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平成二十七年六月二十四日提出
質問第二九一号

基礎的財政収支に関する再質問主意書

提出者  福田昭夫




基礎的財政収支に関する再質問主意書


 平成二十七年六月十日に提出した「基礎的財政収支に関する質問主意書」に対する平成二十七年六月十九日の答弁書(以下答弁書という)によれば、日本経済はデフレ脱却をしていないとのことである。それにも拘らず、報道によれば政府は骨太の方針で歳出抑制の方針を明記するとのことであり、また二〇一七年四月からは消費税増税を決めている。デフレ脱却は日本国民の長年の悲願であり、現在の政府の政策はそれを踏みにじるものになるのではないかと危惧する。
 これに関連して質問する。

一 歳出抑制も消費税増税も、需要を縮小させデフレ脱却を遅らせたりデフレを悪化させたりするのではないか。
二 逆に国債を増発して歳出を拡大し、その結果二%のインフレ率と二%の実質成長率を達成したとする。常識的に考えれば名目GDP成長率は四%程度になると考えられる。このような大幅な名目GDP増加により国の債務の対GDP比が下がった場合、将来世代へのツケは減ったと言えるか、また財政は健全化の方向に向かっていると言えるか。
三 答弁書にあるように経済成長は財政健全化に資するが、景気悪化は財政を悪化させる。今は歳出抑制とか消費税増税とかという景気を悪化させるような政策は避けるべきではないか。
四 今年二月の内閣府の試算によれば、歳出抑制と消費税増税を行ってもデフレからすみやかに脱却できることになっている。過去内閣府が行ったGDPデフレーターの予測はいつも大きく上振れしていた。骨太方針二〇〇六は二〇〇六年七月に出された。二〇〇六年一月発表の内閣府の予測だと、GDPデフレーターは二〇〇七年度〇.七%、二〇〇八年度一.一%であり、一気にデフレ脱却を達成する事になっていた。しかし現実は二〇〇七年度マイナス一%、二〇〇八年度はマイナス〇.九%で、デフレ脱却に失敗し、内閣府の予測は大きく外れた。これほど大幅な予測失敗をすれば、次年度からは抑制的な予測をするはずである。驚いたことには、このような予測の大幅な上振れは二〇〇二年から現在まで全く修正されることなく続いているのである。つまり内閣府は「景気は回復基調にありデフレは間もなく脱却できる」という誤ったメッセージを国民に向かって毎年出し続けている。このような状況にあっても、政府は内閣府の予測は信頼に値すると主張するのか。
五 答弁書によれば、現時点では乗数を算出する基となる方程式の係数の見直しが困難だそうだが、そうであれば、今年二月十二日に発表した「中長期の経済財政に関する試算」はどのようにして計算したのか。この計算は十分なデータの確保が出来なかったので、信頼度が劣るということを認めているという事か。そうだとしても、二月十二日の試算では方程式の係数は定めたはずであり、その係数を使って乗数は求められる。信頼度は二月十二日の試算と同程度であるとの注釈つきで乗数を計算して公表すべきではないか。
六 例えば五兆円だけ国債を増発し、財政出動したとする。国の債務が五百兆円の場合は、国の債務は一%増加するが、国の債務が一千兆円の場合は〇.五%しか増加しない。この財政出動によるGDP押し上げ効果はa%だと仮定すると国の債務の対GDP比は、国の債務の増加率マイナスGDPの増加率で近似できるから国の債務が五百兆円の場合(一マイナスa)%、国の債務が一千兆円の場合(〇.五マイナスa)%である。この例からわかる事は、国の債務が増えれば増えるほど、財政出動によって国の債務の対GDP比は下がる可能性が高まるという事である。国の債務が無限大なら国の債務の増加率はゼロで、GDP増加分だけ債務の対GDP比は減少する。つまり、公共投資を行った場合、公債等残高の対GDP比は二〇一〇年よりも現在の方が更に大きく減少するはずである。この事に同意するか。
七 国の債務の対GDP比がある一定以上になると、財政出動によって国の債務の対GDP比を減らせる事ができるという事を確認するには、国の債務の対GDP比のランキングを見ればよい。百八十三ヶ国中最高は日本の二百四十六%、二位はギリシアの百七十七%、三位はジャマイカの百四十%である。百%を超しているのは僅か十六ヶ国しかない。日本よりはるかに放漫財政の国はいくらでもあるが、そのような国の債務の対GDP比が日本以上にならないのは、財政支出を行った時の債務の増加率より、GDPの増加率の方が大きくなり、財政支出をしても債務の対GDP比は増加しなくなるからである。言い換えれば、日本も今後思い切った財政拡大を行えば国の債務の対GDP比は諸外国並みにまで下がる。このことに同意するか。
八 アメリカでは議会の両院事務局が複数個の代表的マクロモデルの中期予測結果を提示し、どのような政策が最適かを議論した上予算を決めている。内閣府も、経済再生ケースとベースラインケースの二ケースを提示しているが、それは全要素生産性(TFP)を変えた二ケースである。政府にとってTFPを高くするか低くするかの選択肢はなく、高い方がよいに決まっている。つまりこの二ケースを比べても政府の経済政策の策定には何の役にも立たない。二ケースを提示するのであれば、財政支出が大きい場合と小さい場合の比較、あるいは消費税増税をした場合としない場合の比較である。ただし、以前の試算のように、消費税増税の影響をケタ違いに小さく予測したのでは使い物にならない。この乗数はリーマンショックや東日本大震災とはほとんど無関係である。アメリカのように、経済政策の策定に参考になる試算を内閣府に提示させたらどうか。
九 二〇一七年初めまでデフレ脱却が出来ていなかった場合、二〇一七年四月の消費税増税は日本経済に深刻な悪影響を及ぼすであろうし、景気を悪化させて財政健全化はあり得ない。それでも八%から十%への消費税増税と歳出抑制は行うのか。
十 今後リーマンショックのような世界的金融危機、経済危機が起きるか、もしくはその他の要因によって「民需主導の経済成長」が一時的にでも大きく崩れるようなことが起きた場合、減税もしくは歳出拡大による財政出動を用いた景気対策が必要になるものと思われるが、内閣としては、どのような条件となった時に財政出動による景気対策を行うべきと考えるか。またその場合、「二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比を半減させ、二〇二〇年度までに黒字化」とする財政健全化目標を一時的に放棄してでも財政出動による景気対策を実施するという選択肢はあり得ると内閣は考えるか。

 右質問する。



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