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平成十九年八月八日提出
質問第一八号

いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書

提出者  郡 和子




いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書


 平成十九年六月十三日付郡和子提出質問第三八〇号「いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する質問主意書」(以下「質問第三八〇号」という)に対する答弁書(平成十九年六月二十二日付内閣衆質一六六第三八〇号、以下「答弁書第三八〇号」という)が、また平成十九年六月二十五日付郡和子提出質問第四一七号「いわゆる混合診療問題及び未承認薬剤の授受に関する再質問主意書」(以下「質問第四一七号」という)に対して、答弁書(平成十九年七月三日付内閣衆質一六六第四一七号、以下「答弁書第四一七号」という)が送付された。
 答弁書第三八〇号、答弁書第四一七号において、「いわゆる混合診療」に関する新解釈とみられる見解が示され、保険診療に関する基本原則を明確化しない限り医療現場の混乱を生じさせると懸念され、また、不正と判断されるべき事例についての厚生労働省の対応に公平性を欠くと疑わせる側面がみられた。さらに、現行の薬事法体系について、質問第四一七号の冒頭に、国民の健康と福祉を守る効果を持つ法体系としての懸念を記したが、答弁書第四一七号によって、さらに重大な懸念を喚起させる回答があった。
 厚生労働省は、これら未承認の薬剤についての研究及び臨床使用について、一貫性のある基本原則に基づき、患者・臨床医・研究者が未承認薬を利用する機会を公平に提供し、かつ、効果と安全性の評価が公正に行えるようにする責務があるはずである。しかし、答弁書第三八〇号及び答弁書第四一七号の回答は、個々の対応において基本原則が曖昧で、恣意的かつ公平性を欠く判断が行われていることを強く疑わせる。
 右、新解釈とみられる見解についてはその基本原則を明らかにするとともに、重大な懸念を喚起する点についてはさらに詳細な答弁を求める。
 以上の観点から、次の事項について質問する。

一 「いわゆる混合診療」について
 答弁書第四一七号「一の1について」では、単なる予防目的の薬剤投与は保険給付の対象とならない、としつつも、合併症に罹患することが想定される場合の、合併症の予防の効果を有する原疾患への「治療」は、それが「予防的投与」であっても保険診療で行える場合がある、との解釈を示している。この解釈は、業界紙等でも報じられたことから、健康保険法及び関連法令についての新たな解釈として一般に受け止められているとみられる。よって、以下の諸点について見解を明らかにされたい。
 1 過去にも、通常は合併症の予防的効果が主たる目的とされる薬剤投与を、原疾患への治療であると解釈して、保険診療で行えるとした事例はあるか。具体的な薬剤名、その予防目的及び治療目的の適応症について示されたい。
 2 答弁書第四一七号「一の1について」に示した厚生労働省の見解を示した文書が既にあれば、その代表的なものの件名及び概要を示されたい。
 3 答弁書第四一七号「一の1について」に示す解釈は、質問第三八〇号より問題にしている池田康夫教授によるアスピリンの一次予防投与に関する臨床試験(以下、「JPPP試験」という)が、これに該当することを意味するか。
 4 答弁書第四一七号「一の3について」では、質問第四一七号一の3に対して一般的に述べることは困難と回答しているが、一般化できない事柄について、池田教授によるJPPP試験については、答弁書第三八〇号において、アスピリンの一次予防投与は、@アスピリンの本来的な薬理作用を期待するものであること、A薬事規制上の承認がなされている国が存在すること、Bアスピリンが既に収載医薬品であること、を要件として述べ、「〜国が存在すること等」と「等」を加えることによって、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」(以下「療担規則」という)第十八条、第十九条に「違反するものではない」こと、「保険請求を行うことは可能である」ことを、明言している。すなわち、一般化できない事柄について、池田教授のJPPP試験の場合には前記規則に違反しないと判断した特有の根拠が「等」の中に含まれることになるが、その判断の根拠を明示されたい。
 5 療担規則第二十条第一号ホに、「各種の検査は、研究の目的をもって行ってはならない。」とあるが、JPPP試験には、これに該当する検査は存在しないか。
二 療担規則違反と疑われる行為の調査について
 1 質問第四一七号の二及び三は、質問第三八〇号より問題にしている神奈川県立がんセンターの事例について、患者遺族が不当性を訴えているにも関わらず、事件が明るみに出てから一年半以上も経過し厚生労働省が調査の経緯も結果も述べることなく結論を引き延ばしている事態は、行政庁の不作為とみなすべきとの観点からの質問であった。これら一連の質問に対し答弁書第四一七号では、回答できないとしか回答しておらず、極めて不誠実である。
  折しも、本年七月五日、七日、二十六日の読売新聞大阪版の一連の記事では、未承認の手術支援ロボットを使った手術について不正請求にあたるとする厚生労働省の見解が報じられた。五日の記事では、厚生労働省は「不正請求にあたる」と判断し、各病院に診療報酬の返還を求め、悪質な場合は保険指定取り消しなどの処分を行うことを決めた、とあり、二十六日の記事では、国立循環器病センターに対し、新たな請求をしないよう指導し、過去の請求分の返還に向けた調査を開始した、とある。この報道が事実ならば、神奈川県立がんセンターで行われた活性化自己リンパ球移入療法については、平成十八年五月十日の厚生労働委員会において「不正請求にあたる」と明言することを避け、今回の答弁書第四一七号でも見解を述べることを避けている事実との、判断の差異について説明されたい。
 2 神奈川県立がんセンターの件は、「週刊朝日」二〇〇五年十月七日号で報じられることで明るみに出たが、未だに厚生労働省は何ら対応せず見解も示していない。これに対し未承認ロボット手術については、読売新聞の調査により本年七月に明らかにされた件につき、同月のうちに、厚生労働省は見解を明らかにし、処分・指導等の対応を明示している。この時間的な差異についても、説明されたい。
 3 神奈川県立がんセンターの件についての事実関係の判断は、診療報酬明細書等の証拠文書の調査に基づくべきであるが、この調査を不当に遅延させている疑いは払拭できない。調査結果が出ていない段階であっても、現行の先進医療又は治験に該当しないにも関わらず、活性化自己リンパ球移入療法という厚生労働省承認外の方法を行い、一連の医療行為の中で保険請求を行い、薬剤費に当たる細胞調整関連費用を患者に負担させるという行為は、療担規則に違反するといえるか。
三 既承認薬の未承認の効用等への使用と薬事法第五十五条の適用について
 答弁書第四一七号「五の1について」の回答は、質問第四一七号の五の1の趣旨を逸らした論点からの回答であり、また、民法上の契約の原則、薬事法上の治験における治験依頼者と実施医療機関の契約のあり方をめぐる厚生労働省内での検討についての不見識を示すものである。答弁書第四一七号「五の1について」では、製造販売業者が、自社製品を、承認を受けた効能、効果、用法及び用量(以下「効能等」という)のみを標榜した医薬品を販売又は授与された医師が、「自らの責任の下」で、当該効能以外の効能等に着目して使用することを当該製造販売業者が「契約等により承知していた」としても、薬事法第五十五条には違反しない、と述べている。しかしながら、質問第四一七号の五の1の趣旨は、製造販売業者側に主体があり、承認外の効能等に使用されることを前提とした契約を結んだ場合について述べている。すなわち、医師が「自らの責任の下」で行われる行為を製造販売業者が「承知している」、という状況を想定しているのではなく、製造販売業者側に、医師に承認外の効能等に「使わせる」意図があり、「両者の責任の下」で契約を結んだ場合を想定している。このような場合にも、薬事法第五十五条には抵触しないか。
四 不正又は不正を疑わせる行為を行ったものが厚生労働省に設置された委員会の委員を務めることの適切性について
 1 答弁書第四一七号「六の1及び3について」の内容は、質問第四一七号の六の1において、不正を不正でないと判断する根拠を求めたのに対しては不十分であり、六の3については回答になっておらず、極めて不誠実な答弁である。質問第四一七号の六の1では、@規則違反により利益を得た後で規則の解釈の誤りを認めたこと、A解釈の誤りを認めた時点でそれ以降の規則違反による金銭受給を中止したこと、B未使用分の返還を申し出たことのみをもって、質問第三八〇号で引用した川崎前厚生労働大臣の国会答弁における「不正」に該当しなくなるのか、と尋ねたのに対して、答弁書第四一七号「六の1及び3について」では、C財団法人日本ワックスマン財団からの助成金は厚生労働科学研究費補助金とは使途が区分されていたこと、D同補助金の使途について研究目的以外への使用が認められず補助対象経費にのみ使用されていたことを、池田教授が「治験のあり方に関する検討会」に参画することを問題ないとする論拠として追加している。このことは、右@〜Dをもって、川崎前大臣の言う「不正」に該当しなくなると厚生労働省は判断した、と解釈してよいか。
 2 1の@〜Bは、解釈の誤りによって規則違反をしたことは不正にあたらず、規則違反による金銭受給を中止すれば受給し既に使用した分は返還する必要がなく、未使用分の返還を申し出たが実際に返還していなくとも不正にあたらないと判断しうることを示す論理であるが、厚生労働省はそのような考え方であると解釈してよいか。
 3 池田教授に対しては、規則違反によって受給し既に使用した分の全額の返還を求めるのが当然と考えるが、それを求めたのか。その結果返還されたのか。返還されたのならその日時・金額・返金方法を明示されたい。未だ返還されていないのなら、今後どのような形で返還される予定か、明示されたい。返還を求めてもいないのなら、その事実及び理由を明示されたい。
 4 1の「C財団法人日本ワックスマン財団からの助成金は厚生労働科学研究費補助金とは使途が区分されていたこと」は意味が不明である。使途が区分されていたとは、何と何に区分されていたのか。
 5 1の「D同補助金の使途について研究目的以外への使用が認められず補助対象経費にのみ使用されていたこと」は、二重受給の問題とは関係がない。厚生労働科学研究費補助金の目的外の流用という、質問に示していない論点について不正がなかったと回答しているのみであり、二重受給の不正が不正にあたらないとする論拠にはならない。これ以外の意図があって記載したのであれば、その意図を明示されたい。
 6 1の「D同補助金の使途について研究目的以外への使用が認められず補助対象経費にのみ使用されていたこと」については、事実関係を監査等の方法により調査したのか。調査したのであればその内容を示されたい。調査していないのであれば目的外の流用がなかったと判断した根拠を明示されたい。
 7 1に記したように、質問第四一七号の六の3については、回答されていない。質問第四一七号の六の3に記したような川崎前大臣の発言に対する解釈は正しくないと判断するのか否かの見解を尋ねていたのであるから、質問の趣旨から逸らすことなく、質問の内容に沿って回答されたい。
 8 二の1に、国立循環器病センターにおいて未承認の手術支援ロボットを使った手術について不正請求を行っていたとされる報道について述べたが、同センターの総長である北村惣一郎氏は、「厚生労働省の医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」の座長を務め、七月二十日に開催された同検討会においては、臨床研究における未承認医療機器の取り扱いを見直すことを厚生労働省に求める発言をしている。このように、不正請求を行っていた医療機関の最高責任者が、医療機器の早期導入について検討する委員会の座長をしている事実は右に述べた川崎前大臣の発言の示す理念を裏切るものであり、今後の制度改革に向けての提言も、公平・公正に、患者が望む医療が保障される制度の実現に向けたものであるよりは、医療機関の利害得失の観点からの提言であることが疑われる。右に述べたような不正が明らかになった以上は、同氏を座長から解任すべきであると考えるが、いかがか。
 9 北村惣一郎氏は、右の未承認医療機器の使用と関わる委員会以外にも、「先進医療専門家会議」「「臨床的な使用確認試験」に関する検討会」など、未承認の医薬品・医療機器・手術方法等の取扱いに関わる委員会の委員を務めている。このような現状から、厚生労働省は、未承認の医療技術が一定範囲で医療現場に必要とされている事実を知りながら、それらが公平・公正・安全に患者に提供されるための法整備を国会に委ねることを怠ったまま、規則違反によって利益を得ている者を厚生労働省下の委員会の委員に据え、その者たちが規則違反を行ってもそれを意図的に見過ごし、相互に馴れ合いの体制を維持することに注力していると疑わざるを得ない。このような疑念を払拭するためには、不正を行った者、不正に関与した者は委員を解任するという、川崎前大臣の理念に従った毅然とした態度を示すべきである。このため、北村氏についてはこれらの委員会の委員を解任すべきと考えるが、いかがか。

 右質問する。



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