衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
平成二十一年三月三十日提出
質問第二五七号

「奨学金返還延滞増加」と「回収策強化」を巡る問題についての政府の認識に関する質問主意書

提出者  保坂展人




「奨学金返還延滞増加」と「回収策強化」を巡る問題についての政府の認識に関する質問主意書


 独立行政法人・日本学生支援機構は、大学生に貸与された「奨学金」の返済延滞理由の多くが「失業」「借金返済」「低収入」など経済的に困難な状態に陥っている実態を無視し、全国銀行個人信用情報センターへの延滞個人情報提供に向けた「同意書」の提出手続きを開始した。
 そもそも多くの延滞債権を生み出した原因は、有利子貸与を政策的に増加させて、大学・大学院卒業と同時に多額の「借金返済」を背負った労働者を大量に生み出し、「教育の機会均等の原則」に反する「奨学金」制度の教育ローン化を進めてきたからである。
 今日、全労働者の三分の一が「不安定雇用」の状態に置かれ、年収二百万円以下の労働者が一千万人を超え、格差の拡大と貧困化が急速に進んでいる。不安定雇用労働者の多くが「最低限度の生活」を営むことさえ困難な状況下に置かれ、生活保護申請も急増している。「生活保護基準」以下の収入となっている「返還者」の存在とその実態を把握し、緊急対策を講じることこそ問われている。
 このような日本学生支援機構側の姿勢は将来ある若者の未来をいたずらに奪うものであり、人権上からも大変問題であるといわざるを得ないものである。
 よって、以下質問する。

一 一九六六年に国連総会で採択された国際人権A規約十三条二項(c)は「高等教育は…無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること」と定めている。政府は、同規約を一九七九年に批准しながら、この条項については留保し続け、GDPに対する公財政支出学校教育費の割合を低く抑えてきたことが「私費負担率が高く高学費の高等教育」を生み出し、「教育の機会均等」を歪めてきた。しかも、「高等教育を受ける機会」が奪われないように制度設計すべき「奨学金」が返還義務のない「給付制」ではなく「貸与制」であり、有利子貸与のみを政策的に増加させて、返済する経済基盤のない学生を「多額の債務者」として社会に送り出す事実上の「貸金業」に奨学金制度を変質させてきた。政府はこうした政策的な問題点を率直に認めるべきと考えるが、その見解を明らかにされたい。
二 政府は、日本学生支援機構の「高等学校等奨学事業」を都道府県に移管し、制度・財源の均等化を図ることなく「都道府県格差」を生み出してきた。
 現在、各都道府県高等学校等奨学事業を受けている高校生の人数、貸与金額の総額、返還状況や延滞状況・延滞理由の実態を把握しているか。各都道府県高等学校等奨学事業の返還免除の基準及び免除率を把握しているか。申請者が増加している現状と希望しながら受給できなかった人数を把握しているか。高等学校における授業料免除率がどう推移しているか把握しているか。公・私立高等学校等の退学理由として「経済的な理由」がどの程度の割合となっているのか明らかにされたい。
三 政府は、日本学生支援機構が進めている全国銀行個人信用情報センターへの延滞個人情報提供に向けた実務作業を直ちに凍結させ、奨学金事業の根拠法となる憲法・教育基本法の原則に立ち返って、根本的な見直しを図るべきと考える。本来、貸金業者相互の個人信用情報を提供することによって多重債務の貸倒れを防止するのが全国銀行個人信用情報センターへの個人情報提供の主旨である。機構は、「教育の機会均等原則」を保障する公的機関として奨学金事業を行うことが(独)日本学生支援機構法にも明記されている。今回の延滞個人情報提供の根拠は、機構法の第何条に基づくものであるのか、その根拠条文を明らかにされたい。また、個人情報提供に向けた「同意書」について、新規採用者だけでなく、返還者や貸与継続者にも「同意書」の提出を求め、貸与継続者が「同意書」を提出しない場合は「貸与を廃止する」「学位を授与しない」という事実上の「強制」さえ行っている。そもそも、返還者や貸与継続者に新たな「同意書」の提出を求めることは契約の重大な変更に当たる。契約変更の同意もなく「個人情報提供」の「同意書」を提出させる根拠を明確に示してもらいたい。

 右質問する。



経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.