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平成二十年十一月六日提出
質問第二一〇号

前航空幕僚長の自衛隊法および自衛隊員倫理法違反に関する質問主意書

提出者  辻元清美




前航空幕僚長の自衛隊法および自衛隊員倫理法違反に関する質問主意書


 田母神俊雄前航空幕僚長は、民間企業が主催する懸賞論文に、政府見解と異なる内容の、「日本は侵略国家であったのか」と題する懸賞論文を応募していたことが一〇月三一日に明らかになった。
 報道によれば、「防衛省は内規で、隊員が職務に関する意見をメディアなどで発表する際、文書で上司に届けることを求めている。空幕長の場合、官房長に連絡する必要があった。だが関係者によると、田母神氏は論文を『職務には関係のない、個人的な研究内容の結果を投稿する』と説明し、正式な文書による連絡は不要と考え、背広組への連絡は口頭で済ませただけだったという。制服組の一部は、政府見解と異なる論文の内容を危ぶみ、田母神氏に対して論文投稿を見合わせるよう水面下で説得を続けたが『個人的な持論』という主張に押し切られた。」(二〇〇八年一〇月三一日、毎日新聞)
 これに対し麻生首相は、「個人的に出したとしても立場が立場だから適切じゃない」(一一月二日、毎日新聞)と発言している。
 自衛隊員倫理法は次のように定めている。
 (自衛隊員が遵守すべき職務に係る倫理原則)
 第三条 自衛隊員は、国民全体の奉仕者であり、国民の一部に対してのみの奉仕者ではないことを自覚し、職務上知り得た情報について国民の一部に対してのみ有利な取扱いをする等国民に対し不当な差別的取扱いをしてはならず、常に公正な職務の執行に当たらなければならない。
 2 自衛隊員は、常に公私の別を明らかにし、いやしくもその職務や地位を自らや自らの属する組織のための私的利益のために用いてはならない。
 また、自衛隊法は次のように定めている。
  (政治的行為の制限)
 第六十一条 隊員は、政党又は政令で定める政治的目的のために、寄附金その他の利益を求め、若しくは受領し、又は何らの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与し、あるいは選挙権の行使を除くほか、政令で定める政治的行為をしてはならない。
 この「政治的目的」「政治的行為」については、自衛隊法施行令は次のように定めている。
  第四節 政治的目的及び政治的行為
 (政治的目的の定義)
 第八十六条 法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的目的は、次の各号に掲げるものとする。(中略)
  五 政治の方向に影響を与える意図で特定の政策を主張し、又はこれに反対すること。(後略)
  (政治的行為の定義)
 第八十七条 法第六十一条第一項に規定する政令で定める政治的行為は、次の各号に掲げるものとする。
  一 政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用すること。
  二 政治的目的のために寄附金その他の利益を提供し、又は提供せず、その他政治的目的を持つなんらかの行為をし、又はしないことに対する代償又は報酬として、任用、職務、給与その他隊員の地位に関してなんらかの利益を得若しくは得ようと企て、又は得させようとし、あるいは不利益を与え、与えようと企て、又は与えようとおびやかすこと。
  三 政治的目的をもつて、賦課金、寄附金、会費若しくはその他の金品を求め、若しくは受領し、又はなんらの方法をもつてするを問わず、これらの行為に関与すること。
 また、自衛隊員は入隊時に「服務の宣誓」を行っている(宣誓 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。〈自衛隊法施行規則第三九条〉)。
 田母神前航空幕僚長の当該行為は、自衛隊員の政治的行為を厳しく制限した自衛隊法などに違反する可能性が高い。政府の見解を大至急明らかにする必要がある。
 従って、以下、質問する。

一 懸賞論文への投稿について
 1 田母神前航空幕僚長は、「航空幕僚長」の肩書きで、民間企業が主催する懸賞論文に投稿し、「懸賞金三〇〇万円・全国アパホテル巡りご招待券」を受け取ったことは事実か。それはいつの時点か。そのことを日本政府は把握しているか。
 2 田母神前航空幕僚長が当該論文を投稿するにあたり、日本政府に対し文書での届出・連絡がなかったのは事実か。これは内規違反に相当するか。日本政府は、見解を明らかにされたい。
 3 田母神前航空幕僚長が当該論文を投稿するにあたり、従来の政府見解と異なる内容であることを日本政府は事前に知っていたか。知っていたのであれば、その時点で田母神前航空幕僚長を解任させなかった理由は何か。
 4 「航空幕僚長」の肩書きで、民間企業が主催する懸賞論文に投稿し、「懸賞金三〇〇万円・全国アパホテル巡りご招待券」を受け取った田母神前航空幕僚長の行為は、自衛隊員倫理法第三条第二項に反するか。そうであれば、自衛隊員倫理法違反に該当するとして、どのような処罰を行うべきと考えるか。
 5 「航空幕僚長」の肩書きで、政府見解と異なる懸賞論文を発表した田母神前航空幕僚長の「政治的目的」は、自衛隊法施行令第八十六条第五号に該当するか。そうであれば、自衛隊法違反に該当するとして、どのような処罰を行うべきと考えるか。
 6 「航空幕僚長」の肩書きで、民間企業が主催する懸賞論文に投稿し、「懸賞金三〇〇万円・全国アパホテル巡りご招待券」を受け取った田母神前航空幕僚長の「政治的行為」は、自衛隊法施行令第八十七条第一項第一号に該当するか。そうであれば、自衛隊法違反に該当するとして、どのような処罰を行うべきと考えるか。
 7 「航空幕僚長」の肩書きで、民間企業が主催する懸賞論文に投稿し、「懸賞金三〇〇万円・全国アパホテル巡りご招待券」を受け取った田母神前航空幕僚長の「政治的行為」は、自衛隊法施行令第八十七条第一項第三号に該当するか。そうであれば、自衛隊法違反に該当するとして、どのような処罰を行うべきと考えるか。
 8 田母神前航空幕僚長は、自衛隊入隊時に「服務の宣誓」を行っているか。行っているのであれば、「航空幕僚長」の肩書きで、民間企業が主催する懸賞論文に投稿し、「懸賞金三〇〇万円・全国アパホテル巡りご招待券」を受け取った田母神前航空幕僚長の「政治的行為」は、「服務の宣誓」が禁じる「政治的活動に関与せず」に該当するか。そうであれば、どのような処罰が行われるべきか。
 9 田母神前航空幕僚長が、他の隊員に対して当該懸賞論文に応募するよう勧めていた事実はあるか。あるとすれば、自衛隊法施行令が定める「政治的目的」「政治的行為」に該当するか。そうであれば、どのような処罰が行われるべきか。
二 麻生首相の発言について
 1 具体的に何が「適切」でないのか。論文を出したことか、論文の出し方か、その内容か。内容であるとすれば、どの部分が「適切」でないのか。麻生首相の見解を明らかにされたい。
 2 「航空幕僚長」の肩書きで、民間企業が主催する懸賞論文に投稿することは、「個人的立場」で行ったものと認められるのか。麻生首相の見解を明らかにされたい。
 3 田母神前航空幕僚長が何ら処分を受けることなく「定年退職」したことを、麻生首相は事前に了承したのか。そうでないなら、何らかの処分の必要性を防衛省に伝えていたのか。

 右質問する。



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