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平成十九年十一月六日提出
質問第一九七号

「社会保障番号」制度に関する質問主意書

提出者  河村たかし




「社会保障番号」制度に関する質問主意書


 本年九月、政府・厚生労働省は、有識者による検討会(「社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会」)を発足させた。「社会保障番号」制度について、年内にも基本構想をまとめる方針であるといわれている。
 しかし、右検討会は、「社会保障カード(仮称)」の機能やセキュリティ等に関する議論を中心としており、そもそも何故「社会保障番号」制度が必要であるのか、そしてこの制度がプライバシーに如何なる影響を与えるかなどについては全くといってよいほど議論されていない。
 これまで政府部内で検討されてきた「社会保障番号」は、生涯不変の番号を、全ての国民及び在留外国人に付番するものである上、民間で利用することが前提とされているなど、住基ネットにおける住民票コード以上に「共通番号」として利用される可能性が高く、プライバシーに対する重大な脅威となるものである。さらに、その費用対効果の点でも極めて疑問が大きいものである。
 これらの点について明らかにされないまま、「基本構想」がまとめられることは、国民や在留外国人のプライバシーの将来に禍根を残すことになる。
 よって、以下の点につき質問する。

第一 制度創設の行程等について
 一1 平成一八年九月二二日付で、「社会保障番号に関する関係省庁連絡会議」作成の「『社会保障番号』に関する実務的な議論の整理について」(以下、「議論の整理」という)が公にされているが、これ以外に、現在政府が導入しようとしている「社会保障番号」や「社会保障カード(仮称)」(以下、これらを総称して、社会保障番号制度という)についてまとめた文書が存在するか。
  2 存在するならば、その文書名、作成者、作成年月日、内容の骨子を明らかにされたい。
 二1 政府は、今後、「社会保障カード(仮称)の在り方に関する検討会」(以下、「検討会」という)の検討結果を踏まえて、どのような行程で社会保障番号制度に関する法案を準備する予定であるのか、そのおおよその日程を含め、明らかにされたい。
  2 現在、創設を目指している社会保障番号制度の骨子を明らかにされたい。
  3 社会保障番号制度の運用開始予定時期を明らかにされたい。
  4 社会保障番号制度を運用するためには、どのような法改正や制度が必要であるのか、明らかにされたい。
 三1 現在、社会保障番号制度については、「検討会」以外に、どの省庁のどの部局、組織等において検討がなされているのか、または、検討予定であるのか、明らかにされたい。
  2 今後、それらの検討結果が発表される予定が存するなら、その予定日時、検討内容の骨子等について明らかにされたい。
 四 社会保障番号制度は、現在、厚生労働省や社会保険庁で進められている「最適化」計画と、どのような関係があるのか、明らかにされたい。
第二 社会保障番号制度の内容について
 一 前提事項について
  1 「議論の整理」に記載された内容は、現在、政府が導入を検討している社会保障番号制度に関する認識と概ね一致しているとの理解でよいか。
  特に、
  (1) 「社会保障番号」は、本人の申請に基づくものではなく、社会保障給付を受け得る者(ゼロ歳以上の、日本国籍を有する者および日本に在留し外国人登録を行っている者)の全てに、漏れなく割り当てる前提であるのか。
  (2) 「社会保障番号」の導入後も、健康保険、年金保険などの各制度固有の被保険者番号等は存続し、併用する前提であるのか。
  (3) 「議論の整理」において、「社会保障番号」検討の前提として、「個人に付番するということは、その個人を同定する四情報(氏名、性別、生年月日、住所)等を基に、ある時点に特定の番号を割り当てるということである。その後、住所等が変わってもその本人を特定するものである。『社会保障番号』を導入する場合にも、四情報等の的確な把握、更新が必要」と説明されているが、この点に変更はないか。
  (4) なお、(3)に関連して、この四情報の的確な把握、更新を行う方法として、「住基ネット」から「本人確認情報」の提供を受けることが予定されているのか否か。
  以上の各点については具体的に明らかにすると共に、認識が違っている場合は、違っている箇所を明らかにし、当該箇所に関する現在の政府の認識を明らかにされたい。
  2 社会保障番号制度は、いかなる情報を、どのように管理しようとするシステムであるのか、概要を明らかにされたい。
  3 現在の社会保険庁は、健康保険、介護保険、年金保険、雇用保険分野において、いかなる個人情報を、いかなる法的根拠に基づいて、どれ位の数保有しているのか、概要を明らかにされたい。
  4 「社会保障番号」の導入により、
  (1) 3であげた社会保険庁(及びその承継組織)が保有する個人情報の種類、数等に変更は生じるのか、
  (2) 情報管理の方法にいかなる変更が生じるのか、
  (3) いかなる事務の効率化や人員の削減等が見込めるのか、
  をそれぞれ明らかにされたい。
 二 社会保障番号制度導入のメリット・デメリット及び費用対効果について
  1(1) 社会保障番号制度導入の必要性について、明らかにされたい。
  (2) 右「必要性」は現在の制度を前提として実現が不可能なものであるのか否かを明らかにされたい。
  (3) 社会保障番号制度導入の重要な契機として、いわゆる「消えた年金問題」があると考えられるが、@過去の「(本人の同一性確認ができないが故に発生した)消えた年金」問題が、将来の社会保障番号導入によって解決するものか否か、A今後の「(本人の同一性確認ができないが故に)消えた年金」問題に対しては、「基礎年金番号」で対処できるのではないか、について、それぞれ見解を明らかにされたい。
  2(1) 「議論の整理」において、「現行のサービス等を前提」とした場合、@保険者・行政機関におけるメリットは、「現在は、各制度の被保険者番号や四情報等を用いて個人情報を突合しているが、各制度で統一された『社会保障番号』を用いるとすれば、その突合を簡易迅速に行うことが出来るようになる」こと、A国民にとって、「国民は、複数の番号(各制度固有の番号)を保管する必要がなく、一つの番号で、社会保険や労働保険関係の手続きや問い合わせを行うことができるようになる」ことがあげられているが、主なメリットはこれらの点であるという理解でよいか。
  (2) 「検討会」での審議経過を鑑みるならば、「社会保障カード(仮称)」一枚で、右Aの各手続きや問い合わせが出来るようになるから、「社会保障番号」は不要と考えられるが、この点について見解を明らかにされたい。
  3 「議論の整理」において、「社会保障分野において、制度や保険者を跨がる新たなサービスを導入する場合」のメリットとして、「医療機関等に端末を設置し、被保険者番号等を活用して、医療給付の受給者が被保険者登録名簿(保険者が管理)に登録されているか否かの確認をオンラインで行うことができるようにすれば、給付の誤りを未然に防止することができる」とあるが、
  (1) 現在のシステムにおいて、「給付の誤り」はどの程度存するのか、
  (2) 仮にこのような「オンライン」での確認システムを創設するとしても、健康保険の固有番号を用いて確認すれば足りると考えられるが、あえて、社会保障番号を利用したシステムを構築する積極的なメリットは何か、
  それぞれ明らかにされたい。
  4 右2(1)@のメリットの効率化効果について、「議論の整理」において、「現在、日常的に行われ、比較的件数が多いと考えられる次の事務について、『社会保障番号』導入による効率化効果を試算」したところ、@「老齢厚生年金と雇用保険基本手当等の併給調整事務」において、年間約二〇〇万円、A「年金からの介護保険料天引き」において、年間約二二〇〇万円であるとされる。
  これに対して、「社会保障番号」導入の費用は、「人件費」や「四情報を自動更新するシステム経費」などを含まない場合でも、初期経費が約七五〇億円、経常経費が約四五億円を要するものと試算されている(その他、「情報セキュリティに最大限配慮したネットワークを構築する場合や各保険者・医療機関にカードリーダーを導入する場合には、初期費用約四九〇億円、経常経費約七三〇億円が更に必要であると試算されている」)。
  この両者を比較するならば、一見して著しく「費用対効果」のバランスを失している。
  そこで、
  (1) 現段階における、社会保障番号制度創設及び運用に関する費用の概算、
  (2) 社会保障番号制度創設による効率化効果(費用及び人員の削減の程度)
  について、それぞれ明らかにされたい(なお、全てを概算できない場合は、部分的に概算できる費用のみでも明らかにされたい)。
  5 「議論の整理」において、「社会保障分野以外で活用する場合」のメリットとして、「納税者番号として活用する場合」があげられているが、
  (1) 政府は、「社会保障番号」を「納税者番号」として利用できると考えているのか、
  (2) 政府は、「社会保障番号」を「納税者番号」として利用することを検討しているのか、
  (3) 政府は、「社会保障番号」を「納税者番号」として利用した場合、どのようなメリット(その限界を含む)とデメリットが存すると考えているのか、
  それぞれ明らかにされたい。
  6 同じく、「社会保障番号」について、「民間での一般利用を認める場合」のメリットとして、「金融機関等において、本人確認及び個人情報の名寄せ手段として広く利用されることが考えられる」としているが、
  (1) 政府は、このような「社会保障番号」の民間利用は許されると考えているのか、
  (2) 政府は、どのような民間利用の形態を想定しているのか、
  (3) 想定しうる民間での利用形態について、想定できるメリットとデメリットについて、
  それぞれ明らかにされたい。
  7 「社会保障番号」導入によるデメリット、特にプライバシーに対するデメリットについて、
  (1) どのようなデメリットが想定できるか、
  (2) 米国の社会保障番号(SSN)の濫用・悪用事例について検討したか、
  (3) (2)において、典型的には、どのような濫用・悪用事例が認められたか、
  (4) そのような濫用・悪用事例を防止するために、どのような防止策が考えられるか、
  それぞれ明らかにされたい。
  (5) なお、「議論の整理」において、「(社会保障番号として)新たに番号を創設し、社会保障分野に利用範囲を限定することが可能であれば、社会保障番号による社会保障以外の分野における個人情報の不適切な名寄せ等を防止する効果が期待できる」とあるが、@いかなる手段で「利用範囲を限定することが可能」となると想定しているのかを明らかにするとともに、Aここでは「社会保障分野に利用範囲を限定する」としながら、右にあげた箇所では、「民間での一般利用」のメリットを考慮していることとの関係をどのように考えているのかも明らかにされたい。
第三 「社会保障カード(仮称)」について
 一1 政府は、近時、健康保険証、介護保険証、年金手帳等をICカード化し、ICチップ内蔵の個人認証の仕組みも取り入れた、「社会保障カード(仮称)」(以下、単に「カード」という)の導入を検討しているが、@導入の目的及びひとつのカードにする必要性、A制度の概要、B「社会保障番号」との関係、C導入予定時期、D「カード」の券面に記載する事項、E「カード」内蔵のICチップに格納する情報、F発行主体、G発行方法、Hカードの有効期間等について、現段階において構想がまとまっている限りで明らかにされたい。
  2 かねてから厚生労働省が検討してきた、健康保険証をカード化した「健康ITカード(仮称)」との関係について、明らかにされたい。
  特に、健康ITカードにおいては、内蔵されたICチップに本人の診療情報等を入れる構想であったと聞くが、この点は「カード」において、どのようにしようとしているのか、明らかにされたい。
  3(1) 「カード」内蔵のICチップに「個人認証」システムを格納する予定であるのか否か、
  (2) 格納予定がある場合は、どのようなシステム(本人確認手段等)を格納することを検討しているのか、
  (3) どのような場合に利用することを想定しているのか、
  (4) カードを医療機関に提示して被保険者資格を確認するような場合は、「個人認証」を行わずに、カードをカードリーダーに入れてサーバにアクセスするだけで資格確認できるようにする構想であるのか、
  それぞれ明らかにされたい。
  4 「カード」で本人確認することにより、自宅からインターネットで、自分の年金情報やレセプト情報等を閲覧することができるようにすることが検討されているが、どのような個人情報を閲覧することができるようにすることを検討しているのか、明らかにされたい。
  5 レセプト情報などを閲覧できるようにした場合、
  (1) 医療機関等により本人の病歴等が閲覧されてしまうなどの危険性はないのか、
  (2) 高利貸しなどに対して、債務者が「任意」に、全ての情報を閲覧させる危険性はないのかについて、明らかにするとともに、
  (3) そのような危険性に対してどのような対策を考えているのかについても明らかにされたい。
  6 「カード」の不正取得による成りすまし対策が、例えば「四桁の暗証番号」だけだった場合、「四桁の暗証番号」さえ知られたならば、容易に成りすまされてしまうが、これに対する対策についても明らかにされたい。
 二 「カード」と住民基本台帳カード(住基カード)との関係について、平成一七年三月には、「住民基本台帳カード・国民健康保険証等連携検討会報告書」が財団法人地方自治情報センターから出されるなどしているが、政府や同センターなどで、検討している事項があるならば、その概要を明らかにされたい。

 右質問する。



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