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平成二十七年五月十三日提出
質問第二二九号

補助教材「知る沖縄戦」の使用に関する質問主意書

提出者  仲里利信




補助教材「知る沖縄戦」の使用に関する質問主意書


 二〇一四年に朝日新聞社が沖縄戦をテーマに発行した小中高校生向けの補助教材「知る沖縄戦」について、一部の報道や政治家が「内容が一方的」と批判したことを受けて、文部科学省はそれまでの国会答弁や各都道府県教育委員会への留意事項を一方的に見直した。
 このことについて、沖縄県民は、二〇〇六年度の高校日本史歴史教科書の検定において、沖縄戦での「日本軍による集団強制自決」の記述を政府が一方的に削除したことと重ね合わせて、政府がまたもや教科書を一方的に変更しようとしているとして強く反発するとともに、是正の抗議や申し入れを行っている。
 そこでお尋ねする。

一 朝日新聞社は、沖縄戦の実相を体験者の証言から次代を担う若い世代に正しく伝承することを目的に、補助教材としての「知る沖縄戦」を制作した。制作に当たっては、県内の戦争体験者や心ある若い世代、「ひめゆり平和祈念資料館」等の全面協力を得ており、その内容は事実を捻じ曲げたり、特定の目的で編集されたものではない。したがって、言われるところの偏向した内容の教材とは到底考えられないがどうか。
二 朝日新聞社が制作した補助教材の「知る沖縄戦」は、教員間の口コミや新聞紙上での社告により三十八万部増刷し、いまだに問い合わせが絶えない状況である。このことは、沖縄戦が多数の住民を巻き込み悲惨な結果をもたらした唯一の地上戦であったこと、その実相を知り、後世に正しく伝承していくことは我々の世代の責務であること、戦争を回避できなかった理由や軍人より住民に多数の犠牲者が出た理由を教訓として学び、平和な社会を構築・維持する必要があることなどの認識が問い合わせた方々の根底にあり、補助教材として適切であるとの評価が確立したものと思われるがどうか。
三 二〇一四年十月二十九日の衆議院文部科学委員会において、下村博文文部科学大臣は「『知る沖縄戦』の記述全体の内容までは、私自身まだ現時点で全部を読み込んでおりません」、「全文を読んでみたいと思います」と答弁する一方で、「報道等によると、光と影の、影の部分しか記述がないのではないか」とも答弁している。なぜ全部の内容を承知していないのにも関わらず、報道を引用しながらではあるがその内容を否定する発言を行い、「知る沖縄戦」があたかも偏向しているが如く答弁できるのか。
四 二〇一五年三月四日、文部科学省初等中等教育局長は、都道府県教育委員会等に「学校における補助教材の適正な取扱いについて(通知)」を発出した。その内容は、「最近一部の学校における適切とは言えない補助教材の使用の事例も指摘されている。このため、その取扱いについての留意事項等を改めて下記のとおり通知する」となっている。この「通知」の中の「適切と言えない補助教材の使用の事例」に、朝日新聞社制作の「知る沖縄戦」は該当するのか。
五 上記四で記載した「通知」においては、文末で「各学校における有益適切な補助教材の効果的使用を抑制することとならないよう、留意すること」とある。朝日新聞社制作の補助教材「知る沖縄戦」は、「有益適切な補助教材」に該当すると思われるがどうか。
六 朝日新聞社制作の補助教材「知る沖縄戦」は、上記四での質問で「適切と言えない補助教材の使用の事例」に該当するものではないとされ、さらに上記五の質問で「有益適切な補助教材」に該当するのであれば、二〇一四年十月二十九日の衆議院文部科学委員会での下村博文文部科学大臣の答弁や、二〇一五年三月四日付けの文部科学省初等中等教育局長名で発出した「通知」に起因した「同補助教材の使用の自粛等の悪影響」を早急に解消する責任と必要性が政府にあるのではないか。
七 二〇一四年十月二十九日の衆議院文部科学委員会において、下村博文文部科学大臣は沖縄戦における大田実中将の「沖縄県民斯ク戦ヘリ」という、いわゆる決別電文のことを、「知る沖縄戦」に「書き込む」など「バランスをとったことがあれば問題ないと思う」旨答弁した。
 しかし、大田実中将のこの電文については、下村博文文部科学大臣の言う「沖縄の方々の思い」を表したという解釈とは別に、大田実中将の上司に当たる牛島満大将(第三十二軍司令官)の沖縄県民スパイ視に対する反論であったとする解釈が存在している。大田実中将の長男の大田英雄氏がその著作「父は沖縄で死んだ」(高文研、一九八九年)で明らかにしたもので、沖縄戦研究者の間では周知の事柄となっている。
 ところで、下村博文文部科学大臣は、常々、意見や評価の異なる史実がある場合には両論併記のバランス論を原則とする旨掲げていると承知している。ところが、本件では一方の解釈のみに依拠した見解をもって、「知る沖縄戦」を批判するかのような答弁をしたことになるがどうか。
 また、現時点においても、上記の答弁を妥当と考えるか。

 右質問する。



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