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平成十九年十二月十一日提出
質問第三一七号

東海環状自動車道西回りルート・岐阜市御望山周辺計画に関する再質問主意書

提出者  佐々木憲昭




東海環状自動車道西回りルート・岐阜市御望山周辺計画に関する再質問主意書


 平成十九年十一月十六日受領の答弁第二〇〇号について、政府に再度質問する。

一 御望山調査検討会の意義と役割、住民参加について
 先の質問主意書(平成十九年十一月七日提出)において、「御望山調査検討会(委員長・志岐常正京都大学名誉教授、以下『検討会』)は、国土交通省など行政と専門家、地元住民代表の三者で構成する、日本で初めて経験する画期的なものであると考える。政府は、この『検討会』がどのような意義を持つと考えているか」と問うた。しかし、答弁書は、この点についていっさい触れていない。
 改めて以下の点について質す。
 @ 国土交通省など行政と専門家、地元住民代表の三者で構成する「検討会」が設置され、六年間にわたり検討が行われてきた。この「検討会」の持つ意義について、政府はどのように認識しているか。
 A 「検討会」への住民参加について、「検討会」委員長・志岐京都大学名誉教授は、次のように記している。「今回の検討会では、一方で、専門委員が専門家としての責任を負うことが要求されるとともに、地元住民委員に対しても、単に参加して要求をするだけでなく、あるいは主体的に、あるいは専門委員からの要請に応じて調査を行うことが求められた。参加だけでなく、調査方針検討へも疑問や意見を述べ、いわば参画した。これらは大きな成功を収めた。…本委員会に地元住民が専門研究者と同格の委員として参加した経験は、今後有効に生かされねばならないと思われる。」(「第十一回検討会終了後の個人的意見」)
  国(国土交通省)も、「検討会」を構成するメンバーである。その立場から、日本で初めてといわれる住民参加の「検討会」について、とりわけ、志岐委員長の「地元住民が…参加した経験は、今後有効に生かされねばならない」とする認識に対し、国はいかなる見解を持つか。
 B 答弁書によると、「検討会は終了している」との認識を示しているが、「検討会」に参加してきた専門家や住民代表の中からは「報告書は取りまとめられたが製本作業もされていない。したがって検討会そのものも終了していない」という声が聞かれる。政府が、「検討会は終了している」との認識に立つのは、「検討会」のなかでの正式な合意を受けてのことか。合意したものならいかなる経過によるものか。また、公文書として行うべき報告書の製本作業を行わないのはなぜか。これらの諸点について明らかにされたい。
二 ルート提示と「安全性」の問題について
 質問主意書では、住民の安全性を「重要な要素」として受け入れる姿勢を表明した衆議院予算委員会での国土交通大臣の答弁(平成十六年三月一日、同委員会第八分科会)をも紹介しながら、政府が、今日も同大臣答弁の立場に立つなら、さまざまな危険性が指摘されている都市計画ルートをなぜ排除しないのかと質した。しかし、これに対する「明確な答弁」は得ていない。以下、再度質問する。
 @ 答弁書は、「国土交通省においては、平成十八年三月十九日の検討会において取りまとめられた『御望山調査検討会報告書』(以下『報告書』という。)を踏まえ…最も適切な道路の区域の案を選定する」としている。しかし、それに続く記述で「都市計画ルートについても、周辺の土地利用及び生活環境に与える影響等の面において有利な案である」と明記している。
  ”都市計画ルートは「安全性の確認ができない」“としたのが「報告書」の最終結論である。そこでは、都市計画ルートでトンネルが造られた場合、第二千成団地住民は長い将来にわたって災害リスクに脅かされること、地元「洞地区」の柿畑について、柿の生育条件の悪化のほか栽培面積の削減により採算が成り立たなくなること、於母ヶ池などの環境が破壊されることなど、さまざまな分野において生活環境がより悪くなることを指摘している。
  答弁書が、「『報告書』の立場を踏まえ」るなら、「安全性の確認ができない」都市計画ルートを「有利な案である」として、なぜ引き続き提示しているのか。これは「報告書」の立場を「踏まえない」態度といわざるをえない。同じ「検討会」を構成する立場にあり、報告書の結論に合意しておきながら、その報告書に対して、なぜ、このような整合性のとれない、矛盾した態度をとるのか。明確な説明を求める。
 A 答弁書にある「周辺の土地利用及び生活環境に与える影響等の面において有利な案」とは何を根拠に「有利」としているのか。具体的に示されたい。
 B 地域住民に配布されたアンケート「道からの手紙−計画の再検討について、あなたの声をお聞かせください」(国土交通省・中部地方整備局・岐阜国道事務所)によれば、「土地利用への影響」の欄では〈移転が必要な家屋等の件数〉が例示されているのみである。また「生活環境への影響」の欄では、〈市街地及び集落を通過する延長〉つまり通過するルートの距離の比較のみが示されている。「報告書」で強調された安全性の問題は、何ら比較対象となっていない。それはなぜか。
 C 岐阜国道事務所は、十一月一日付で御望山の地質調査(ボーリング)を行うことを地元に通知、同月二十六日よりボーリングの掘削作業を開始している。「いまなぜボーリングが必要なのか」――地元関係者からはこのような疑問の声が続出している。同「通知」では、現行都市計画ルートとBルート帯上で行うとしている。Aルート帯やCルート帯は含まれていない。これは、まさに「最初に結論ありき」ではないか。
  ボーリング調査は、「検討会ではやらなかった部分を行う」とのことであるが、すでに「検討会」では、山の特性に配慮しながら何本かのボーリングを行ってきた経緯がある。そこでは、北斜面を含めた山全体の調査が行われ、これ以上の調査を行っても結論は変わらないとの合意に達したのである。
  さらに、国土交通省は、専門委員会に対して約三十項目に及ぶ質問書を提出し、専門委員から丁寧な回答を得ているはずである。このような経過があるにもかかわらず、いまなぜボーリング調査を始めたのか。(a)税金のむだ遣いではないか、(b)都市計画ルートまたはBルートにこだわる、つまりインターチェンジの位置にこだわるのは何か特別な理由があるのではないか。それらの根拠、理由等を明らかにされたい。
三 Bルート帯の問題点等について
 答弁書は、御望山の山中をトンネルで通過するBルート帯について、「トンネルの施工による地山の緩みがほとんど生じないと予測」し、「地滑り等に対してより安全性が高いと考えられる」と断言している。
 @ この根拠として答弁書は、「『岐阜国道事務所』が現在までに実施した調査結果に基づ」いていることを記しているが、これらの調査は、いつ、何について、いかなる方法で、どのような形(専門家が関わったのならどのような専門家か)で行われたのか。また、その結果を得たのはいつ頃か、これらの諸点について明らかにされたい。
 A 御望山の地下水位の変化や断層の状態がいかにトンネル掘削に適さないかは、「検討会」報告書([まとめ)において何ヶ所にもわたり指摘されているところである。例えば、「まとめ」の「九」では次のように明記されている。「トンネル掘削が水みちを変えることが、斜面への水の流出、土壌浸食、植生への影響などを通して斜面崩壊の素因を拡大する可能性も否定できない。これは、掘削時でも完工後でも起こりうる。」
  この指摘は、都市計画ルートのみに限らず、御望山の山中をトンネルで通過するBルート帯にも該当するものであると考える。実際、Bルートの諸問題点について「検討会」に関わる専門家からも次のような指摘がある。
  〇山を通る部分と城田寺付近で曲がりが三つのルートの中で比較して最も大きくなる。特にトンネル部分の曲がりがはなはだしい。この点だけを見ても、通行者の安全を守るうえでこのルートを選択することは非常識である。
  〇第二千成団地北斜面の地質は、南斜面に比べて必ずしも良くない。特にルート帯の南半は、「御望山調査検討会」の調査結果による“高破断域”をはずれていない。
  〇於母ヶ池北東の斜面から北方の尾根にかけては、(a)広く側圧がかかる、(b)すでに存在が想定されている断層が集中し、不均質に破断が進んでいる、(c)風化が著しく、かつ“大割れ”岩塊を多く含む崖錘が発達するなど、地形・地質的に悪い条件が多い。これらは都市計画ルートより悪くなっている。
  〇右のような地質の場所が、於母ヶ池に供給されている地下水の水源である。従って、ここに人為を加えた場合の於母ヶ池の生物環境に与える悪影響は、都市計画ルートより大きい。
  〇西側坑口付近については、産廃が置かれた元土採場を避けているが、ルート帯の南半は、これから十分に離れているとはいえない。「御望山検討委員会」の報告に記されているK断層を滑り面とする滑落メカニズムに刺激を与える恐れについては都市計画ルートと変わらない。
  これらを通してみると、Bルート帯は、施工中や建設後の事故リスク、生態系、環境などの問題に関して、都市計画ルートよりむしろ悪い点が多く含まれている。
  そこで改めて質す。国は、「検討会」の一員として参加していながら、このようなBルート帯の問題点を認識していないのか。認識しているのなら、なぜBルート帯が、「地山の緩みがほとんど生じない」「地滑り等に対してより安全性が高いと考えられる」等の「予測」を行ったのか。明らかにされたい。
 B 国土交通省岐阜国道事務所・副所長は、「三つのルートはどれも並列の状態。どのルートがふさわしいか、を多数決で決めることはしない。」と発言している(岐阜新聞〇七年十月二十七日付)。ここで、「三つのルートはどれも並列の状態」と話しているが、右に指摘したように、A、B、Cの三つのルートのうち、Bルート帯は、数々の危険な要素を含むルートであり、とても「並列」とはいえない。同副所長の発言の真意は何か。明らかにされたい。
四 都市計画ルートの再検討にあたって「トンネル工学、地滑り等の分野における専門家の意見を聴取している」との答弁に関して
 @ 答弁書は、「当該専門家の氏名については、意見の聴取に当たって公にすることは前提として」いない、と明言している。それは、「公にすることによって、今後の都市計画ルートの再検討における率直な意見の交換を阻害するおそれがある」から、とも述べている。この根拠は何か、具体的に明らかにされたい。
 A 都市計画ルートの再検討に当たって、六年間も検討してきた「調査検討会」の結論を尊重しないで、どこの誰とも明確にされない「専門家」の意見に基づいて、ルートを再検討すること自体、市民の貴重な税金のむだ遣いである。同時に、公共事業計画への住民参加の考えに逆行し、これまでの「検討会」に参画してきた専門家や地域住民を愚弄することにもなると考える。政府の見解を求める。
五 国土交通省によるインターチェンジ付近の用地取得等について
 @ 国土交通省は、平成十六年五月十九日付で岐阜市北西部に建設を予定している仮称・岐阜インターチェンジ付近の一部用地を取得していることが明らかになっている。この取得用地の所在地(地番)、面積を示されたい。
 A 御望山に関するルートの結論が出ていない段階、つまり「検討会」がまだ行われている途中においてインターチェンジ予定地の一部を国土交通省が先行して取得したのはなぜか。用地取得の経緯、理由を具体的に明らかにされたい。
 B 答弁書は、「御望山の北を通過するCルート帯におけるインターチェンジは、都市計画ルートにおけるインターチェンジと異なる場所にある」としている。しかし、地域住民を対象にした説明会では、三つの比較ルート案においてもインターチェンジは同じ場所である旨の説明が行われていると聞く。実際、前出の「道からの手紙」のなかでも「岐阜IC(仮称)出入口(A・B・C案とも同じ)」と明記されている。この表記は何を意味するのか。答弁書のいうように「御望山の北を通過するCルート帯におけるインターチェンジは、都市計画ルートにおけるインターチェンジと異なる場所にある」とするなら、それはどこにあたるか。具体的に示されたい。
六 法整備上の問題点について
 今回の「東海環状道西回りルート」の選定にあたり、岐阜県トンネル影響評価委員会(一九九五年十一月〜九六年五月)は、「(御望山の)南斜面安定性に影響なし」との評価を下している(九六年七月一日)。また、岐阜市都市計画審議会は、ルートの岐阜市部分について「適当」である旨の答申を行っている(九六年八月十七日)。しかし、これらの「評価」が必ずしも適切でなかったことは、今日「ルートの再検討」が求められているように、その後の経過からも明らかである。このようなことになった原因について、専門家からは、とりわけ次の二点が指摘されている。
 (a)ルート選定などの最初の段階で住民意見を直接反映する場が設けられていなかった。(b)環境面だけでなく「防災」の観点から地質調査をきちんと行うなどの基本的手続きが欠落していた。
 (a)に関していえば、国のルート案が県都市計画審議会で決まる過程で住民意見を直接反映する場はなかった。(b)については、「(従来)都市計画審議会においても例えばオオタカのことなどは触れられるが、活断層とか、御望山のような特異な地質のことなどは度外視されている」といわれてきた(「検討会」志岐委員長、岐阜新聞〇六年四月三十日付)。つまり、「環境影響評価(一九八四年閣議決定)は道路建設や都市計画でも実施(八五年)が定められているが、公害とか自然環境の保全という観点はあっても防災の観点はない」(同右・志岐委員長)のである。
 こうした現行法制度上の欠陥――「住民参加」とともに「防災」の観点が従来の開発計画の手順から欠落していることが指摘されているのである。改めて質す。政府は、ここに指摘されているような現行法制度上の問題点を認めるか。認めるなら、今後、この種の公共事業の推進にあたって、早期の段階における住民意見の反映と防災上の観点を踏まえた必要な手続きを、法律上、新たに整備する心積もりはあるか。見解を求める。
七 今後の住民への説明について
 答弁書は、「第二千成団地の住民を含めた地域住民に対して、今後とも検討の過程や考え方について説明を行う」としている。この間の説明会参加者は、国側の発表で約六百人といわれる。しかし、住民の間からは「『声が大きい地域の意見が通る』『初めからルートは決まっている。アリバイに使われるだけ』…懐疑的な見方もささやかれる」(岐阜新聞〇七年十月二十七日付)との声が聞かれる。こうした危惧は、都市計画ルートの地元・第二千成団地住民のなかにはより大きいものがある。これらの不安や危惧を解消するためにも、当該団地住民を対象にした、より冷静で丁寧な説明会を、早急に開くべきだと考える。答弁書では、「今後とも検討の過程や考え方について説明を行う」と表明しているが、その時期はいつ頃、どのような形態で行う予定か。明らかにされたい。

 右質問する。



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