏は、大学が育てる専門医と地域に必要な総合診療医を育成するためには大学と地域の病院と行政(国等)が一体になった「医師育成機構」の設置を提案している。
 専門医の育成を軸に、地域の第一線の総合診療もできる医師を十五年から二十年かけて育てる体制の構築である。同時に医師には多様なキャリアパスを準備し、専門医になるためのトレーニングや、総合診療医としての技量を磨ける環境を整える。こうしたことにより、医師のへき地に派遣される不安も解消でき、専門医や総合診療医として現場に立てる。
 不足しがちな地域にも、医師が常にいるという状態が、実現できるのではないか。
 ――と指摘している。
 政府は、同氏の指摘及び建設的な提案@からEのそれぞれについて、どのように考えるのか見解を伺いたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.