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平成二十年五月二十九日提出
質問第四四五号

歯科医療の向上に関する質問主意書

提出者  前原誠司




歯科医療の向上に関する質問主意書


 以下に第一六八回国会における「歯科医療の向上に関する質問主意書」(以下、「前回質問」という。)ならびに、第一六九回国会における衆議院予算委員会での質問に対する回答をもとに質問する。

一 前回質問三に関連して、充実した食生活が健康の維持増進や良好な生活環境をもたらすことは、すでに疑問をはさむ余地のないところである。にもかかわらず、歯牙喪失の大きな要因である歯周病のスクリーニング検査である「歯周疾患検診」の実施率は極めて低い。この点について、政府の見解を問う。
 (参考)
  八〇二〇(八十歳で自分の歯を二十本以上持っていること。)の実現には、学校歯科保健と老人歯科保健の狭間に位置する成人期の歯科保健が重要であり、予防をその主目的とした成人歯科保健の一層の充実が望まれているところである。
  老人保健法(現在は健康増進法)で定められている歯周疾患は四十、五十、六十、七十歳の節目年齢が対象であり、@二十から三十歳代の盛年層を省いている。A十年に一回の検診では歯科(口腔)保健の維持・増進を望むことはできない、といった批判がある上に、受診率は二.七%(受診者数=一七一、八五五名)、市区町村の検診実施率も五二.三%に止まっている。
  検診結果を見ると、要精検者一三二、七二一名(受診者数に占める割合七七.二%)、要指導者一八、四三八名(同一〇.七%)、異常認めず二〇、六七一名(同一二.〇%)となっており、このことから保健・医療の連携が十分でないことは明確であり、日本における歯科(口腔)保健に対する社会環境の未熟度を露呈した結果となっている。平成十七年度地域保健・老人保健事業報告(平成十七年国勢調査結果 四十歳:一、七五三、七八四人、五十歳:一、六三一、三八一人、六十歳:一、四七〇、九一〇人、七十歳:一、四三〇、〇一二人。)
二 前回質問四に対して、「国民医療費に占める歯科診療医療費の割合については、歯科医療に対する国民のニーズに応じて決まるものであると考えて」いるとの答弁を得たが、国民医療費に占める歯科診療医療費の割合は決して国民のニーズによるものではなく、初診・再診料に象徴される医科・歯科格差によるところが大きく、早急に是正されるべきである。政府の見解を問う。
 この点については、第一六八回国会での小池晃参議院議員による「歯科の診療報酬に関する質問主意書」に対して、歯科診療報酬項目のうち、七三項目の算定点数が二十年間据え置かれているとの答弁もあることを書き添えておく。
 次に、国民の受診行動が、ニーズ(疾患量)ではなくディマンド(顕在化した医療需要)に基づいて引き起こされることは自明である。確かに、癌などのシリアスな疾患の場合は、価格変動が発生しても需要には殆ど影響を及ぼさないが、う蝕や歯周疾患に代表される多くの歯科疾患は価格変動により需要が影響を受ける割合が高い、すなわち、歯科医療は家計の所得や景況感に影響を受けやすい。
 今後は、ニーズに基づいた施策を充実するにあたっては、ディマンドについても検討すべきであると考える。例えば本事項については、価格弾力性を指標のひとつとして加味することが必要である。政府の見解を問う。
 (注) 価格が一%上昇すると販売量がe%落ちるが、そのeを価格弾力性という。
三 質問七に対して、「歯科診療報酬については、物価、賃金等の動向、歯科保険医療機関の経営状況、医療保険財政の状況等を総合的に勘案し、中医協における議論を踏まえて適切に設定している」との答弁を得たが、医療経済実態調査の結果を見ると、個人立無床診療所の収支差額を医科と歯科で比較した場合、最新(平成十九年六月)の調査結果では、歯科は医科の五四.五%であり、この四半世紀にわたり医科の収支差額を大幅に下回っている。従来から報告されているように、例年六月は歯科の受診率が上昇する特異月であり、これを加味すると、我が国における歯科の経済的評価は医科の五割でしかないと断言してよいと思われる。厚生労働省の答弁は、この格差を「適切な設定」によるものとしており、歯科医療を著しく低く評価している。政府の見解を問う。
 (注) 土田武史中医協前会長は、会長時代に「歯科はフレキシビリティを失っている」と発言している。長年にわたる歯科医業収入の低迷により、医業経費の切り詰めが繰り返された結果、各々の歯科診療所における医業経費割り当ての自由度が著しく狭められている現状を端的に表した言葉と言える(平成十九年六月に開催された社会歯科学研究会の設立総会)。
四 前回質問十二に対して、「歯科疾患の発症との関連性が希薄であるこれ以外の業務に従事する労働者に対し、労働安全衛生法に基づき、事業者が歯科医師による健康診断を行わなければならないこととすることは、事業者に過度の負担を負わせることとなり、困難である。」との答弁を得たが、二月二十六日の予算委員会にてこの件について質問したところ、舛添厚生労働大臣からは、「会社も社員に対する一つの社会的責任としてやることがあってもいいのではないか。そうすれば会社の健康保険組合にしても、自分たちの負担が減るのではないか。何かいいアイディアを検討させていただきたい。」旨の答弁を得た。
 その後、この件について具体的に検討されたのか、また、今後さらに検討されるのであれば、困難であるという方向性ではなく、舛添大臣の答弁による企業における社会的責任として検討するとの解釈でよいのか、政府の見解を問う。
 次に、前回質問主意書とは異なる視点から質問をする。
五 医学・歯科医学は、従来、基礎医学、臨床医学を中心に発達してきたが、近年は社会医学の重要性が認識されてきている。京都大学大学院医学研究科には、医学専攻・医科学専攻以外に、社会健康医学系専攻というコースが設けられている。
 その一方で、国立大学院の歯学研究科を見渡すと、社会歯科医学に根ざした講座がほとんど見当たらない。これでは、複雑化した世相に見合った十分な研究がなされないという危惧を持たざるを得ない。この点について、政府の見解を問う。
六 WHO(世界保健機構)の「World Health Report」を見ると、わが国の医療は、低い医療費にもかかわらず、極めて高い評価を得ている。これに関連して、東京医科歯科大学の川渕孝一教授の著書(「歯科医療再生のストラテジー&スーパービジョン」医学情報社)から二つの表を引用したい(別添参照)。この二つの表から言えることは、わが国の歯科医療費が廉価な結果、国民の受診率を高めているとも解釈できるが、その一方で、患者さんと歯科医師、また、他の医療・保健・介護施設と歯科医療機関との間の情報連携が不十分となりがちではないだろうかということである。パターナリズム(父権主義的医療、おまかせ医療)が反省され、個々の患者さんの生活感が重視される現在、わが国の歯科医療費の現状について、政府の見解を問う。

 右質問する。


別添 1/2


別添 2/2


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