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平成二十年九月二十四日提出
質問第七号

米軍普天間飛行場の運用実態に関する質問主意書

提出者  照屋寛徳




米軍普天間飛行場の運用実態に関する質問主意書


 沖縄県宜野湾市の中心部に位置する米軍普天間飛行場は、住宅密集地に囲まれた奇異な位置関係と併せて、住宅地上空での旋回飛行訓練等、その異常な訓練形態から、いつ事故が発生しても不思議ではない「世界一危険な」米軍基地である。実際、二〇〇四年八月、CH53D大型輸送ヘリコプターが、隣接する沖縄国際大学本館ビルへ墜落炎上し、大惨事となったことは未だ記憶に新しい。
 上記墜落炎上事故を受けて日米両政府は、昨年八月十日、「普天間飛行場に係る場周経路の再検討及び更なる可能な安全対策についての検討に関する報告書」を発表した。しかし、同報告書で示された安全対策は、不十分であるばかりか、新たに設定された飛行コースすら守られていない。今なお、米軍普天間飛行場周辺では、住宅地上空での頻繁な旋回飛行が継続され、墜落の危険性が放置され続けていることは、厳しく批判せざるを得ない。
 この間、宜野湾市は、米海軍、及び海兵隊が運用する「航空施設整合利用ゾーン(AICUZ)プログラム」による米軍普天間飛行場の安全評価に加えて、独自に入手した米海軍省作成「海兵隊航空基地普天間飛行場マスタープラン一九九二年版」におけるクリアゾーン(利用禁止区域)設定と飛行パターン、飛行経路について分析してきたところである。その結果、米軍普天間飛行場の運用形態が、米軍自身の規定する安全基準に違反している事実が明らかとなった。
 宜野湾市は、市民の生命と財産を守る立場から、米軍普天間飛行場の即時の運用停止、早期返還を日米両政府に強く求めている。運用停止を求める要請行動の一環として、伊波洋一市長等は、去る七月二十七日より訪米し、ハワイの米太平洋軍総司令部などを訪れた。ところが、同司令部は、面会ばかりか要請文の受け取りすら拒否し、基地被害を受け続ける地元自治体の訴えを「門前払い」している。係る対応について伊波市長は、「被害を受ける地域からの要請に対応しないということは、米軍の責任が問われることになる。彼らの今後のリスクの方が大きい」とコメントし、識者は「(安全基準は)彼ら自身のルールであり、米軍にとって“不都合な真実”なのだろう」と分析している。全くもって同感である。
 以下、質問する。

一 米軍普天間飛行場については、一九九六年三月二十八日に「普天間飛行場における航空機騒音規制措置」が、日米両政府間で合意されている。合意された措置事項として、「進入及び出発経路を含む場周経路は、できる限り学校、病院を含む人口稠密地域上空を避けるように設定する」等、十二項目がある。にもかかわらず、日米両政府が、昨年八月十日にまとめた「普天間飛行場に係る場周経路の再検討及び更なる可能な安全対策についての検討に関する報告書」で示されたヘリ飛行訓練の場周経路に関して、その西側旋回コースは、市立普天間中学校上空を含めて、半分以上が住宅地上空となっている。一方、東側旋回コースは、基地内で設定されているが、宜野湾市の目視調査によると、ほとんどの場合において基地施設外に大きくはみ出し、住宅地上空や市役所、商業施設上空を頻繁に飛行しているという。政府は、係る日米合意不履行とも言うべき米軍の運用実態をどのように認識しているのか説明されたい。
二 日米両政府は、二〇〇〇年九月十一日に「環境原則に関する共同発表」において、「日米両政府の共通の目的は、施設及び区域に隣接する地域住民並びに在日米軍関係者及びその家族の健康及び安全を確保することである」と宣言している。その上で、環境管理基準について「日米の関連法令のうち、より厳しい基準を選択するとの基本的考えの下で作成される日本環境管理基準(JEGS)に従って行われる」としている。米軍普天間飛行場は、日本環境管理基準が適用される米軍施設か、それとも同管理基準1−11「免責」の項目に規定される免責対象施設であるのか、政府の見解を示されたい。
三 政府は、米海軍及び海兵隊の航空基地運用基準である「一般飛行作業インストラクション(OPNAVINST 11010.36B)」で謳われている「航空施設整合利用ゾーンプログラム」(以下、「AICUZプログラム」という)の存在を承知しているか。
四 滑走路機能を有する米軍普天間飛行場は、米海兵隊の航空基地であると認識しているが、政府の見解を示されたい。
五 「AICUZプログラム」では、航空施設安全クリアランス、いわゆるクリアゾーンは、米国域外の軍事施設にも適用されると規定している。その場合、クリアゾーンは、米軍普天間飛行場をはじめとする在日米海軍、及び海兵隊航空基地の全てに適用されて然るべきだと考えるが、政府の見解を示されたい。また、上記航空基地の全てにおいて、クリアゾーンが設定、確保されているのか、具体的な施設名を列挙した上で明らかにされたい。
六 宜野湾市が入手した米海軍省作成「海兵隊航空基地普天間飛行場マスタープラン一九九二年版」(以下、「普天間飛行場マスタープラン」という)によれば、米軍普天間飛行場のクリアゾーンは、滑走路の両端から幅が約四百五十七メートルから七百五メートル、長さが約九百十四メートルの台形区域であり、住宅の建設等、土地利用が制限されている。報道によると、平成二年には、クリアゾーン域内に位置する滑走路南側の五階建てアパート(宜野湾市真栄原の土地約五百六十平方メートル)を日本政府が買い取り、「高度制限に伴う保安用地」として建造物を撤去の上、「海兵隊施設」として現在に至るまで米軍に提供されているようだ。アパート撤去については、「普天間飛行場マスタープラン」の中で、同飛行場の安全確保の取り組みの実例として明記されている。また、現在米軍は、滑走路南進入路の延長線上に位置する民間鉄塔(宜野湾市大謝名)を撤去するよう、日本政府を通じて所有者に要請しているようだが、政府による係るアパートの買い取りと撤去、及び米軍への用地提供、並びに民間鉄塔撤去の要請は事実であるのか、撤去の理由を含めて明らかにされたい。
七 政府は、これまで米軍普天間飛行場のクリアゾーン域内や隣接する周辺地域の土地利用制限をせずに、市街地化を黙認・放置してきた責任の所在が、日米両政府のいずれにあると考えるのか、その理由を含めて見解を示されたい。
八 米軍普天間飛行場のクリアゾーン域内には、市立普天間第二小学校、新城児童センターなど公共施設や保育所、医院などが十八施設、住宅が約八百十四棟存在し、域内人口は約三千六百人に及ぶ。このことは、宜野湾市が主張するように、米軍自身がクリアゾーンの検証をしてこなかった証左であり、明らかに米海兵隊による「AICUZプログラム」運用基準違反であると考える。一方で八月十九日、米軍普天間飛行場のリオ・ファルカン司令官は、視察に訪れた沖縄県議会・米軍基地関係特別委員会一行に対して、「(米軍普天間飛行場は)米国内法を必要に応じて調整しながら運用している。国際航空規定の範囲で運用しており、(クリアゾーン)違反ではない」との認識を示したという。このように地元自治体(宜野湾市)と米軍の認識が異なる中、政府は米軍普天間飛行場の運用実態について、米軍の安全基準違反であるとの認識を持っているのか。その際、安全基準違反であるとの認識に立つのであれば、米政府に対して同飛行場の即時の運用停止を求めるべきだと考えるが、見解を示されたい。他方、安全基準違反でないとの認識に立つのであれば、その理由を明らかにされたい。
九 去る七月三十一日、政府と沖縄県の間で「普天間飛行場の周辺の危険性除去に関するワーキングチーム(作業班)」が発足した。宜野湾市と宜野湾市議会は、同ワーキングチームへの参加と地元での公聴会開催、及び米軍が規定する安全基準の問題について、同ワーキングチームの議題として正式に取り上げることを求めている。政府に、係る宜野湾市の要望を受け入れる意思はあるのか否か、その理由を含めて見解を示されたい。
十 防衛省は、去る八月二十八日から九月三日まで、米軍普天間飛行場の運用実態について米軍機の飛行航跡の観測調査を実施した。調査は、客観的データを収集し、上記ワーキングチームの検討資料に供することが目的だという。ところが、在沖米海兵隊報道部によると、調査期間七日間のうち、米軍は四日間を休日としていた。調査期間の短さもさることながら、期間の過半が休日では、実態に即したデータが収集できたとは到底考えられない。一方で、政府は来年度より、年間を通じて二十四時間の航跡調査を実施する方針であるという。そうであれば、同ワーキングチームは、本年度実施済みの調査結果報告書を検討資料とせず、より正確なデータ収集が期待できる来年度実施の調査結果報告書を検討資料に用いるべきだと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
十一 去る八月二十八日から九月三日までの航跡調査は、航跡測定器を持つ民間業者に委託した上で、五ヵ所の観測地点を設けて実施されたようである。一方、来年度実施予定の航跡調査は、防衛省が航跡測定器とカメラ各一台を購入して対応するようだが、たった一地点における観測調査で、広大な普天間飛行場周辺を飛び回る米軍機の航跡を正確に把握できるのか甚だ疑問である。政府として、次年度以降に複数の航跡測定器の購入等、必要な調査機器を調達する考えはあるのか、見解を明らかにされたい。
十二 米軍普天間飛行場を離発着する米軍機の騒音測定に関して、中城村字久場に設置した航空機騒音測定器が、六月から運用を停止している。停止の理由について、沖縄防衛局は「設置場所は車の騒音などが発生するため、音源を米軍機と特定するのは難しい」と説明しているが、設置場所の変更などによる測定再開の目途は、未だに立っていないようである。この間、中城村は、運用停止中である同村字久場における早期の測定再開の他、南上原、登又、津覇、浜の計四ヵ所にも測定器を設置するよう求めてきた。係る中城村の要請に対し、沖縄防衛局は、平成十九年度予算で字久場に測定器一機を設置し、残りの四機については「本年度以降に検討する」旨、同村に回答している。政府は、残りの四機の測定器を設置し、字久場の測定器も航空機信号を受信する機種に変更できるよう、早急に予算措置すべきだと考えるが見解を示されたい。
十三 中城村の担当課によると、字久場における本年一月から六月までの騒音測定データは、沖縄防衛局より提供されていないとのことである。地域住民の基地被害実態を把握する上でも、騒音データが地元自治体に公開されていない事実は問題視せざるを得ない。沖縄防衛局が宜野湾市や嘉手納町で測定しているデータと同様、中城村においても毎月インターネット等で公開されて然るべきである。政府は、これまで中城村に対して騒音測定データを公開してこなかった理由を明らかにした上で、今後の対応について見解を示されたい。

 右質問する。



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