質問本文情報
平成二十二年四月十二日提出質問第三七六号
いわゆる密約問題に関する質問主意書
提出者 木村太郎
いわゆる密約問題に関する質問主意書
昨年九月十六日に、岡田外務大臣が、藪中外務事務次官に対して、四つの「密約」について外務省内に存在する原資料を調査し報告するよう命令し、外務省内に設置された調査チームが調査報告書を作成し、同年十一月には当該調査報告書の内容を検証するための「いわゆる『密約』問題に関する有識者委員会」が設置された。その後同委員会は、平成二十二年三月九日の報告書で、密約と認定しなかった。しかし、同年四月二日衆議院外務委員会の参考人質疑において、外務省有識者委員会の報告書の是非が議論となり、沖縄返還時の「合意議事録」に関しては異論を唱えた。今回の同委員会の調査により、歴史上の事実が明らかにされたことについては一定の評価をするものであるが、岡田大臣からは、何の意図・目的で命令をしたのか、また政府が今後何をしたいのかが明確にされていない。普天間基地移設問題等により、日米同盟関係は今、この半世紀で最悪の状態にあり、我が国の安全保障上極めて憂慮すべきものと考える。
従って、次の事項について質問する。
二 佐藤元首相とニクソン元大統領の昭和四十四年十一月二十一日の日米共同声明についての「合意議事録」においては、米国側がイントロダクションという言葉の意味をトランジットは含まないと述べたが、唯一の被爆国である日本の国民感情を最大限考慮し、また「国益」に基づいて、曲解もやむにやまれぬ高度な政治判断だったと推察される。トランジットを厳密に解釈すれば、領海内通過も含む訳であり、当時野党の社会党や共産党などは核兵器搭載航空機や艦船の進入・通過を認めないとした。そうであるならば、米国航空機・艦船だけでなく、旧ソ連に対しても日本が検査することが必要になる。しかしながら、米国のみに励行を迫り、旧ソ連については黙認するという対応は、日米安保解消に等しいことになると考えるが、鳩山内閣の見解如何。
三 中曽根元首相は本年三月三十日夜テレビ番組で、かかる密約について、在職中に説明を受けていたことを認めた上で「(米艦船は)おそらく(核を)持っているだろうと想像していた。(密約は)大局的見地で政治の知恵だ」と述べたが、右の発言に対する鳩山内閣の見解如何。
四 日本及び極東の安全保障が今直面している北朝鮮の核問題の未解決又は核兵器保有の確実性、中国の核戦力又は通常戦力の強化等の脅威について、核戦力の増強による対抗が必要になるとは言い切れないが、選択肢の一つになるのは確かであり、戦術核兵器を搭載した米国航空機や艦船が日本に進入又は通過することを米国が必要とする時、それをどのように評価するか。鳩山内閣の見解如何。
五 朝鮮戦争が昭和二十五年六月二十五日に始まり、日本政府は同年八月十九日に国連軍への協力を明らかにした。また、昭和二十六年九月八日に旧日米安保条約が締結された際の吉田・アチソン交換公文によって、国連軍地位協定が効力を有する間、引き続き効力を有すると定めていることから、日米安保条約の締結時に、朝鮮半島有事における戦闘作戦行動についての事前協議は完了済みと理解できるが、鳩山内閣の見解如何。
六 米国の「核拡大抑止政策」は、我が国の安全保障において、極めて重要である。今後において外交史的な観点、公文書の情報公開等、様々な角度から根本的な議論がなされるべきと考えるが、鳩山内閣の見解如何。
右質問する。