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平成二十四年九月五日提出
質問第四一六号

臓器移植医療に関する再質問主意書

提出者  阿部知子




臓器移植医療に関する再質問主意書


 前回答弁書(内閣衆質一八〇第三六七号。以下、答弁書という)を踏まえ、以下質問する。

一 ドナー管理の開始時期について
 (一) 答弁書は、「脳死下での臓器提供を行う場合にあっては(中略)臓器移植法が想定している処置」とは、臓器の移植に係るいかなる法令に基づいて想定しているのか。名称と該当条文を示されたい。
 (二) 答弁書は「移植のために臓器を保存することのみを目的とした処置を行うことは不適切であると考えているが、一般の患者に対しても治療等を目的として行われる処置(中略)は臓器移植法が想定している処置」としているが、旧臓器移植法の審議過程で日本移植学会理事長がドナー管理の開始は脳死判定後と明言している。
  一九九七年四月八日衆議院厚生委員会議事録より以下に引用する。
  児玉健次委員(日本共産党)
  野本教授には、移植学会がお出しになった「臓器提供マニュアル(案)」でございますが、そこの十二ページのところに「臓器提供に望ましいドナーの状態とその維持」と「脳死が診断され、臓器提供の可能性を考える時」、この「可能性を考える時」というのが読んでいてどうしても理解できません。そして、それに続いて「脳死判定が終了した時点で完全に切り替え」るとあります。それでは、不完全な、先行的な切りかえは事前になされるのかという疑念を持ちます。この点について、お考えをお伺いしたいと思います。」
  日本移植学会理事長野本参考人
  「可能性を考えて、何か動くような可能性があるのではないかという御指摘ですけれども、これは、そういうことを一度でもやらせましたら、もうそれで、日本で移植が医療として定着する可能性は壊滅します。当然、そこで、あくまで救急医の先生方が最後の最後まで治療、救命に働いた後から始まることだ。だから、そこの点までは救急医の先生方の責務ということですので、そこから後、初めて移植医の責務が始まると私は考えておりますので、前もって何かを起こすというようなことは、もしだれかがしようとしても私はさせるつもりはありませんし、それから救急医の先生方がまずそれをさせることはあり得ませんので、そこはまずないと考えていいと思います。
  それから、もう一つの視点の「完全に」云々という言葉ですが、これはお許しください。先ほども言いましたように、我々の社会の中で、特に臨床の患者さんと接触をしている人たちは、患者さんの主観的な言葉といつも接触しておるものですから、言葉に非常に意味無用、何というのですかね、強調語とか修飾語を使い過ぎるくせがあります。この場合の「完全に」というのも、例えば、一生懸命にという程度の言葉で、非常にまともなワードではないと考えていただいたらいいと思います。
  それで、先ほど言いましたように、三月二十二日のは、私は、大綱としてはよろしい、移植学会案として。しかし、書いておる内容は、一般市民の方々が読まれたら、随分、あちこちで戸惑う表現が多い。それを早急に直すように指摘しておるのですが、習慣になっておるものですから、そういう意味で使ったのではないということで、私の方がやっつけられたりもしながら、今、直させております。「完全に」という言葉は、むしろそういう、無用の言葉だとお考えください。」
  (引用終わり)
  上記の応答にあるとおり、ドナー管理の開始時期は、臓器提供者に対する救命が尽くされたか否かが懸念されるからこそ、日本移植学会理事長は明確に開始時期を脳死判定終了後と発言せざるを得なかったのである。旧臓器移植法の附帯決議も、臓器提供者に救命を尽くすべきことを強調した。臓器移植に対する国民の信頼確保の点からも、ドナー管理は法的脳死判定による死亡宣告後とすることが必要と考えるが、政府の見解を示されたい。
 (三) 答弁書は「心停止下での臓器提供を行う場合(中略)臓器移植法が想定している処置」としていることは、臓器の移植に係るいかなる法令に基づいて想定しているのか。名称と該当条文を示されたい。
 (四) 従来より、医療行為は患者本人に対する治療目的があることにより違法性は阻却されてきたが、脳死そして心停止下の臓器提供の場合は、臓器提供者本人にとっての治療目的はない。このため、臓器提供者が死亡宣告された後に、臓器摘出目的の行為の開始が許容されてきた。ところが、答弁書は、心停止下での臓器提供を行う場合は、心停止による死亡宣告前から「脳死状態と診断された後に」臓器摘出目的の行為を許容している。答弁書のごとく「心停止の死亡宣告前でも、脳死状態と診断された後に違法性は阻却される」のならば、心停止の死亡宣告前でも、法的脳死判定手続きによらず、脳死状態と診断された段階で死亡宣告を行ったことになるのではないか。法的脳死判定手続きを形骸化する答弁ではないか。
 (五) 答弁書は「心停止下での臓器提供を行う場合、(中略)身体に対する侵襲性が極めて軽微なものについては(中略)臓器移植法が想定している処置」としている。では身体に対する侵襲性が強度なものは許容されないと判断しているのか。また、侵襲性の強弱は何によって判断するのか、その基準を示されたい。
二 違法なドナー管理に関連して
 ドナー管理に関する質問に対し、答弁書は「厚生労働大臣が開催する『脳死下での臓器提供事例に係る検証会議』では、(中略)適切に行われたことについて検証している。このため、お尋ねのドナー管理の内容の再調査、詳細の検証や医療関係者の処分等の必要はないと考えている」としている。
 メディカルコンサルタントは、臓器の移植に係るいかなる法令に基づいているのか。名称と該当条文を示されたい。また、行うことが可能な行為の名称と、行為ごとに実行が許容される時期は、どの法令にどのように記載されているのか、それぞれ列記されたい。
三 日本臓器移植ネットワークの「ドナー候補者家族に対する説明文書」におけるヘパリン投与の説明に関して
 答弁書は「不適切であるとは考えていない。(中略)日本臓器移植ネットワークによれば、(中略)移植のための腎臓の摘出に際し、術前処置として行われたヘパリンの投与により、ショック、出血、発熱等の副作用が起こった事例はないとのことであり、心停止下での臓器の提供を行う場合に、患者に対して救命治療を尽くしたにもかかわらず脳死状態と診断された後に、ヘパリンの投与を家族の承諾に基づいて行うことは、不適切であるとは考えていない」と回答した。
 (一) 『今日の移植』二五巻二号p一五五〜p一六〇(二〇一二年)掲載の「立川綜合病院における臓器提供の現況」によると、一三時四〇分にヘパリンを投与された脳出血患者が一四時二六分に死亡確認されたと報告されている。また『臨床と研究』八二巻八号p一四一七(二〇〇五年)掲載の「迅速組織診断の結果、移植を決断した死戦期無尿状態献腎移植の二例」によると、小脳出血患者にヘパリンが投与されて三〇分後に心停止となっている。
  ヘパリン投与による再出血、ショックなどの可能性があると考える。再度調査し、ヘパリン投与時刻と心停止時刻、ヘパリン投与後のドナーの容態変化を確認すべきと考えるがどうか。
 (二) ヘパリンの原則禁忌(患者には投与しないことを原則とするが、特に必要とする場合には慎重投与)とする患者は、出血している患者、出血する可能性のある患者、重篤な肝障害・腎障害のある患者、中枢神経系の手術または外傷後日の浅い患者、などが列記されている。献腎ドナーの約六割が外傷や脳血管障害であり、原則禁忌に該当する患者が多い。
  原則禁忌の薬剤を投与することについて、なぜ「身体に対する侵襲性が極めて軽微」であるのか、根拠を示されたい。
 (三) 通常の医療においても、薬剤の副作用についての説明が行われるのは当然である。ドナーが死亡を前提とした臓器提供が検討される場面において、原則禁忌の薬剤投与が検討される場合に、その副作用、侵襲性の大きさを説明しない文書を用いることは、ドナー候補者家族に対して不誠実と考えるが、政府の見解を問う。

 右質問する。



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