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平成二十二年六月十四日提出
質問第五八四号

「シベリア抑留問題」に関する質問主意書

提出者  塩川鉄也




「シベリア抑留問題」に関する質問主意書


 「戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法案」の一刻も早い成立と施行が望まれており、改めて「シベリア抑留問題」に対する国民の注目と関心が広がっている。
 この間、「シベリア抑留問題」に関する新たな歴史的事実が明らかになった。それは、戦後処理問題についての民間有識者による「公正な検討の場」として設置された「戦後処理問題懇談会」(水上達三座長)をめぐり、「戦後処理問題懇談会に関する関係各省連絡会」(以下、「関係各省連絡会」)なるものが存在していたことである。
 「戦後処理問題懇談会」は、一九八二年六月三十日の第一回会合から約二年半に及ぶ検討の結果、一九八四年十二月、「戦後処理問題懇談会報告」をまとめた。そのなかで、「戦後強制抑留者問題」(「シベリア抑留問題」)を含む残された課題については、「いずれの点についても、もはやこれ以上国において措置すべきものはない」との結論を示している。
 当時、「シベリア抑留問題」に対する国家補償請求訴訟が提訴されるなど、戦後処理問題をめぐり国の責任と補償を求める運動が高まっていた。こうしたなかでまとめられた「戦後処理問題懇談会報告」が与えた影響は、極めて大きなものであった。
 ところが、この度、外務省から提出された「戦後処理問題懇談会に関する関係各省連絡会」なるものの議事内容を記した資料(以下「関係資料」)からは、「公正な検討の場」であるはずの「戦後処理問題懇談会」の結論を、はじめから「戦後処理に関する一切の措置は終結しているので、新たな給付金等の特別な措置を講ずることは適当ではない」とした、一九六七年の政府・与党間の了解事項の枠内に止めようとする関係各省の作為があったことが極めて強く疑われる。
 シベリア抑留帰還者をはじめ、その家族や遺族、多くの関係者の多大な労苦と努力を経て、いま「特別措置法」制定という大きな画期をむかえようとしている。
 こうした時だからこそ、政治と行政は「シベリア抑留問題」にどのように向き合い、関わってきたのかを真実にもとづき究明することが求められている。
 従って、以下の事項について質問する。

一 「関係資料」によると、民間有識者による公正な検討の場を設け、戦後処理問題をどのように考えるべきかを検討するための予算の計上を決めた、一九八一年十二月二十七日の政府・与党合意を受け、はやくも翌年一月には、「関係各省連絡会」が開催されている。その席上、経緯を説明した、当時の内閣審議室長は、「総理府の懇談会に対する立場」として、「@戦後処理問題はどのように考えるべきかであり、どのような措置をとるかではない(本件懇談会は措置をとる前提ではない)、A従来の政府の方針に変更が加えられたわけではない(民間有識者がどう考えているかうかがってみる)」としている。
 また、「戦後処理問題懇談会」第一回会合が開かれる直前の「関係各省連絡会」では、参加した関係各省から「懇談会のとりまとめ(結論)がでてくるのは二年後を予定している。その時政治情勢がどのようになっているか不明であるが、それでもってパンドラの箱をぐっとしめるということになる方にもっていきたい」といった討議が交わされ、ヒアリングの仕方、委員への対応方向、資料提出のあり方などが意見交換されている。
 さらに、「関係各省連絡会」は、その後の「戦後処理問題懇談会」開催の都度、その前後にもたれ、綿密な対応が検討されていたことがうかがわれる。
 (1) 「関係各省連絡会」には、内閣審議室をはじめ、当時の総理府、法務省、大蔵省、厚生省、外務省の担当者が毎回のように出席している。関係各省からの関連資料をすべて公開すべきであると考えるが、政府の見解を問う。
 (2) 本年五月二十五日放映のNHK「クローズアップ現代」では、深谷隆司(元衆議院議員・当時総理府総務副長官)氏の証言を紹介している。同氏は、「抑留者の方々の耐え難いご苦労には同情するが、動かすことによって、原爆被爆者などの補償問題がもっと広がってしまう」「いろいろな形で、傷口を広げるという懸念があったのかもしれない」などと発言している。当時の関係各省が、こうした「懸念」のもと「戦後処理問題懇談会」に、補償なしの結論を押しつける目的だったとすれば、当時の政府の責任は重大である。そもそも、「関係各省連絡会」の目的は何かをはじめ、政府として、この問題を独自に調査し、その結果を公表するべきであると考えるが、見解を問う。
二 第一七四回通常国会において、参議院本会議を通過し、現在衆議院に送付されている「戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法案」の第十三条は、「政府は、強制抑留の実態調査等を総合的に行うための基本的な方針を定めなければならない」としている。この「基本方針」については、厚生労働大臣が関係各省の協力を得て原案を作成すると言われている。
 (1) 「基本方針」の作成と具体的事業の実施は、「シベリア抑留問題」に対する国としての責任をふまえて、歴史的事実の究明と抑留に関する実態調査等を総合的に実施することを法定化する点で重要な意義をもつものである。戦後強制抑留者の方々も「特別給付金支給だけでなく、調査や遺骨収集、体制の整備、次世代への継承なども盛り込んだ総合的かつ未来志向的な法案で画期的な内容」(二〇〇九年三月二十四日全国抑留者補償協議会声明)と歓迎してきた。もとより、「基本方針」にもとづく事業実施は、戦後強制抑留者の方々自身が心から納得でき、国民的にも理解と支援を得られるものとすべきであることは論を俟たない。
  従って、「基本方針」の原案を作成する際には、当事者である戦後強制抑留者の方々の意見を十分に反映すべきであると考えるが、政府の見解を問う。
 (2) 戦後強制抑留者の平均年齢が八十七歳、八十八歳という現状を直視すれば、「基本方針」に基づく事業の全体スキームを早急に明らかにすべきであると考えるが、政府の見解を問う。
 (3) 「基本方針」の実施事業には、「関係各省連絡会」に関する事柄を含め、政治と行政がこれまでどのように、戦後強制抑留問題に取り組んできたのかの事実究明を位置付けるべきであると考えるが、政府の見解を問う。

 右質問する。



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