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平成二十四年四月十日提出
質問第一八二号

特定失踪者にかかわるDNA鑑定問題に関する質問主意書

提出者  渡辺義彦




特定失踪者にかかわるDNA鑑定問題に関する質問主意書


 特定失踪者山本美保さん(昭和五十九年六月四日、山梨県甲府市の自宅を出て失踪。四日後の新潟県柏崎市の荒浜海岸で本人のセカンドバッグが発見される。当時二十歳。以下「美保」と略)について、平成十六年三月五日、山梨県警察本部警備一課長が突然記者会見を行い、美保失踪十七日後の昭和五十九年六月二十一日、山形県遊佐町の海岸に漂着していた身元不明遺体(以下「Y」と略)の骨髄と、美保の双子の妹である森本美砂の血液のDNA鑑定を行った結果が一致したと発表された。
 警察はDNA鑑定の結果の一致のみを理由に美保とYを同一人物としたが、公開されていない(家族等一部の者に閲覧は許可されているが、コピー等は許されていない)DNA鑑定書のみが唯一の「証拠」となっている。
 しかし、美保とYの身体サイズや身に付けていた遺留品は、全く異なっていることが家族の証言及び客観的事実などで明らかにされており、警察、とりわけ外事警察への不信が高まっている。この疑問及び不明点を解き明かすことは警察への信頼を回復するためにも、拉致問題の真相究明のためにも緊急を要すると考える。
 従って、次の事項について質問する。

一 事件当時の人事及び組織について
 @ 美保とYとが同一人物であると山梨県警が発表した平成十六年三月五日当時、以下の役職にあった者は誰か。
  警察出身の総理秘書官
  警察庁長官
  警察庁警備局長
  警察庁外事課長
  山梨県警警備一課長
 A 右記山梨県警警備一課長が山梨県警に異動する前の役職は何で、山梨県警に異動したのはいつか。
 B その後警察庁警備局には外事情報部が新設されたと聞いているが、その時期はいつか。また、初代の外事情報部長及び当時の外事課長は誰か。
二 遺体鑑定について
 @ Yが美保であれば、海中に遺体があった期間は最大限美保失踪の六月四日からYの発見された二十一日までの十七日間である。鑑定書によれば、Yは顔面に特別の外傷がないにもかかわらず十三本の歯牙が脱落していた。通常歯根膜腐敗による歯牙の脱落は最短で三ヶ月程度かかるものと理解している。法医学の権威である上野正彦・元東京都監察医務院長は歯牙の脱落について「半年以上、あるいは一年くらい経たないと。歯茎が崩れて歯の根っこと骨が緩んでしまうっていうことですから非常に長い時間かかりますよ」とテレビ局の取材に対して語っているが、十七日間で脱落が起きるというのはどのような場合であるか。
 A 鑑定書によればYは一部屍蝋化していたとされている。屍蝋化は冷たい海中において通気がない状態で死後三ヶ月程度して始まると理解しているが、前記上野・元院長は同じくテレビ局の取材の中で、鑑定書の写真を見て「このご遺体の写真を見る限りでは、かなりもう三か月から半年くらい過ぎたような感じを受けますよね。で、一部屍蝋化しているような感じも受けますので、屍蝋化するのには三か月以上はかからないとね、普通は」と語っているが、最大限十七日間で屍蝋化が始まるというのはどのような場合であるか。
 B 前記歯牙脱落は歯根膜腐敗によって起き、屍蝋化は腐敗しない条件で起きるが、この両者が十七日間で同時に起きるというのはどのような場合であるか。
 C Yの鑑定書四ページには「頭頂部から臀部下端まで約九五p」とあり、十六ページには「右臀部下端に上右から下左に走る長さ約五・五p、幅約一・五pの創あり。創縁は整、創端は尖る(写真七・八・一二)」と記載されている。写真にある創の位置からすれば、「頭頂部から臀部下端」が座高にあたる長さを示すものであることは明らかである。その場合、Yが美保であれば遺体の身長は百六十センチメートルであるから、座高九十五センチメートル、股下高六十五センチメートルという体型となる。美保の高三のときの身長は百五十九・五センチメートル、座高は八十七・四センチメートルであるから股下高は七十二・一センチメートルになり全く別人であることは明らかだが、これを同一人であるとする根拠は何か。
 D Yの遺留品であるブラジャーのサイズはA70であった。一方美保が通常着用していたブラジャーはB75ないしB80であった。多数の女性に確認したところではB75ないしB80のブラジャーを着用していた者がA70のブラジャーを着用することはほぼ不可能であり、できたとしても極めて無理な着用であって本人が選ぶことはあり得ないとの一致した見解を得ている。警察は美保がA70のブラジャーを着用可能であるとしているが、それは「無理をすれば着用できる」という、可能性を論じているのか。あるいは美保が実際にA70のブラジャーを着用していたことを確認しているのか。
三 警察庁の認識について
 @ 本件について、平成二十四年四月二日に開催された拉致議連総会の席上、牛嶋正人警察庁外事課長は「山本さんの事件につきましては、DNAの鑑定から漂着した遺体と一致したということでございますが、私共これをもってこの事件が解決したなどとは思っておりません。DNAが一致した上で、事件の可能性もあります。あるいは拉致の可能性も否定できるものではありません。ですので、これについても引き続き捜査をやっておるところでございます」と発言している。警察庁としては現在もYと美保が同一人物であると断定しているのか。
 A 平成十八年十一月九日の記者会見で、当時の漆間巖警察庁長官は拉致認定要件の緩和について「拉致ではないものが一件でもあると反撃を食らう。犯罪に該当するものを拉致事案に掲げており、警察が追加するとしたら(意思に反して移送されたなどの)三要件は譲れない」と語り、拉致認定要件が厳格でなければならないとしている。一方で前記のように美保とYには警察が発表した「DNAデータの一致」という言葉以外に両者が同一であることを示すものはないように思われる。拉致認定にあたっては厳格で、拉致の可能性のある失踪者については、公開できない「DNA鑑定書」と称するもの以外同一と判断できる根拠に乏しい身元不明遺体であると断定するのはその姿勢自体が明らかに矛盾していると思うがいかがか。

 右質問する。



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