衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十年一月二十三日提出
質問第一七号

防衛研究所が所蔵・公開する資料に関する質問主意書

提出者  照屋寛徳




防衛研究所が所蔵・公開する資料に関する質問主意書


 平成十九年度版『日本の防衛』(防衛白書)によると、防衛省・自衛隊の組織の中で防衛研究所は、「防衛省のいわばシンクタンクに当たる機関」と位置付けられ、その具体的な役割の記述がなされている。その防衛研究所が所蔵・公開する沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」に関する資料に、不適切かつ何らかの政治的意図を感じさせる「見解」や「所見」が付されていたことが判明した。
 「見解」が付されていたのは、『沖縄戦における島民の行動』と題する資料の中に、付録として添付されていた「集団自決の渡嘉敷戦」(付録三)、「座間味住民の集団自決」(付録四)の二点に対してである。『沖縄戦における島民の行動』は、馬渕新治氏が、昭和三十五年十一月八日、陸上自衛隊の幹部学校の沖縄戦史図上研究会において、講演した内容を取りまとめたものである。「見解」が付された「集団自決の渡嘉敷戦」及び「座間味住民の集団自決」の両付録は、いずれも現地参戦者の手記である。これらの資料では、渡嘉敷島では海上挺進隊第三戦隊長だった故赤松嘉次さん、座間味島では同第一戦隊長だった梅沢裕さんが「集団自決を命令した」と書かれている。ところが、付された「見解」では、「『日本軍側の旧悪を暴く』という風潮の中で、事実とは全く異なるものが、あたかも事実であるがごとく書かれたものである」などの記述がある。その上で、「見解」の作成者が「防衛研究所戦史部」と表記されていることも判明している。
 一方、防衛研究所が所蔵・公開している資料には、同研究所独自の「所見」が付されていることも判明している。具体的には、『住民の沖縄戦記(伊江島、座間味、渡嘉敷、久米島)』に、戦史編纂官を務めた伊藤常男氏が、昭和四十一年二月十七日付で「内容には相当の誤りがあるが、住民の気持ちの一端が知られる。日本軍に対する相当の誹謗が記述されているが、実際より誇張されていると思われる」との「所見」を付しているのである。その他にも、『渡嘉敷島及び座間味島における集団自決の真相』と題する資料には、調査員・永江太郎氏が、平成十二年十月十八日付で「軍命令による集団自決とされていた両島の事件が、村役場の独断であり、戦後補償のために軍命令とした経緯に関する当事者の貴重な証言である」との「所見」を、『沖縄渡嘉敷島、座間味島集団自決』の資料には、戦史編纂官・川田久四郎氏が、昭和四十七年八月二十二日付で「軍誹謗の記事」「事実をねつ造」などと、独断的な「所見」を付している。
 このように、防衛研究所が所蔵・公開している複数の資料に、沖縄戦における「集団自決」への軍命の存在を意図的に否定する「見解」や「所見」が付されている事実は、大きな問題である。一般公開されている資料に一方的、一面的な見方を示す「見解」「所見」を付すことは、防衛省が「集団自決」への軍命の存在について否定する立場を、四十二年以上も前から取っていたと批判せざるを得ない。
 昨年、高校歴史教科書検定における「集団自決」への日本軍による命令、強制の記述を削除させ、沖縄戦の真実を歪曲、改ざんする政府・文部科学省の態度に、沖縄県民の強い怒りが示されたことは記憶に新しい。その教科書検定の訂正申請の際にも、防衛研究所戦史部客員研究員は、「軍の強制と誘導による集団自決とは言えない」との考えを伝えていたようである。今回、判明した防衛研究所の資料に付された「見解」や「所見」は、教科書検定における「集団自決」への日本軍の命令、強制の存在を否定し、それらの記述を削除する動きとも軌を一にするものと指摘し、批判せざるを得ない。
 以下、質問する。

一 防衛研究所は防衛省の組織上、如何なる位置を占め、どのような目的、役割を持っているのか。同研究所の陣容(組織、職員構成)、及び戦史編纂官、調査員の資格と職務内容、並びに平成十九年度の運営予算を明らかにした上で、政府の見解を示されたい。
二 防衛省防衛研究所図書館に所蔵されている資料(著書、叢書等を含む)の数は何点か、公開・非公開の区分別に示されたい。また、係る資料の公開・非公開は、どのような基準で定められているのかを明らかにされたい。
三 防衛研究所は、誰の判断で、或いはどのような基準で、所蔵・公開している資料に「見解」「所見」を付しているのか。また、「見解」「所見」は、如何なる資格を持つ者が付しているのか。「見解」や「所見」を付す場合の内部的な手続きを明らかにされたい。
四 前記「集団自決の渡嘉敷戦」「座間味住民の集団自決」に付された「見解」は、誰が、いつ付したのか。「見解」が付されている事実は、いつ、どのようにして判明したのか。「見解」には、防衛研究所戦史部が付した旨の表記があるが、それは事実か。「見解」が付された経緯について、如何なる調査を行ったのか、また、「見解」文を除去した理由は何か。以上の諸点について、調査結果を明らかにした上で、これらの是非について政府の見解を示されたい。
五 三項で質問した「所見」は、防衛研究所の統一見解か。また、同研究所所蔵の公開資料に一方的、一面的な「所見」を付すことの妥当性について、政府の見解を明らかにされたい。
六 「見解」や「所見」は、沖縄戦関連資料のみに付してあるのか。防衛研究所が所蔵・公開している資料のうち、「見解」や「所見」が付されている点数、及び類別を示した上で、本質問主意書で列挙した以外にも、「見解」や「所見」が付された沖縄戦関連資料は存在するのか、明らかにされたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.