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平成十九年十二月四日提出
質問第二九四号

日本の景気悪化と増税に関する質問主意書

提出者  滝  実




日本の景気悪化と増税に関する質問主意書


 原油価格の高騰、食料品の値上げ、住宅着工の大幅減、アメリカ経済の調整懸念、平均給与の九年連続の下落、デフレの継続、有効求人倍率の低下、世界で群を抜いて低い経済成長率など、引き続く不況の中でインフレが進行するという国民にとっては忍耐できない経済状態にも拘わらず、額賀財務大臣は増税の必要性について発言しておられる。このことに関し質問する。

一 財務大臣が増税を語るときのアナウンス効果は絶大である。それを聞いた国民は将来の増税に備えて、消費を控え、それが景気を冷やすのは間違いない。消費は日本のGDPの五十五%を占めているのであるから、消費減退はGDPを下げ、デフレを悪化させ、税収も減らし、財政も悪化させてしまうのではないか。ねじれ国会では、増税法案は成立しない可能性がある反面、アナウンス効果だけは確実にあり、不必要に景気を後退させる危険があるのではないか。
二 現在の日本において、GDPを下げることはよいことなのだろうか。図一を見て頂きたい。OECD加盟三十カ国の中で、日本は著しく成長率が低い。日本を除くと、最低がドイツだが、それでも三.二%であり、それに対して日本は一.三%にすぎない。十一月三十日に内閣府が発表した確報値は、〇.三ポイント上方修正され一.六%となったが、それでもまだ低すぎる。今は国を挙げて成長率を高めなければならぬ時であり、景気を冷やすような発言は財政健全化という意味まで含めて有害無益ではないか。
三 世界各国は自国の経済成長を高め、国を豊かにする努力を行っている。例えばアメリカにおいては、二〇〇三年五月二十八日に、今後十年間で三五〇〇億ドル(およそ四一兆三〇〇〇億円)の減税をするという法案が成立している。フランスでは二〇〇七年七月十六日、二兆円近い減税法案が成立した。図二で示したように、アメリカやフランスは、日本よりはるかに高い経済成長率であるのにも拘わらず、更に高い経済成長を目指して需要喚起のための財政出動をしているのである。ブッシュ大統領や、サルコジ大統領が日本のリーダーであったら、間違いなく増税でなく、減税を行って、経済成長率を高めると思うがどうお考えか。また、我々の次の世代のことを考えても高成長で国を豊かにする必要があるのは疑う余地もないが、このことを考えないのか。
四 平成十九年四月二十七日の答弁書(内閣衆質一六六第一八七号)でお認めになったように、日本の経済停滞の原因はデフレである。図三にデフレによる資産価値の下落を示した。ここに示したのは失われた資産の一部(土地)であるが、一九九〇年度には二四五六兆円であったものが二〇〇五年度には半分以下の一二一四兆円にまで下落し、これだけで実に一二四二兆円もの資産が失われている。これだけで阪神淡路大震災の損害額の一〇〇倍以上であるから固定資産税など税収も減り財政が悪化するのは当然である。国の経済政策の失敗で、このような大損害を国民に与えた後で、更に増税という形でデフレを加速させ、被害を増やすことは、我々の次の世代に大きな負荷になるに違いない。デフレ脱却を政府の最優先課題にすべきだと考えるが、デフレ脱却の公約が達成できない政府の責任をどう考えるのか。
五 デフレが解消され一旦、普通の国のようにディマンドプル(需要牽引)の微弱で緩慢な物価上昇が達成できれば、税収が増え、必ず財政も改善してくる。デフレ解消のためには財政出動が不可欠である。森内閣までは財政出動を行っていた。しかし図三で示したような、大規模な資産デフレを止めるには不十分な規模であった。それでもそれなりの確かな効果はあった。このことは、すでに平成十九年十月三十一日提出の質問主意書(第一七七号)にて説明した。小泉元首相は財政出動に反対したが、小泉内閣が行ったデフレ下での緊縮財政という誤った政策のお陰で、デフレ脱却に失敗しただけでなく、日本における一人当たりの名目GDPの国際順位は大きく下がってしまった。それでも、それ以後の内閣は何故に小泉内閣に盲従して緊縮財政を続けなければならないのか。
六 日本がデフレ脱却に失敗し、低金利が続いているために、円キャリー・トレードが発生し、それがサブプライムローン問題を引き起こし、世界経済を混乱させているとの指摘がある。日本は自国の事のみ考えるのでなく、世界経済の健全なる発展に貢献するためには、一刻も早くデフレ脱却をしなければならないと考えるが政府がそのような経済政策を展開できないのは米国政府からの要請に基づくのか。
七 小泉内閣の経済政策の妥当性を検証するために、日経新聞社の経済モデルを使って行われた試算を紹介する。使われたのは日経の日本経済モデルであり、その結果を図四〜図六で示す。結論は、もしも財政出動が行われていたら、GDPは大きく伸び、デフレは解消され、国の債務のGDP比は下がり財政は健全化するという結論に達している。ただし、財政出動の規模が小さければ、それなりの改善はあるものの、デフレ脱却も財政健全化も完全にはできないということになる。これは小渕内閣の経済政策で起こったことを見事に説明している。このことをどう考えるか。
 なお内閣府のシミュレーションは、決定係数が小さすぎるために「大きな誤差を伴い、相当の幅をもって解釈をしなければならない」し、専門家の評価も極めて低く参考にはならないが、日経新聞社のモデルは、内閣府のものより決定係数も高く、誤差もずっと小さいから、内閣府のものよりはるかに信頼ができることを強調しておきたい。
八 小泉内閣の経済政策について、海外の識者は、日銀は国の借金を買い取るべきだと主張している。
 例えば、バーナンキFRB議長は、「日銀は国債の買い取りを増やして、減税あるいはその他の財政政策を行うべきだ。日銀の長期国債の保有額は発行済みの日銀券残高を限度とするという日銀の自主規制は撤廃するべきだ。」とし、
 ローレンス・R・クライン氏 (ノーベル賞を受賞した経済学者)は、「私の提案は、通貨の膨張です。日銀は政府の借金(国債)を買い取るべきです。減税をやるとよい。しかし、このような財政政策と共に教育への投資も増やすべきだ。」とし、
 ポール・サミュエルソン氏 (ノーベル賞を受賞した経済学者)は、「三年間の新たな全面的な減税政策を実施するように提案する。今後も継続して行われる公共投資は、日銀が新たに増刷する円によって行われるべきだ。」としていた。
 最近も十二月一日の静岡新聞に「消費税引き上げに反対」というタイトルでサミュエルソン氏が提案を寄せている。提案の前半は日本のデフレが危険なキャリー・トレードを出現させていると指摘し、後半は「日本の与野党、政府機関、そして有権者は、一九九〇年以降の長い眠りから覚める必要がある。もし日本の企業と家庭がカネを使わなければ、景気を刺激し、同時に日本の美しい国土の生態環境を改善し、優秀な大学をさらに充実させる雇用創設の方法を他に求めなければならない。
 これは単なる経済学の理論ではない。一九三〇年代、不況に陥っていた米国とドイツの人々に最終的に繁栄をもたらしたのは、意図的な赤字財政支出であった。
 一九三三−一九三九年、米国労働者の二人に一人が失業していたが、一九四〇年には文字通り完全雇用を達成した。この失業率を下げたのは、ルーズベルト大統領の計画的な赤字支出であった。確かに日本の公的債務はすでに巨額である。だが、その債務に対する利子支払いの費用がゼロ金利でいかに低く抑えられてきたか、このことも忘れてはならない。
 現代においては、過度の正当派的財政は悪しき財政政策と言わざるを得ない。フランスはそれを八十年前に学んでいる。」としている。
 このような識者の提案に、日本政府も真摯に耳を傾ける時期に来ているのではないか。

 右質問する。


図一


図二


図三


図四


図五


図六


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