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平成二十一年二月二日提出
質問第七七号

路木ダム建設事業に関する質問主意書

提出者  前原誠司




路木ダム建設事業に関する質問主意書


 熊本県天草市河浦町を流れる路木川では、熊本県によって路木川河川総合開発事業の一環として「路木ダム」の建設が進められており、並行して「路木ダム」を水源とする「水道水源開発施設整備事業」と「簡易水道施設整備事業」が天草市によって行われている。

一 「路木ダム」建設の目的の一つである治水について「路木川河川整備計画」(平成十三年一月熊本県)には「昭和五十七年七月等の豪雨による洪水時には、下流宅地において約百棟の床上浸水、中流部水田においては約八ヘクタールの農作物被害が発生している」などと書かれている。
 また、「路木川総合開発事業計画書」(平成五年三月熊本県)には「昭和六十年七月の梅雨前線豪雨による被害:浸水家屋四戸、浸水農地十ヘクタール」、「昭和六十一年七月の梅雨前線豪雨による被害:浸水家屋四戸、浸水農地八ヘクタール」などと書かれている。
 しかし、平成二十年十一月に地元市民団体「路木ダムを考える河浦住民の会」が路木地区に対する聞き取り調査を行った結果、路木川の氾濫による家屋浸水被害について全世帯から「記憶がない」との回答を得た。
 また、天草市河浦支所に保存されている河浦町(当時)作成のファイル「昭和五十七年七月二十四日集中豪雨関係綴総務課」によっても、「路木川河川整備計画」や「路木川総合開発事業計画書」などに書かれた路木地区の家屋被害はなかったことが確認された。
 さらに、「路木川総合開発事業路木ダム建設工事に対する基本協定書」(平成五年五月十八日付)締結時の当事者の一人である田代主基男・河浦町町長(当時)は平成二十年十二月、複数の報道機関の取材に対して「昭和五十七年七月の豪雨被害の約百棟の床上浸水というのは河浦町全体の被災数であり、路木地区の家屋災害はなかった」と答えている。
 上記「整備計画」や「事業計画書」などに書かれた路木地区の家屋被害に関する記述は全て虚偽ではないか。また、事実を確認できないのであれば、事象を前提とすべきではないのではないか。政府の見解を求める。
 平成二十年十二月に示された財務省原案には路木ダム本体着工のための補助金が盛り込まれているが、虚偽の洪水災害を建設の根拠とするダム事業に対する補助金の交付は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」に反するのではないか。
二 平成十九年九月に路木ダムの建設予定地とその周辺を視察した大熊孝・元新潟大学教授(河川工学)は、家屋が集まっている路木集落が山付きで河口から遮られているため、「路木川の氾濫による路木集落の家屋被害は地形上ありえない」などと指摘した。
 実際、路木川は最下流部で川幅が二倍に広がって羊角湾に注ぎ、路木集落は路木川と山で隔てられているため、路木川の氾濫による路木集落の水害は起こりえないことは一目瞭然である。ところが、熊本県が作成した路木川の氾濫想定区域には、この「地形上ありえない」路木集落も含まれている。国の科学的見地からの見解を問う。
三 熊本県が「路木川河川整備計画」で示した水害記録は事実に反し、また平成二十年度熊本県公共事業再評価監視委員会において説明した氾濫想定区域(被害対象区域)が現実を無視したものであれば、試算の地元市民団体費用便益比(B/C)は〇.三三となり、経済的合理性がなく、事業継続の要件を満たさないことになる。
 起きてもいない、かつ起こるはずもない洪水被害を想定した治水計画などありえない。
 「路木ダムを考える河浦住民の会」の現地調査では川沿いの一部の農地が冠水したことを確認しているが、それは河川の一部改修や護岸補強工事で充分対応可能である。大熊・元教授も「一部水田の冠水被害対策のために九十億円ものダムを造るのはあまりに費用対効果がない」などと述べている。
 捏造された災害記録や起こるはずもない洪水被害を想定した治水計画などに基づいた「路木川河川整備計画」の同意を取り消し、事実に基づく、かつ地元の実情に沿った「河川整備計画」の再作成を指示するべきではないか。
四 天草市は厚生労働省健康局水道課に「水道水源開発等施設整備費事業評価概要」(以下「上水道評価概要」という)と「一町田地区簡易水道再編推進事業評価概要」(以下「簡水評価概要」という)を提出した。
 両事業の評価概要とも「代替案を検討したが、代替水源の確保は困難である」旨書かれている。
 しかし、地元市民団体「天草の海を考える会」代表の植村振作氏(元大阪大学大学院理学研究科助教授)が平成二十年九月二十五日に開示請求した行政文書(天草市が、ダム建設以外の水源確保策を検討したことを証する文書)の公開について、天草市は「行政文書非公開決定通知書」(天簡第一〇八号−平成二十年十月六日付)の中で次の旨述べている。
 「行政文書不存在であり、天草市では、路木ダムを水源とした利水事業を展開しておりますので、ダム以外の水源確保は検討しておりません。よって、請求があった行政文書は、実施機関では作成しておりません」
 つまり、天草市は路木ダム以外の代替水源を検討していなかったにもかかわらず、厚生労働省に虚偽の報告を行ったのではないか。このことは、厚生労働省通達「水道施設整備事業の評価の実施について」(健水発第〇七一二〇〇二号平成十六年七月十二日付)に記された「コスト縮減及び代替案立案等の可能性」に反することになる。
 同市河浦町には広い流域面積を持ち、天草市でも最も豊富な水量、清浄な水質を持つ一町田川が上水として未活用のまま存在している。一町田川からの取水など実現可能な代替案の詳細な検討を行わせるべきではないか。
五 「天草の海を考える会」代表の植村振作氏は平成二十年度熊本県公共事業再評価監視委員会に提出した「路木川水系路木川総合開発事業路木ダム建設に関する意見書(二)」において、「天草市の水需要予測が、路木ダム建設の必要性を主張せんがために、現実には起こりえない過大な給水量を設定してなされている」と指摘して、特に牛深地区の水需要予測について詳細な解析・検証を行っている。
 それによると、将来の水需要予測の重要要素である給水人口、負荷率、二月期の最大取水量などの算出に関して、天草市によって意図的に過大な予測が行われており、適正に算出すれば不足量は一,三〇〇立方メートル/日程度であることが示されている。
 正確かつ適正に算出された水需要予測に則った事業計画を再提出させる必要があるのではないか。国の見解を問う。

 右質問する。



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