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平成十九年十月十八日提出
質問第一三三号

平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する第三回質問主意書

提出者  滝  実




平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する第三回質問主意書


 平成二十年度予算の四十七兆三〇〇〇億円という上限目標に関する再質問に対する平成十九年十月十六日の答弁書(以下「答弁書」という)に関して、再び質問する。

一 答弁書には年金の『平成十六年財政再計算においては、平成二十年度までの経済前提については、「構造改革と経済財政の中期展望−二〇〇三年度改定参考資料」(平成十六年一月十六日経済財政諮問会議提出)を基に算出している一方、平成二十一年度以降の長期の経済前提については、御指摘の「経済予測シミュレーション」によらず、過去の実績を基礎としつつ、長期間における平均的な経済成長の見込み等を推計する際に一般的に用いられる手法を用いて算出している。』とある。平成二十一年までに行う「財政の現況及び見通し」の作成では、内閣府が公表した『日本二十一世紀ビジョン』で使われたモデル、あるいはその改良版が使われると理解していいのか。
二 年金財政においては、人口や経済の長期のすう勢がどのようになるかが重要であるということには同意するが、一〇〇年先まで考慮して現在の年金制度を決めるというやり方には賛成できない。例えば一〇〇年前にこのような制度があって、資金を積み立ててくれていたら、一〇〇年前に積み立てた資金が、果たして現在役に立つのだろうか。もちろん、役に立たない。資金を積み立てるより、経済発展に努力したほうが、一〇〇年先の日本を考えるなら余程ましだ。これまでの一〇〇年間には戦争があったから事情は違うとの主張があるかもしれないが、これからの一〇〇年間にはもっと大きな変化が予想される。コンピュータとロボットなど科学技術の発展、食料や資源の枯渇、世界の人口増大、環境破壊など、激変は目に見えており、一〇〇年後の日本の経済状態が予測できるわけが無く、今、積み立てた資金が一〇〇年後に役立つとはとても思えないが、一〇〇年間の計算にどのような意義があるのか。
三 年金財政のみならず、財政全般で「黒字化」が異常に重視され、デフレ脱却や成長加速が忘れられている。例えば『日本二十一世紀ビジョン』の二六五頁には、二〇〇五〜二〇三〇年の平均実質成長率がアメリカは三%なのに日本は一.五%程度となっている。もしこの成長率が二十五年続いたら、アメリカ経済は二.一倍になるが、日本経済は一.四五倍にしかならない。一〇〇年続いたらアメリカ十九.二倍、日本四.四倍だから実に四.三倍の差が出てしまう。国が豊かになれば、多く年金が払えるし、貧乏なら年金も少なくなる。経済成長があれば、それだけ政府の負担も国民の負担も軽くなる。答弁書で引用された「構造改革と経済財政の中期展望−二〇〇三年度改定参考資料」を是非読んでいただきたい。二〇〇六年度にはデフレ脱却となっていたし、その一年前の改革と展望には二〇〇五年度にはデフレ脱却するとあった。しかし、経済政策の失敗により、デフレ脱却ができず、今年になって二〇〇七年度もデフレ脱却はできないということになり、成長加速も、財政健全化もまたもや先送りとなった。
 平成十九年四月二十七日の答弁書でお認めになったように、日本経済の停滞の原因はデフレである。思い切った経済刺激策でデフレを脱却し、日本も諸外国並の経済成長ができるようにし、経済成長による財政再建を目指したらどうか。
四 「六について」で、デフレが債務のGDP比を増やしたかどうか、断定できないとある。しかし、「断定できない」との表現は答弁に窮したためと受け取らざるを得ない。
 デフレ下における日本経済において名目GDPの伸びは、ほぼゼロだった。しかし、国債費だけで二十兆円、その約半分は利払いだったわけで金利は下がっても利払いはゼロにはならないから、それだけですでに債務のGDP比は増える。更に資産デフレにより固定資産税の減少等も財政を悪化させる。プライマリーバランスを二十兆円の黒字にすることなど出来るわけが無く、デフレで名目GDPの伸びがゼロなら、債務のGDP比は増えざるを得ない。逆に、財政出動をしても、名目GDPの伸びが拡大すれば債務のGDP比は減少する可能性が出てくる。実際、名目GDPの成長率がゼロでない国は、日本のように債務のGDP比が百数十パーセントにまで増えていない。このことは認めるか。
五 内閣府の堀雅博・青木大樹氏による(二〇〇三)(ESRI Discussion Paper Series No.七十五)という論文には短期金利を固定したまま公共投資をGDPの一%相当額だけ継続的に増やした場合の試算が示されている。これによると、債務のGDP比は初年度は五.五六%減少、二年目は六.三九%減少、三年目は七.五五%減少となっている。日本経済研究センターによる同様な試算でも公共投資の増大により、債務のGDP比は減少するとなっている。政府はこのような試算結果をどのように評価しているのか。
六 前回の質問主意書の四では、自民党県連の圧倒的多数が財政出動を求めていることを指摘した。その後、朝日新聞社と東大の合同調査の結果が論座の十一月号(五十五頁参照)に発表され、多くの国民や国会議員が財政出動、公共事業による雇用創出を求めていることが明らかになった。驚いたことに、答弁書の「三から五まで及び八について」では、プライマリーバランスを黒字化するという方針を述べているだけである。質問主意書では、プライマリーバランスの黒字化が債務のGDP比を下げることに繋がらないと主張しているわけで、このような見当違いの答弁では、質問に対して全く不誠実と言わざるを得ない。これは質問を愚弄するものではないか。改めて右主張に対する政府の見解を明らかにされたい。
七 「七について」の答弁であるが、昭和恐慌の際の高橋是清蔵相による財政出動が景気の下支えには一定の効果があったとお認めになった。一方では、債務残高増大を指摘しておられる。しかし、債務残高は増大したものの、少なくとも高橋財政政策においては、債務のGNP比は七十%台に留まり、現在の百数十パーセントよりはるかに低い。つまり思い切った財政出動であれば、債務のGDP比はそれほど増やさず景気を回復させることが可能で、その後好景気が持続し、徐々に債務のGDP比は減少していくものと思われる。このことに同意するか。
八 十月十七日の経済財政諮問会議で名目成長率を三.〇%から二.二%に下方修正した場合、二〇一一年度にプライマリーバランスを黒字化するには、最大で六.六兆円の増税が必要になるという試算が示されたことがマスコミで大々的に報じられている。成長率が下がり景気が悪くなったら政府は景気を下支えすべきなのに、追い打ちをかけるように増税をして、更に景気を悪くしようとするのは問題ではないか。あの試算は、そのようなことを意図したものなのか。もしそうでないのなら、マスコミがもっと正しく試算の意味を国民に伝えるように、政府もこのような試算の発表の際にはもっと注意を払うべきではないか。
九 十月十七日の経済財政諮問会議で提出された「有識者議員提出資料(給付と負担の選択肢について)」の中の試算U(二〇〇七年度〜二〇二五年度)で四頁に主要変数の動向が示されている。これを見ると、経済成長をしたほうが、そうでないほうに比べ、GDP比でみた医療・介護公費支出も、社会保障負担も、医療介護保険料もすべて低くなっている。つまり、経済成長が医療・福祉の負担を軽くするのである。だからこそ、政府が現在すべきことは、財政出動を行い、成長率を高めることである。財政出動は間違いなく名目成長率を高める。短期間の財政出動は国の債務を何十パーセントも増やすわけではないが、長期的に見れば、経済成長は、医療・福祉の負担を軽くし、財政健全化に大きな役割を果たすのではないか。これについて政府の見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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