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平成二十六年六月十八日提出
質問第二五三号

リニア中央新幹線の事業計画に関する質問主意書

提出者  佐々木憲昭




リニア中央新幹線の事業計画に関する質問主意書


 リニア中央新幹線の二〇二七年開業をめざすJR東海は、さる四月二三日国土交通省に環境影響評価書を提出。四五日以内を期限とする環境大臣による国土交通大臣への意見書が六月五日提出された。これを踏まえ国土交通大臣が七月二二日までにJR東海に意見を伝える段階となり、リニア計画は手続き上最終段階を迎え、今秋にも着工するといわれている。
 しかし、同計画は、過大な需要予測、財政負担、環境への影響、東海道新幹線や在来線へのしわ寄せ、エネルギー浪費など様々な問題を抱えており、沿線の住民や自治体から懸念する声が多数上がっている。環境相の意見書が、トンネル掘削で発生する大量の建設残土、地下水位や河川流量への影響、生態系への影響などを多岐にわたって指摘し、「前文」で「事業規模の大きさから、環境への影響を最大限、回避、低減しても相当な負荷が生じることは否めない」といわざるを得ないのも当然である。
 加えて、東京オリンピックや国土強靭化、「成長戦略」等の名の下で、名古屋・大阪同時開業や国の財政支援を求める声が続出するなど、リニア計画を加速する動きが強まっている。九兆円を超える巨大プロジェクトが、国民的な議論と検証が行われないまま進められていることはきわめて異常ともいえる。国土を荒廃させ、国民・利用者に莫大な財政負担を押し付けかねないリニア計画は中止し、検討し直すべきだと考える。
 以上の見地から問題を絞って、以下、質問する。

一 環境影響評価書と国民的議論について
 四月二三日、JR東海が国土交通省に提出した環境影響評価書は、昨年九月に公表した「環境影響評価書準備書」に対して周辺自治体から出された意見や疑問に対する回答、対応策などを盛り込んだとしている。しかし、沿線各都県の意見書がすべてJR東海に出されたのは三月二四日である。通常数カ月かかる評価書をわずか一カ月のスピードでまとめたことはきわめて異例といわれている。一〇〇にのぼる意見や疑問を出した自治体があるにも関わらず、「まともな検討が行われたかどうかがはなはだ疑問である」「意見を反映する気があるのか」との批判の声が絶えない。
 評価書には準備書より詳細な部分があるものの、「生活圏や地域文化への影響を最小限にするよう努める」という抽象的な表現や、環境への影響を減らす自治体側からの提案を「開業予定を超える工期になる」と拒否するなど、JR東海側の主張の繰り返しが少なくない。これでは、「初めに工期(着工)ありき」の姿勢ではないか。
 私は、昨年の予算委員会質疑において、リニアの安全性、環境問題、技術面での問題等様々な問題を取り上げ、「未解決の問題を抱えながら、わずか一年余りの審議会の結論だけで見切り発車、これではまずい」と指摘した。これに対して、太田昭宏国土交通大臣は「安全、安心ということを確保して、公共事業においては、納得性のあるものをしていかなくてはならないというのが国の基本であろう」と答弁した(二〇一三年四月一五日衆院予算委員会第八分科会)。
 改めて聞くが、@「納得性のあるもの」とはいかなるものか。リニア計画を将来の利用者である国民のなかで広く議論をし、納得されるうえで何が必要であると考えているか、AJR東海がわずか一カ月のスピードで提出した評価書が、沿線自治体の意見を真摯に検討したものか、あるいは工期との関係で作業を逆算した結果であるものか、明確に答えられたい。
二 「リニアは国家プロジェクト」発言の真意について
 安倍晋三首相は、一月六日の年頭記者会見で、リニア新幹線について「国家プロジェクトと言ってよい。政府としてもさまざまな形でできることはバックアップしていきたい」と述べた。リニア新幹線は、そもそも一民間企業であるJR東海の自主計画路線として進められてきたため、その計画内容(ルート、工法、工事費、資金計画、需要見通し等)については国の関与は皆無に近く、「黙認」してきたに等しい。安倍首相が、「国家プロジェクト」と言明するからには、いつからそのような位置づけになったのか、その真意は何か。また、どのような議論を経て「国家プロジェクト」とされたのか。
三 全幹法の主旨、目的に合致しているか
 リニア計画は、その決定過程において従来の整備新幹線とは異なっている。つまり、これまでの整備新幹線は、国および地方自治体が建設財源を負担し、国が建設した施設をJR会社に貸与する方式であるが、リニア新幹線は民間のJR東海が建設費を全額自社負担する方式を要求し、それを前提に承認されたものである。国土交通省は、リニア新幹線計画が、「全国新幹線整備法の目的、主旨と合致する」と説明しているが、果たしてそうか。
 @ まず、全国新幹線整備法の目的、主旨はいかなるものか、簡潔に答えられたい。
 A リニアは名称こそ「新幹線」と命名されているが、全国新幹線整備法(全幹法)で定められている以下の三つの目的に該当しないと考える−(1)全国的鉄道幹線網を整備する、(2)全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結する、(3)地域振興に資する−このそれぞれについて該当しているのならその根拠を示されたい。
四 採算性の問題
 総事業費九兆円超を投じる大型事業に対し、採算性を疑問視する声が絶えない。多くの専門家・研究者の間でも指摘されている。例えば「需要予測」に関して、以下のような意見がある。
 「JR東海自身の需要想定でも、東名間開業後のリニア需要の実に六二%を東海道新幹線からの乗り換え(転移)に期待している。それに加え航空機、長距離バス、自家用車からの転移利用者が一四%、リニア開通による新規誘発需要を二四%も見込めるとしている。これを需要見込みと言えようか。東海道新幹線の利用者は自社のお客様である。その半分の方がリニアに乗り換えてくれるといえる根拠がどこにあるのか。そもそも同じJR東海のお客様が、運営コストがはるかに高いリニアに乗り換えてくれたとしても、東海道新幹線の大幅減収減益で会社にとっては逆に減益になるだけである」(橋山禮治郎著「再考されるべきリニア新幹線計画」、『世界』二〇一三年一二月)
 採算性については、将来の生産年齢人口の大幅減少に関連した、わが党の辰已孝太郎参院議員の委員会質問に対し、「御指摘の生産年齢人口の割合の変化に特化した分析につきましては特段行っておりません」と、国土交通省も認めるほど、いかに非科学的な「試算」であるかが浮き彫りになった(二〇一四年三月一三日、参院国土交通委員会)。
 @ 国土交通省は、JR東海の長期試算見通しについて、「小委員会が独自に行った需要予測に基づき検証した結果、現段階で想定できる範囲内では、JR東海は十分慎重な財務的見通しに基づいて、名古屋暫定開業時期(平成三九年(二〇二七年))および大阪開業時期(平成五七年(二〇四五年))を設定しているものとして判断される」(国土交通省交通政策審議会中央新幹線小委員会答申)と、太鼓判を押している。しかしながら、右のような様々な角度からの指摘があることも事実である。交通政策審議会中央新幹線小委員会で行われてきた審議自身が不十分だと言われるゆえんである。それにも関わらず、国は依然としてJR東海の試算を「妥当」と判断するのか。「妥当」と判断するのなら、その根拠となる具体的でわかりやすいデータを公表されたい。
  また、JR東海に対し、長期試算の再検討を指示するとともに、国独自に再試算を行うべきだと考えるが、見解は如何。
 A JR東海の山田佳臣社長は、昨年九月一八日の記者会見で「(リニアプロジェクトは)絶対にペイしない。それでも東海道新幹線の収入で建設費を賄っていけば、何とかやっていける」と述べた。これは、リニアの採算は確実であり、その利益で既往債務の返済が容易になると言ってきた交通政策審議会での主張と明らかに矛盾するのではないか。この発言の真意を、国土交通省はいかに受け止めているか。「絶対にペイしない(採算が取れない)」というリニア計画を国は容認するのか。回答を求める。
五 税金の投入について
 リニア新幹線の計画推進に当たっては、「総事業費の全額をJR東海が負担する」ことが大前提になっている。ところが、来年度税制大綱では不動産取得税と免許登録税が免除されるなど用地買収をはじめとしたリニア関連の税金が免除されている。国が三分の二、地方公共団体が三分の一を負担するという従来の整備新幹線と同様にこれらの用地買収等の税が免除されることは、直接的な税金投入とは形は異なるが、結局国民負担につながることではないか。なぜこのような税金優遇が行われるのか。その法的根拠について明らかにされたい。
 さらに、山梨実験線への公的補助、リニア技術開発に対する国庫補助(鉄道総研)、地方自治体のリニア部局等での人件費も税金である。「総事業費の全額JR東海負担」という、そもそもの経緯から見て、国民に対していかに説明をするのか。また、これらに係る金額はそれぞれいくらになるか。回答を求める。
六 環境大臣意見に関して
 @ 環境大臣意見において「環境影響評価において重要な住民関与についても十全を期すことが必要」(前文)、「環境影響評価において重要である住民への説明や意見の聴取等の関与の機会の確保についても十全を期す」(3.その他)と記されているが、具体的に、どのような措置を講ずるのか、明らかにされたい。
 A 同意見において「発生土置場での発生土の管理について、濁水の発生防止や土砂の流出防止その他周辺環境に影響を及ぼさないよう、発生土置場ごとに管理計画を作成した上で、適切に管理すること」(2.6(1)C)と記されている「管理計画」は、いつまでに作成することを求めるのか。環境影響評価のスケジュール等との関係で明らかにされたい。
 B 同意見において「本事業の供用時には現時点で約二十七万kwと試算される大量のエネルギーを必要としているが、現在我が国が、あらゆる政策手段を講じて地球温暖化対策に取り組んでいる状況下、これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない」(前文)と指摘。一方で、「供用時におけるエネルギー消費量の低減と調達するエネルギーのグリーン化等を行い、大規模事業者として、温室効果ガスの排出低減に向けて主体的な役割を果たすことが不可欠である」(前文)とも述べている。その上で「本事業の実施に当たっては、再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入計画(定量的な削減目標をできる限り設定することを含む。)を策定するとともに、計画的に温室効果ガス排出量を削減する」(2.7(1))とも記している。本事業の供用時に大量のエネルギーを必要としていると容認しながら、一方で、「定量的な目標の設定及び計画的な削減」を主張するなど、矛盾した記述が見られる。こうした点をふまえて改めて聞くが、政府の温室効果ガス排出量削減目標との整合性をどうはかるのか、明らかにされたい。
  あわせて、「再生可能エネルギーや省エネルギー設備の導入計画を策定する」(2.7(1))とある「導入計画」は、いつまでに作成することを求めるのか。環境影響評価のスケジュール等との関係で明らかにされたい。
七 地震・津波対策、地下水問題、磁界問題等
 @ JR東海の東海道新幹線および在来線の南海トラフ地震を想定した地震・津波対策のスケジュールは、どのようになっているか。リニア新幹線建設のスケジュールと合わせて示されたい。
 A リニア新幹線の工事による水環境への影響について、河川水量の減少や渇水および地下水(井戸水)の枯渇等の影響が発生した場合の水利権の補償基準を明確にされたい。とくに災害用の井戸水が枯渇した場合の賠償、大井川が減少したさいの関係自治体への補償について。
 B 日本共産党国会議員団東海ブロック事務所主催のリニア「政府要請」にさいして、電磁波に関わる項目については「環境省の所管外」として回答を避けられた経緯がある。昨年九月に公表された「環境影響評価書準備書」の段階では、環境省の見解を受けられたが、今回はなぜ「所管外」となったのか。その理由を明らかにされたい。また、環境省の所管外とならばリニア新幹線にかかる電磁波問題は、国としてどこが所管するのか、明らかにされたい。

 右質問する。



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