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平成十九年十一月十四日提出
質問第二一六号

文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理に関する質問主意書

提出者  川内博史




文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理に関する質問主意書


 本年十月十二日に開催された第十七回文化審議会著作権分科会において了承された「文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会中間整理」(以下「中間整理」という。)を基に今後、著作権法(昭和四十五年五月六日法律第四十八号。以下「法」という。)の一部を改正する法律案(以下「改正案」という。)をどのような形で作成するか及び、その根拠について政府に対し質問する。

一 中間整理百四ページ「第三十条の適用範囲からの除外」について質問する。
 1 「違法録音録画物・違法サイトからの私的録音録画は、通常の流通を妨げ、これが違法であるという秩序は利用者にも受け入れられやすく、アナウンス効果もあるなどの理由から、著作権法の私的複製の権利を無くすのが適当であるという意見が大勢だった。」と結論付けられているが「大勢」は専門委員一名が反対した以外は全員が賛成したとの意味か。或いは、賛否を表明しなかった者及び欠席などの理由により意見を表明しなかった者は全て賛成とみなすとの意味か。
 2 前項の案件について、文化審議会運営規則(平成十八年二月十七日文化審議会決定)第三条に基づく議決は行われたのか。議決が行われなかった場合、議決を不要とした理由について詳細な説明を求める。
 3 昨年十一月十五日に開催された平成十八年第七回小委員会における資料一「著作権法第三十条の範囲外とすべき利用形態について」及び昨年十二月二十日に開催された平成十八年第八回小委員会における資料二「著作権法第三十条について(私的録音録画関係)」に対して、第八回小委員会で文化審議会事務局(以下「事務局」という。)より「事務局としてはほぼ見直しの方向というものを今回で見据えたい」と発言した時点から一貫して「始めに結論ありき」の強引な議事進行が行われたのではないかとの批判が生じているが、殊に専門委員一名のみが強硬に反対したことに対し中間整理では「違法対策としては、海賊版の作成や著作物等の送信可能化又は自動公衆送信の違法性を追求すれば十分であり、適法・違法の区別も難しい多様な情報が流通しているインターネットの状況を考えれば、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、インターネット利用を萎縮させる懸念もあるなど、利用者保護の観点から反対だという意見があった。」と記述するのみに留まっており、上記の反対意見に対しては何らの検討も加えられていない。検討を加える必要が存在しないと事務局が思料する理由は何か。当該専門委員の意見は杞憂に過ぎず、検討に値しないかそのような問題が生じた場合でもリスクは極めて軽微であり、権利者代表委員の主張する被害に対する救済措置(以下「救済措置」という。)の方が消費者保護に優越すると事務局は認識しているのか。
 4 社団法人日本音楽著作権協会の平成十七年一月二十七日付報道発表によると、同協会関係者の名義を騙った電話による振り込め詐欺行為が行われているとのことであるが、改正案が成立した場合、この事例と同様の権利者を詐称しての振り込め詐欺やワンクリック詐欺、恐喝行為等の被害が拡大するのではないか。また、改正案に反対した専門委員も本年九月二十六日に開催された平成十九年第十三回小委員会において同様の指摘を行っているが、事務局はかかる詐欺行為や恐喝行為の増加に対する懸念についてどのように考えているのか。そのような行為が発生したとしても軽微なものに留まると認識しているのならば、その根拠は何か。また、改正案が成立した場合でもかかる行為の発生は予防可能であると考えているのか。
 5 アメリカ合衆国では、レコード会社の主導で未成年者を含む一般のインターネット利用者に対しても損害賠償請求訴訟が多数起こされており、大規模なものでは二十二万ドルに及ぶ損害賠償が認められる事例も発生しているが、この状況に対してレコード会社が通常のビジネス活動以上に巨額の賠償金を手にする「訴訟ビジネス」とでも評すべき不健全なビジネスモデルが構築されるのではないかと危惧する意見も存在するところである。このことは、我が国においても違法複製物のダウンロード禁止規定を創設した場合にそのような不健全なビジネスモデルを発生させる危険性に道を開くものに他ならないのではないかと考えられ、平成十九年第十三回小委員会における社団法人日本レコード協会(以下「レコード協会」という。)の専門委員もその可能性を否定していないが、事務局はこのような「訴訟ビジネス」発生の懸念についてどのように考えているのか。そのような行為が発生したとしても軽微なものに留まると認識しているのならば、その根拠は何か。また、改正案が成立した場合でもかかる行為の発生は予防可能であると考えているのか。
 6 中間整理百五ページでは「利用者が明確に違法サイトと適法サイトを識別できるよう、適法サイトに関する情報の提供方法について運用上の工夫が必要と考えられる」とあるが、世界中に膨大な量が存在するインターネット上の録音・録画物及びそれらがアップロードされているサイトについて、その全てを適法と違法の二種類に選別することは技術的に可能もしくは、将来的にそのような技術が開発される目処は立っているのか。また、レコード協会が提案しているような、適法録音録画物を配信するサイトに対して認定マークを発行するなどの方法を用いる場合、当該マークは日本国内の商業著作物のみに交付対象を限定せざるを得ないと考えられるが、日本国外のサイトに日本国内からアクセスした場合や商業目的でない個人著作物に対しても認定マークが発行されないにも関わらずダウンロード禁止対象と成り得ることから、一般国民がインターネットにアクセスする行為に対して常に、かつ高確率で損害賠償を負うリスクを生じさせる結果となるのは必定ではないか。一般国民が上記のリスクを負うことが、救済措置に劣後すると事務局が思料する理由は何か。全ての一般国民が対象と成り得る重大な問題であると思料されるにも関わらず、中間整理にはこの点に対する検討を行った形跡が全く見出されないが、その理由について明確な答弁を求める。
 7 また、一般国民がインターネットにアクセスし、情報を収集する行為に前項のようなリスクを一方的に課すことは、知る権利の阻害に他ならないのではないか。事務局がかかる状態が生じても知る権利の阻害には当たらない、もしくは結果的に一般国民の知る権利を阻害することとなってもそれは救済措置に劣後するものであると思料する場合、その理由は何か。明確な答弁を求める。
 8 平成十九年第十三回小委員会において、事務局よりいわゆる動画投稿サイトにアップロードされた映像について、当該サイトにアクセスした利用者のコンピュータに視聴した映像がキャッシュとして一時蓄積された状態が複製に当たるか否かの知識が事務局には無いとの見解が示されているが、この発言は事務局がインターネットの構造に関して不十分な知識を前提に小委員会で議論を進めて来たことと同義ではないのか。また、この発言に補足して説明された「仮に現行の著作権法でキャッシュが『複製』と解釈されても権利制限を加えるべきではないとする見解」は、その見解に基づく条文が法律に明記されなければ意味を為さないのではないか。
二 中間報告においては委員間の意見の隔たりが大きく、結論を持ち越すこととされている私的録音録画補償金制度であるが、本年十月十二日付の内閣官房知的財産戦略推進事務局名義文書「平成二十年度 知的財産関連予算の概算要求等の概要」(以下「概算要求概要」という。)における、同制度に関する記述について質問する。
 1 概算要求概要においては「検討中の法案」として「〇著作権法の一部改正(私的録音録画補償金制度見直し等)」と記載されているが、この記述は政府として中間整理の記載内容如何に関わらず、法第三十条二項について改正を行うことを前提にした記述であるのか。
 2 また、前項の「見直し等」の「等」には具体的に、どのような内容の改正案が含まれる予定なのか、詳細な説明を求める。

 右質問する。



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