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平成二十六年九月二十九日提出
質問第二号

高校生等に対する自衛官等募集ダイレクトメール送付及び住民基本台帳情報利用に関する質問主意書

提出者  阿部知子




高校生等に対する自衛官等募集ダイレクトメール送付及び住民基本台帳情報利用に関する質問主意書


 本年七月一日、安倍内閣は集団的自衛権の行使を容認する等の閣議決定(「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」)を行ったが、その直後から、高校三年生に自衛官募集のダイレクトメールが届いたとの報告が全国各地から寄せられ、インターネット上を中心に困惑が広がった。
 このダイレクトメールは、毎年全国の自衛隊地方協力本部から発送されているものであり、平成二十七年三月卒業予定の高校生を対象とする文書募集の解禁日が七月一日であったため、たまたま閣議決定とタイミングが重なったのであったが、「赤紙が来た」との表現が代表しているように、得も言われぬ不安と不気味さを感じた子どもや保護者も多かったと思われる。
 また、民間企業からの大規模な子どもの個人情報漏洩事件などが世間を騒がせていた中で、なぜ自衛隊が高校三年生の名簿を保有しているのか訝る声も上がっていたが、市町村による適齢者情報提供又は自衛隊地方協力本部による住民基本台帳の一部の写しの閲覧を通じて「適法に」入手した個人情報であることが明らかとなり、さらなる驚きが広がっている。
 実は、個人情報保護法案が審議、成立した二〇〇三年にも、自衛隊による適齢者情報収集が大きな問題となり、その後「適正化」が図られてはいる。しかし、市町村による適齢者情報提供や自衛隊地方協力本部による住民基本台帳閲覧については、住民基本台帳法等の趣旨や条文解釈に照らして疑義が残り、又、住民の個人情報を預かる市町村の姿勢も問われるところである。
 よって、以下質問する。

一 @ 平成二十六年度を含む直近五年度において、全国の自衛隊地方協力本部が市町村からの適齢者情報受領及び住民基本台帳の一部の写しの閲覧を通じて入手した適齢者情報(住基台帳の四情報)は何名分であるのか、学齢別、地方協力本部別にクロス集計した人数を年度毎に示されたい。
  A 平成二十六年度を含む直近五年度において、全国の自衛隊地方協力本部が発送した自衛官等募集ダイレクトメールは何通か、学齢別、地方協力本部別にクロス集計した通数を年度毎に示されたい。地方公共団体がダイレクトメールを発送している場合についても、政府の把握しているところを同様に集計して示されたい。
  B @及びAの実績を踏まえ、自衛官等募集のための適齢者情報の入手及びダイレクトメール発送の費用対効果について、政府はいかなる認識をしているか示されたい。
二 @ 防衛事務次官通達(平成十五年四月三日付防人二第三四四一号)により、中学生に対する募集広報は保護者又は進路指導担当者を通じてすることとされているが、直近五年度において、自衛隊地方協力本部又は地方公共団体から中学生(に当たる年齢の者)にダイレクトメールが送付された例があるか、事実関係を明らかにされたい。
  A 自衛隊地方協力本部が市町村からの適齢者情報受領又は住基台帳閲覧を通じて中学三年生(に当たる年齢の者)の住基四情報を入手している場合があると承知しているが、その四情報はいかなる目的及び用途で利用しているのか、具体的に示されたい。
三 @ 防衛省の回答によると、平成二十六年三月末現在(以下同じ)で、全千七百四十二市町村及び特別区(以下、「市町村」とする)のうち、五百六十五市町村が紙媒体等で適齢者情報を提供し、六百六十四市町村が住基台帳から適齢者を抽出してその写しを自衛隊地方協力本部職員が閲覧及び書写し、五百一市町村において自衛隊地方協力本部職員が住基台帳の一部の写しの全部を閲覧して同職員が目視で適齢者を選んで書写している。具体的な市町村名については、信頼関係等を理由に開示されなかったが、住民には自ら及び子どもの個人情報がどのように扱われているかを知る権利がある(A乃至Eも同様)。よって、それぞれに該当する市町村名を全て明らかにされたい。
  A 自衛官等募集の法定受託事務(自衛隊法第九十七条)を実施していないのは沖縄県内六市町村であり、又、適齢者情報の提供をせず住基台帳の閲覧もないのは十二市町村である。それぞれに該当する市町村名を全て明らかにされたい。
  B 適齢者情報の提供依頼を拒否したのは五百二市町村であるが、その市町村名を全て明らかにするとともに、これらの市町村が拒否をした理由を具体的に明らかにされたい。
  C 自衛隊地方協力本部が適齢者情報の提供依頼をしていない市町村が十一あるが、その市町村名を全て明らかにするとともに、依頼をしなかった理由を全て挙げられたい。
  D 自衛隊地方協力本部が住民基本台帳の一部の写しの閲覧を請求した市町村のうち、一については閲覧が実施されていない。その市町村名と不実施の理由を明らかにされたい。
  E 十一市町村については、自衛隊地方協力本部が住民基本台帳の一部の写しの閲覧請求をしていないが、その市町村名を全て明らかにするとともに、請求をしなかった理由を全て挙げられたい。
  F @乃至Eを踏まえ、適齢者情報提供など自衛官等募集事務への地方公共団体の協力姿勢について、政府はいかなる認識を持っているか示されたい。
四 @ 自衛隊法第九十七条により都道府県及び市町村は「自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務」の一部を法定受託事務として行うこととされている。自衛隊法上、「自衛官」及び「自衛官候補生」と「学生」及び「生徒」は別であるため、自衛隊法第九十七条に基づく法定受託事務としての自衛官等募集には、防衛大学校及び防衛医科大学校の学生及び陸上自衛隊高等工科学校生徒の募集は含まれないと解される。ところが、都道府県及び市町村が実際に行っている募集事務には学生及び生徒の募集が含まれており、問題が存すると思われるが、政府の認識は如何か。
  A 自衛隊地方協力本部は市町村長に対して、自衛隊法第九十七条及び自衛隊法施行令第百二十条並びに以上に基づく「自衛官募集等の推進について(依頼)」(最新のものは平成二十六年四月十七日付防人育第五四五一号)により、適齢者情報の提供を依頼している。以上の根拠条文から、取得した情報を学生や生徒の募集に利用することはできないと解されるが、防衛省より提供を受けたダイレクトメールの現物を見ると、防衛大学校や陸自高等工科学校等も広報されており、法を逸脱している疑いがある。この点について、政府としては如何なる認識であるのか。
五 @ 自衛隊が適齢者情報提供を依頼する法的根拠についての防衛庁(当時)の説明は、二〇〇三年当時も二転三転した結果、自衛隊法第九十七条及び自衛隊法施行令第百二十条に落ち着いた経緯があり、後付けの説明である疑いが強い。なお、一九七四年発行の『防衛法』(自由国民社)では、都道府県知事又は市町村長による報告又は資料の提出を規定した自衛隊法施行令第百二十条に係り、「(自衛官)募集事務がスムーズに遂行されるよう、内閣総理大臣[現在は防衛大臣]は、都道府県知事および市町村長に対して、募集に対する一般の反応、応募者数の大体の見通し、応募年齢層の概数等に関する報告および県勢統計等の資料の提出を求め、地方の実情にそくして募集が円滑に行われているかどうかを判断」とあることから、適齢者情報提供は制定時に想定されていなかったと考えられる。自衛隊が市町村に適齢者情報提供を依頼する正当性及び適法性について、政府の見解を法律に則して明確に示されたい。
  A 住民基本台帳法には国の機関による写しの閲覧は規定されているが、このような「提供」に係る明文規定はなく、同法上「提供」は予定されていないと考えられる。住民基本台帳法の趣旨及び条文に照らして、市町村による適齢者情報の提供がなぜ認められるのか、明確な根拠を示されたい。
  B 市町村が適齢者を抽出して住民基本台帳の写しを閲覧させる例があるが、住民基本台帳法上、「抽出」は予定されていない。同法第十一条に基づく閲覧にとどめ自衛隊地方協力本部職員に書き写させているとは言え、なぜ市町村による抽出の便宜が認められるのか、明確な根拠を示されたい。
六 住民基本台帳法第十一条は、国又は地方公共団体の機関は、「法令で定める事務の遂行のために必要である場合には」、市町村長に住民基本台帳の一部の写し(四情報)の閲覧を請求することができるとしている。なお、同法第十一条の二は公益性が高い場合等の民間の個人及び法人による閲覧を規定しているが、世論調査や学術調査等の目的で利用されている。民間のDM発送目的での閲覧は法改正により禁止となった(二〇〇六年十一月一日施行)。
  @ 同法第十一条に定める閲覧請求事由たる「法令で定める事務の遂行のために必要である場合」の立法趣旨は何であり、自衛隊法第二十九条第一項及び第三十五条の規定に基づく自衛官等募集事務(以下、同じ)のような場合は予定されていたのか、このような事由により閲覧請求を行うことは法の濫用であるとも考えられるが、明確に説明されたい。
  A 同法第十一条に基づく国の機関の閲覧について、自衛官等募集事務又は同法第十一条第二項第二号に規定する犯罪捜査等以外の請求事由にはいかなるものがあるか、直近の年度につき具体的に示されたい。
  B 市町村が自衛官等募集事務を事由とする閲覧請求を拒否することは認められるのか、又、拒否した場合に地方自治法上の是正要求等の措置が講じられ得るのか、政府の見解を明確に示されたい。
  C 人材採用及び募集活動は当然、他の公的機関や民間企業と競合するものである。その中で自衛隊が住民基本台帳の一部の写しの閲覧を認められ、適齢者情報を特権的に入手することがなぜ正当化されるのか、政府の見解を、個人情報保護法制の整備や住民基本台帳法改正等の経緯を踏まえつつ、明確に示されたい。

 右質問する。



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