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平成二十五年四月五日提出
質問第四六号

禁煙タクシーとハイヤーに関する質問主意書

提出者  阿部知子




禁煙タクシーとハイヤーに関する質問主意書


 タクシーの禁煙化は、各都道府県のタクシー事業者団体が自主的普及に努めた結果、平成二十三年一月、和歌山県タクシー協会の全面禁煙化宣言を最後に四十七都道府県に普及した。
 しかし、タクシー事業者団体は、参加事業者に対して禁煙車導入を強制する権限はなく、ましてや非加盟事業者に対しては、なおさらのことである。したがって、現在でも全国に約一〇パーセントの非禁煙車の走行が見られる。そして、ハイヤーに関しての禁煙化は全く手つかずの状態となっている。
 現在、公共交通機関の中でタクシーだけは、事業者が自主的に「禁煙車である旨を表示」(一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款第四条の二)した場合にのみ、その存在が認められることになっている(ただし、神奈川県内においては、罰則付き条例により指定された「公共の場所」にはタクシーも含まれ、一律で喫煙禁止となるので、この条文の適用の余地がないと解される)。
 平成十五年五月に施行された「健康増進法」第二十五条において、多数の者が利用する施設の管理者に対して受動喫煙の防止措置を講ずるよう努めることが義務付けられた。この「施設」にはタクシーも含まれている。
 そして、平成十七年十二月二十日、東京地裁「禁煙タクシー訴訟」において、「運転手の受動喫煙による健康被害は看過しがたい。禁煙タクシーの普及は、事業者の自主性に任せるのでなく、国による適切な対応が期待される。利用者の立場からもタクシーの全面禁煙化が望ましい」と判決に付言され確定した。
 また、平成十六年三月に日本政府も批准した「たばこ規制枠組条約(FCTC)」第八条及びその実施のためのガイドラインでは、受動喫煙防止の立法措置の範囲には、タクシーも含まれており、違反者に対しては、罰金などの金銭的不利益を科すべきこと、および、営業免許の取消しなど行政的制裁も盛り込む必要があるとされている。
 一方、受動喫煙の健康影響について米国公衆衛生長官報告(1986年)では、受動喫煙に安全無害なレベルのないことが科学的に証明された、としている。
 現在、非禁煙タクシー、ハイヤーを規制する法律は存しない。さらに、乗客、乗務員の車内喫煙規制もしかりである。
 これらを踏まえ、以下質問する。

一 自動車交通局旅客課長通達「禁煙タクシーの導入に伴う留意事項について」(国自旅第一五五号)では、流し営業において、禁煙タクシーに対して旅客から運送の申し込みがあった際には、当該禁煙タクシーの運転者は旅客に対して、乗車しようとする車両が禁煙車両であって車内で喫煙することができないことをあらかじめ告知することとする。さらに、無線等による予約配車の場合においても、禁煙車両を配車する場合には、旅客に対して、配車する車両が禁煙車両であって当該車内では喫煙することができないことをあらかじめ告知し、旅客と運転者の間におけるトラブルの防止に努めることとしており、やはり、旅客が禁煙車両内で喫煙することを絶対的に禁止しているものと解される。また、一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款第四条の二第一項においても、「当社の禁煙車両内では、旅客は喫煙を差し控えていただきます」とされ、タクシー事業者は旅客の喫煙を認めていないと解される。
 一方、同約款同条第二項は、「旅客が当社の禁煙車両内で喫煙し、又は喫煙しようとしている場合、運転者は喫煙を中止するように求めることができ、旅客がこの求めに応じない場合には、運送の引受け又は継続を拒絶することがあります」と規定されていることにより、運転者の裁量により喫煙の続行または喫煙の開始を可能としている。そして、事業者と乗務員の中には、これを根拠に旅客の車内喫煙を容認するだけにとどまらず、奨励する者も存在する。
 したがって、現行の一般乗用旅客自動車運送事業標準運送約款第四条の二第二項については、同約款第四条の二第一項及び前記通達との整合性を図る観点から、「旅客が当社の禁煙車両内で喫煙し、又は喫煙しようとしたとき、運転者は喫煙を中止するよう求めます。また、旅客がこの求めに応じない場合には、運送の引受け又は継続を拒絶します。運送の継続を拒絶した場合においても、旅客に下車するまでの運賃及び料金の支払いを求めます。」と旅客が禁煙車両内で喫煙することを明確に禁止しているものと解される条文に改めるべきと考えるが、見解を問う。
二 昭和三十一年に制定された旅客自動車運送事業運輸規則第四十九条第二項第三号には、乗務員の禁止行為として、「旅客の現在する事業用自動車内で喫煙すること。」とある。このため、非禁煙タクシー(全国に約一〇%前後の割合で走行している)車内における空車中乗務員の車内喫煙は常態化している。また、禁煙タクシーに乗務する喫煙乗務員の中には、非禁煙タクシーに乗務していた当時の車内喫煙習慣を完全に改めることが出来ず、しばしば当該車両内での喫煙が見られる。さらに、タクシー車両内で今まで通り喫煙したいがために非禁煙タクシーを運行している個人タクシー事業者も見られる。従って、これら乗務員が喫煙後に乗車する旅客は車内の残留たばこ煙を吸わされることになる。よって、同規則第四十九条第二項第三号は、旅客の受動喫煙防止を図る観点から、また、利用者利便と安全運転を図る観点からも「旅客の有無にかかわらず事業用自動車内で喫煙すること」と改正し、全てのタクシー車両内において運転者の喫煙を許さないようにすべきと考えるが、見解を問う。
三 平成十八年、「タクシーの全面禁煙について」と題する申入書を「タクシー全面禁煙をめざす会」が北側一雄国土交通大臣(当時)に提出した。これに対し、同年五月十八日、自動車交通局旅客課から「タクシー車両の全面禁煙化に係る国土交通省の考え方(回答)」なる文書が同会宛に発せられた。同文書二頁(二)には「当方としては、禁煙タクシーの導入については、基本的にタクシー事業者の自主的な取り組みによって行われるべきものと考えており、ご要望にあるような「全面禁煙」に向けた罰則つき法令の整備を行うことは、適当でないと考えております」との記述がある。
 しかしながら、@冒頭に示した前記、「禁煙タクシー訴訟」の判決の付言で、「タクシーの禁煙化は、事業者の自主性に任せず、国による適切な対応が期待される」と述べてから既に七年が経過して、国の無策に厳しい目を向ける国民が増大していること。A「FCTC」が発効してからも既に八年が経過し、その間、締約国会議(COP一〜五)が開かれ、喫煙規制の具体化のためには罰則が必要であることについて日本を含む各国が確認していること。Bタクシー事業者の自主的な取組によって、全国的に禁煙タクシーの導入率が約九十パーセントまでに普及しているものの、タクシー事業者団体に加入していない事業者の中にはタクシー車内での喫煙を容認、奨励する抜け駆けを図る事業者も存在することから、禁煙タクシー制度の形骸化を招きかねない、等々の状況変化が生じているものと認められる。よって、鉄道営業法、海上運送法および航空法等ならびに神奈川県および兵庫県受動喫煙防止条例においては、「罰則付き」で喫煙を規制しているように、タクシーにおいても所要の法整備が喫緊の課題と考えるが、見解を問う。
四 現在、ハイヤーの禁煙化は、手付かずの状態である。タクシーの禁煙化が進展するにしたがって、喫煙者たる旅客は、ハイヤーを選ぶ傾向がある。その結果、ハイヤー乗務員の受動喫煙は、かつてのタクシー以上に深刻になっている。また、車内喫煙した旅客による残留タバコ煙の存在に後から乗車する旅客が苦情を申し述べるケースが増えている。よって、前「三」と同様に国がハイヤーの禁煙化に向けた罰則付き法整備を講じるべきと考えるが、見解を問う。

 右質問する。



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