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平成十九年十二月六日提出
質問第三〇一号

改正建築基準法施行に伴う建築関連産業の混乱等に関する質問主意書

提出者  前原誠司




改正建築基準法施行に伴う建築関連産業の混乱等に関する質問主意書


 平成十九年六月に施行された改正建築基準法及び同法施行令(以後改正法等という)は、一昨年の建築構造偽装事件に対する今後の対処策を盛り込もうとしたものであり、その法の目的の本質において、多くの国民が待ち望んでいたものである。確認審査の厳格化および建築士に対する罰則強化をも含む方針は、大いに期待できるものであった。しかし、六月の改正法等施行以後数ヶ月経過する中で、さまざまな建築活動や経済の混乱が表面化してきたのである。
 すでに各メディアでも取り上げられているように、全国での建築確認(着工)数の激減に起因する経済成長率の減速が不安視され出している。現に、建築関連業種においては、改正法等関連による決算の下方修正が相次いで出され始めている。
 建築関連業種は裾野が広く、国民生活にも密接に関係しており、結果論では済まされない重大な事態を引き起こしてしまったのではないかと考える。特に、建築の長期に渡る工事期間を考慮すれば、経済的打撃は少なくとも来期まで影響する事が懸念される。
 政府としては、この事態を重く受け止め、問題の原因究明とともに早急な善処策を打ち出していく事が急務ではなかろうか。単なる対処療法ではなく、事象の本質を理解し、同質の問題を今後生じさせる事がない様な対応が今求められる。
 よって、問題が生じた原因は何か、現状はどうなっているのか、今後の対処策はどうなるのかという観点について次の事項を質問する。

一 平成十九年六月二十日に施行された時点あるいはそれ以前において、建築確認件数が激減するなど建築確認業務に支障をきたす事などは予見していなかったのか。経済成長減速などの不安要素は考えていなかったのか。政府の見解を求める。
二 改正法等の施行後の建築確認業務の停止と混乱を招いた原因は、どこにあると考えているのか。具体的な政府の見解を求める。
三 平成十九年八月十日に国土交通省から構造関係告示の運用に関する技術的助言(国住指第一八五六号)が通知されているが、構造設計関係者の間では、これが出て来なかったため業務をすすめる事ができにくかったという意見がある。国土交通省はこの通知がなくとも建築確認に関する業務が円滑に遂行できると判断したのか。六月二十日時点で示されず、なぜ施行から約二ヶ月遅れで通知がなされたのか。政府の見解を求める。
四 改正法等が施行された平成十九年六月二十日以前に、国土交通省において関係識者や業界関係者からの意見の聴取はなされたのか。なされたのであれば、誰がいつどのような関係者から聴取したのか。またその内容について今回の事態に至った事との関係を明らかにすべきと考えるが、政府の見解を求める。
五 いくら罰則を強化しても、ほかの犯罪同様、悪意の人間の偽装工作など不正行為はなかなか防げるものではないと考える。改正法等の具体的な中身において、どの部分が偽装を防止する有効な項目と解釈できるのか、政府の見解を求める。
六 設計者を性悪説で捉えれば、検査の厳格化は極めて自然な流れであると思われる。また国民の安全に配慮する観点から見ても大切な事でもある。しかし、一方で厳格化は、経済活動の萎縮や停滞を招きかねない要素をも含んでいると考える。厳格化方策を決定する場合は、慎重さとバランスを考慮した判断がより重要であろう。それでは、今回の改正法等に示された厳格化策のどの部分をもって、何がどう是正されるのを意図したのか、具体的な政府の見解を求める。
七 平成十九年六月二十日以後、十一月十四日にかけて、国土交通省の建築指導課長や住宅局長名で相次いで緩和策等が通知されている。これらの一連の緩和策通知も、さらに現場を混乱させたとの意見もある。それでは、そもそも改正法等に示された厳格化策は、厳しすぎたのか、または説明不足だったのか。具体的に九月二十五日付国住指第二三二七号および十一月十四日付国住指第三一一〇号の技術的助言は、どのような問題点に対してどのような意図と効果を期待しての通知だったのか。また、これまでの一連の緩和策で、今後とも十分であると思われるのか、政府の見解を求める。
八 今後の経済状況などを判断するためにも、建築確認の対前年比実態や確認の進捗状況および建築着工床面積に結びつく面積ベースのデータなどは、逐次正確に把握していく必要があると考える。国土交通省は、平成十九年十一月三十日付で「最近の建築確認件数等の状況について」を発表している。これは確認業務の現状分析や今後の対応策を考える上での重要な基礎判断材料であろう。この視点に立って、データを誤解なく判断しさらに分析を深めていく為にも、基本的な事として以下の点を確認しておく必要があると考える。@月次の確認申請(一〜三号)のうち適判申請が必要な割合はどの程度と把握しているのか。A確認申請から適判申請までのタイムラグは実体としてどの程度あると把握しているのか。B件数での把握だけでなく面積ベースでの調査を行う予定はあるのか。C時間的猶予がない中で、少なくともサンプル調査などでの検証(実態追跡調査)を行う事は想定しているのか。以上政府の見解を求める。
九 改正法等施行後の偽装防止と円滑な構造設計や構造審査においては、新たな大臣認定構造計算プログラムは不可欠であり、設計、確認業務双方にとって重要度が高いと考える。新たな大臣認定構造計算プログラムの位置付けと取扱いについて、政府の見解を求める。
十 新たな大臣認定構造計算プログラムは未だに提供が始まっていない。この現状の中で、設計や確認業務にどのような影響を及ぼすと考えられるのか。具体的調査ヒアリングは行っているのか。そもそもなぜ認定が遅れているのか。六月二十日に間に合わせるものではなかったのか。また、いつ供給が開始される見込みにあるのか。これらに関して政府の見解を求める。
十一 構造設計士を含む一級建築士の業務量は、改正法等施行により確実に増すと認定される。国土交通省は、業務量および設計コストについてどの程度増加すると判断しているのか。また、建設省告示第一二〇六号の見直しは考慮しているのか。更に、国民のコスト負担の観点から重要であると考えているのか。構造設計士のマンパワーは限られており、このままの状況では年間の建築着工量に対する影響は長期的にも避けられないと思われるが、これらについて政府の見解を求める。
十二 来年、構造設計一級建築士の運用が始まると言われているが、国民の生命と財産の保護の観点からは評価できるものと考えられている。ただ、改正法等により想定される構造設計士の業務量増加と厳しい資格審査とによって、ますます処理できる建築量は厳しさを増してくるのではないかと考えている。国土交通省では構造設計一級建築士の創設により構造設計にかかわる業務環境がどうなると想定しているのか。政府の見解を求める。
十三 内閣府発表の月例経済報告では、十一月になってやっと基調として「住宅建設はこのところ減少」と記載がなされた。しかし、冒頭の先行きの留意事項には一切文言が見当たらない。七月以降の表面化した一連の状況に対する危機意識が低いとしか考えられない。原油高騰やサブプライム問題と違い、国内で起きている実態の捉えやすい問題ではなかろうか。国民生活の利便、今期、来期に渡る企業業績等に直結した問題であり、まっ先に対処すべきあるいは対処しやすい問題ではないかと考える。月例経済報告の作成に当たり、改正法等施行以来のこの事態について、どのような情報を基にしてどのような議論がなされたのか。政府の見解を求める。
十四 ここにきて、民間シンクタンク等からも改正法等に起因するGDPの減速予測が出され始めた。軽く見過ごすような数字ではないのは明らかである。どの程度、この問題が日本経済のマイナス要因になると政府は考えているか。具体的な予測数字を示されたい。失業、税収、金融に結びつく問題だけに、今後、国土交通省の現状把握を土台に、経済産業省、厚生労働省、財務省等関係各省庁連携しての取り組みが急務であると考える。今後の取り組みについて、政府の見解を求める。

 右質問する。



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