衆議院

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平成二十一年十二月一日提出
質問第一三五号

子ども手当に関する質問主意書

提出者  高市早苗




子ども手当に関する質問主意書


 子ども手当の創設は、先の総選挙における民主党マニフェストの目玉施策である。
 民主党マニフェストの記述は、中学卒業までの子ども一人当たりに年三十一万二千円(月額二万六千円)を支給し、平成二十二年度においては、その半額を実施するというものである。必要財源の試算をみると、所得制限を行わないことは明らかである。
 平成二十一年八月の衆議院議員総選挙では、小学校の教員が、担任する子供の保護者に対して、子ども手当の内容説明をしながら民主党候補への投票依頼電話を行っていた旨も仄聞するところであったし、子育て世代の有権者が子ども手当に大きな期待を寄せていたことは、私自身も体感したところである。
 マニフェストを「国民との契約事項」とする鳩山内閣にとって、子ども手当の創設は、最優先で実現しなければならない施策であることは想像に難くない。
 しかしながら、鳩山内閣の足並みは相変わらず乱れている。
 第一に、「所得制限の是非」について、閣内不一致が目立っている。
 藤井財務大臣は、平成二十一年十一月十八日の記者会見で、子ども手当の支給対象に所得制限を設けることについて、論点になりうると述べ、制度設計を行う中で検討すべきとの考えを示された。
 鳩山内閣総理大臣は、同日夜の記者会見で、「子ども一人一人に手当てするということで、裕福だとか、裕福ではないという発想ではない」と述べ、所得制限を設けることに否定的な見解を示された。
 亀井郵政改革・金融担当大臣は、所得制限導入を求めておられたし、国家戦略会議でも、子ども手当の所得制限等について検討に着手していると聞く。
 第二に、子ども手当の「財源負担の在り方」についても、閣内の意思が統一されていない。
 民主党マニフェストでは、平成二十二年度に二.七兆円、その後は毎年五.五兆円と、四年間の合計で一九.二兆円の財源を要するとしている。
 この財源負担について、野田財務副大臣は、地方負担もあり得ると発言された。
 平成二十一年十月二十日の会見で、鳩山内閣総理大臣は、全額国費で賄う考えを強調された。
 平野官房長官は、同日の記者会見で、総理の「発言は重いが、その中でも首相の思いも含めて具体案を決めなければいけない」と述べ、地方の一部負担に含みを残しておられる。
 菅国家戦略担当大臣は、平成二十一年十一月十九日、児童手当廃止で自治体や企業の負担が軽減された後の対応について、「そのまま軽減でいくのか、その分で、子育てに関することに振り向けるのか」と語っておられる。
 第三に、子ども手当の「政策目的」についても、曖昧になってきている。
 鳩山内閣総理大臣は、平成二十一年八月の衆議院総選挙期間中は、「少子化対策」である点を強調しておられたが、翌月の訪米時の記者会見では、「教育への投資であると同時に、消費刺激策であり、少子化対策となる」と発言し、景気対策としての意義を示された。
 長妻厚生労働大臣は、平成二十一年十月二十日の記者会見において、「今後、子ども手当も含め、貧困率の数値を改善する政策を打ち出したい」との発言をされている。
 子ども手当は、「出生率向上を目指した少子化対策」なのか、「低所得家庭向けの家計支援策」なのか、「消費刺激策」なのか、その政策目的が曖昧化している。
 この政策目的の曖昧化こそが、所得制限の是非に関する閣内不一致を生み、福島消費者・少子化担当大臣が党首を務める社会民主党が「十八歳まで月一万円を支給し、あまった財源を保育所増設や学童保育所充実にまわすべき」と全く異なる主張をする状況を生む原因であると考える。
 また、子ども手当は高額の現金支給であることから、育児に無関係な支出に充当されることも懸念されるほか、例えば赤ちゃんポストなどを悪用した詐欺や、偽装離婚増加の可能性も想定できる。しかし、「モラル・ハザード対策」について議論がなされた形跡すらない。
 私が少子化担当大臣を務めた安倍内閣においては、乳幼児期の児童手当加算を行ったが、その実施に当たっては、官房長官が中心となり、財務大臣、厚生労働大臣、少子化担当大臣で構成される関係閣僚会議を立ち上げ、財源の問題を含め様々な論点について議論を行った。
 鳩山内閣においては、目玉施策であるにもかかわらず、関係閣僚がそれぞれの考えを自由に述べるだけで、閣内の意思統一がいつまでも図られない。官邸のリーダーシップ欠如には呆れるばかりである。
 右の点を踏まえ、次の事項について質問する。

一 子ども手当の「政策目的」と「効果」について
 @ 鳩山内閣総理大臣は、子ども手当の「政策目的」は何だと考えているか。「出生率向上を目指した少子化対策」なのか、「低所得家庭向けの家計支援策」なのか、「消費刺激策」なのか、具体的に回答されたい。
 A 仮に、「出生率向上を目指した少子化対策」であるとする場合、子ども手当の支給によって、出生率はどの程度向上すると考えているのか。その根拠となる具体的数値を示して回答されたい。
 B 仮に、「低所得家庭向けの家計支援策」であるとする場合、子ども手当は、育児に無関係な使途に充当されたとしてもやむを得ないと考えるのか。
 C 仮に、「消費刺激策」であるとする場合、低所得家庭ほど、子ども手当は育児に無関係な使途に充当される可能性が高いと考えるが、それはやむを得ないと考えるのか。
 D 仮に、「消費刺激策」であるとする場合、所得制限を設けず、支給対象を拡大した方が効果的であるが、この点をどう考えるか。
二 子ども手当の「支給額の根拠」と「所得制限」等について
 @ 鳩山内閣総理大臣が代表を務める民主党が、マニフェストで子ども手当の支給額を「月額二万六千円」とした根拠は何か。鳩山内閣総理大臣に伺う。
 A 鳩山内閣総理大臣が「国民との契約事項」とした民主党マニフェストが示す通り、子ども手当の支給に当たっては、所得制限を設けないということで間違いはないか。鳩山内閣総理大臣に伺う。
 B 亀井郵政改革・金融担当大臣は、子ども手当に所得制限を設けるべきだと主張しておられたが、その主張は現在も変わらないのか。変わらないとしたら、その理由は何か。変わったとしたら、その理由は何か。
 C 福島消費者・少子化担当大臣は、十八歳まで月一万円を支給し、あまった財源を保育所増設や学童保育所充実にまわすべきだと主張しておられた。子ども手当の政策目的を「少子化対策」とするのであれば、実に的確な主張だと思うが、その主張は現在も変わらないのか。変わらないとしたら、その理由は何か。変わったとしたら、その理由は何か。
三 子ども手当の「支給時期」について
 @ 新聞に報道された子ども手当関連の法案骨子によると、平成二十二年四月一日の法施行である。子ども手当は鳩山内閣の目玉施策の一つであり、国民の期待も高いことから、実施するのであれば早期に支給を開始するべきだと考えるが、平成二十二年四月に支給を開始する予定はあるか。平成二十二年四月に支給しないとすると、その理由は何か。
 A 平野官房長官は、平成二十一年十月十一日、記者団に対して、「子ども手当は来年六月後半には支給できる制度設計にしないといけない」と述べ、平成二十二年夏の参議院議員選挙直前に最初の支給を行う意向を示したとの報道がある。これは事実か。
 B 民主党は、平成二十年十月、麻生政権において定額給付金の支給を決定した際に、「選挙を意識した党利党略」と批判した。子ども手当が定額給付金よりもはるかに高額であることを考慮すると、来年夏の参議院選挙直前に支給するという方針が事実であれば、これも「選挙を意識した党利党略」と批判されてもやむを得ないと考える。この点についての鳩山内閣総理大臣の見解を伺う。
四 子ども手当の財源捻出のための「配偶者控除・扶養控除の廃止」について
 @ 民主党マニフェストには、「『控除』から『手当』へ転換するため、所得税の配偶者控除・扶養控除を廃止し、『子ども手当』を創設」と記載されている。鳩山内閣総理大臣は、マニフェストを「国民との契約事項」としておられることから、この方針には変わりはないか。仮に変わったとしたら、その理由は何か。
 A 平成二十一年十一月二十日の朝日新聞朝刊によると、「民主党が財源に当て込んでいた所得税の配偶者控除の廃止(約六千億円)も、政府の税制調査会で慎重論が強く、来年度からの実施は厳しい情勢」との記述があるが、これは事実か。
 B 子育て世帯のうち、実際に一番お金がかかるのは大学生がいる家庭であると言われている。主として四十歳代から五十歳代のサラリーマン世帯が多いが、こうした世帯は、子ども手当の財源捻出のための「配偶者控除と扶養控除の廃止」で増税になるとの見解を示す学識経験者がいる。こうした見解に対する鳩山内閣総理大臣の考え方を伺う。
 C 例えば、夫が企業で働き、妻は専業主婦として家庭を守り、何とか三人の子どもを高校、大学に入れたというサラリーマン家庭では、年収七百万円なら年額で約十四万円、九百万円なら約二十九万円もの税負担増になるという試算がある。これまで懸命に多子を育ててきた家庭が、新制度によって更に負担を増やされるとしたら、あまりにも報われない。このような家庭に対して、何らかの支援策を考えているのか。
 D 私は、納税者の家族構成や子供の年齢によって生じる過大な不公平感は、制度の継続性と安定性を損ねるものだと考えるが、鳩山内閣総理大臣の考え方を伺う。
五 子ども手当財源の「地方負担」について
 @ 前記のように、鳩山内閣の閣僚等の間から、地方に一部負担させるとの意見が出ているが、地方負担の是非についての鳩山内閣総理大臣の見解を伺う。
 A 平成二十一年十一月二十日の朝日新聞朝刊によると、原口総務大臣が、「全額国費というマニフェストを曲げるなら、もう一回選挙をして信を問うべきだ」と反発したとの報道があるが、これは事実か。
 B 前問の報道が事実だとすれば、原口総務大臣は、どのタイミングで国民の信を問うべきだと考えているのか、在るべき総選挙のスケジュールについての考え方を伺う。
 C 前問に関して、報道が事実でないとすると、原口総務大臣は朝日新聞社に対して抗議を行ったのか。
六 子ども手当制度の「モラル・ハザード対策」について
 @ 赤ちゃんポストの是非について、鳩山内閣総理大臣の見解を伺う。
 A 子ども手当の支給を受けるために子どもを何人も産み、その後、赤ちゃんポストに捨てるという痛ましい事件も起こりうる可能性がある。子ども手当制度の導入に当たっては、赤ちゃんポストの在り方と併せて議論を進めていくべきだと考えるが、鳩山内閣総理大臣の見解を伺う。
 B 鳩山内閣総理大臣は、高額の子ども手当の支給、鳩山内閣が復活させる母子加算、父子家庭への児童扶養手当支給などがモチベーションとなって偽装結婚や婚外子が増加する可能性はあると考えるか。それとも皆無と考えるか。
 C 私は既に、裁判所の調停委員から、子ども手当、生活保護、母子加算などによって自活の目途が立つことを理由にした離婚の申し立てがなされた事実を聞かされているが、鳩山内閣では、このような実情について、何らかの調査を行っているか。
 D 子ども手当に関する「モラル・ハザード対策」について、鳩山内閣で議論したことはあるか。あるとすれば、議論の内容と予定している「モラル・ハザード対策」について回答されたい。仮に議論をしたことがないとすれば、その理由について回答されたい。
 E 子ども手当については、育児以外の支出に充当される可能性についても指摘がなされている。新聞で報道された子ども手当関連法案の骨子によると、「受給者の責務」として「子ども手当の趣旨に従って用いなければならない」としている。「子ども手当の趣旨」とは何か。
 F 前問の受給者の責務は、単なる努力規定なのか、義務規定なのか。受給者が「子ども手当の趣旨」以外に使用した場合には、手当の返還を求めるなどの措置をとるのか。
 G 前問に関して、「子ども手当の趣旨」に従って用いたか否かについては、具体的にどのような方法で確認をするのか。
七 子ども手当制度創設等に向けての「鳩山内閣の推進体制」について
 @ 鳩山内閣の目玉施策である子ども手当制度について、前記のように関係閣僚が自由に発言するのではなく、安倍内閣で設置したような関係閣僚会議を創設して、早急に意思統一と課題の洗い出しを行うべきだと考えるが、鳩山内閣総理大臣の見解如何。
 A 民主党マニフェストでは、「『子ども家庭省(仮称)』の設置を検討する」との記述があるが、今後、どのようなスケジュールで検討を進めていく考えか。

 右質問する。



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