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平成二十七年七月十四日提出
質問第三二七号

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律に関する質問主意書

提出者  西村智奈美




労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律に関する質問主意書


 第一八九国会において六月十九日に衆議院を通過した「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、労働者派遣法という)等の一部を改正する法律案(以下、見直し法案という)」の内容については、法制定以来同法が一貫して基本趣旨としてきた「常用代替防止」に基づく運用の要請及び平成二十四年の法改正による「労働者保護」法としての性質に鑑み、重大な疑義が唱えられている。よって、次の事項について質問する。

一 (法案の労働者保護法としての性質)
 1 平成二十四年の法改正によって労働者保護法としての性質を明確化したが、今回の法案は派遣労働者の保護をさらに強化する趣旨目的の下に行われたものであるか。
 2 派遣労働者の雇用の安定及び待遇の改善に向けた措置をさらに強化することとあわせて、派遣先に雇用される労働者の雇用の安定の確保を引き続き図るものであるか。
二 (ILO条約と日本政府に対する勧告)
 法案は、ILOが平成二十四年に憲章二十四条に基づく申立に対してなした勧告の内容(@登録型派遣で働く労働者には雇用継続への期待など法的に保護されないのではILO一八一号条約一条一項bの「雇用」に関する定義を充足していないという主張に留意し、A条約勧告適用専門家委員会が、派遣労働者の権利保障のために全ての事例においてはっきりとした責任が確定できるような法的枠組みをもつ必要性を強調していることをふまえ、一八一号条約が五条一項を含め全ての労働者に適用されることを疑問の余地なく明確にすること、B一八一号条約一条、五条、十一条に適合させる法制度とその運用のための措置をとること、その他)を充足しているものであるか。
三 (法改正に伴う不利益への対応)
 今回の法見直しを理由とする契約(派遣契約及び派遣労働契約)の打ち切りが横行する恐れがあることについて、雇用安定化をはかる法案の趣旨から問題があるのではないか。特に期間制限がないために長期にわたって同一派遣先で就労してきた派遣労働者の雇用安定化をはかる必要があると考えるがどうか。
四 (行政監督の強化)
 1 法の趣旨目的に反する事態には、果敢に権限を行使し、厳正に関係事業主を指導監督することが不可欠と考えるがどうか。
 2 都道府県労働局需給調整課の人員体制や事案処理体制の現状は不十分であるが、この点についての政府の認識は如何。また、見直し法案に基づいて派遣労働者の待遇を改善し、派遣労働者・派遣先労働者の雇用の安定を確保するには、さらに人員体制を整備する必要があるが、政府は如何にこれに対処するのか。体制整備に不可欠な予算の確保はどうか。
五 (常用代替防止の趣旨)
 1 労働者派遣法において常用代替の防止の趣旨は不変との理解でよいか。
 2 労働者派遣法は、派遣労働者の待遇の確保と常用代替防止を図ることを両輪とする規制枠組みのもとに、職業安定法四十四条の労働者供給事業禁止規定の例外として労働者派遣を容認したものであるが、見直し法案についてもそのような基本に立ったものであるか。
 3 そうであるとすると、常用代替防止の趣旨に基づく法の運用を徹底するため、労働者派遣の利用によって派遣先に雇用される労働者の雇用と権利に悪影響を与えないことが不可欠の条件となるが如何。
六 (臨時的・一時的な労働力需給制度の位置づけと無期雇用派遣)
 今回の見直し法案は、労働者派遣制度を臨時的一時的労働力需給調整のための制度として位置付け、長期雇用慣行を害しないことを基本的趣旨とするものであるが、無期雇用派遣は常用代替防止の対象から除外するとの考え方は、これに抵触しないか。
七 (無期雇用派遣の利用と常用代替防止の趣旨の徹底)
 1 期間制限を撤廃した無期雇用派遣は雇用が安定している(派遣契約の終了のみをもって解雇してはならないことを許可基準の中にも含める)としても、商取引を労働関係のなかに含む働き方は、ユーザー企業にとって使い勝手がよいところは有期雇用派遣と変わらないものと考えられる。したがって、無期雇用派遣についても、常用代替防止の法の趣旨に則って制度を運用すべきと考えるが如何。
 2 無期雇用派遣労働者の導入と連動した常用労働者の解雇については、望ましくない旨を明らかにすべきと考えるが如何。
 3 無期雇用派遣労働者についても離職後一年以内に派遣労働者として受け入れることは禁止されていると理解できるが指導を徹底するのか。
 4 派遣労働者の導入と連動した常用労働者の人員削減・解雇については、解雇制限法理に照らしても問題であるが、常用代替防止の趣旨に照らしても問題であることを明らかにすべきであると考えるが如何。
 5 派遣先の契約打ち切り・解除に伴って発生した無期雇用派遣労働者に対する賃金等待遇の不利益を是正する措置を講じるべきであると考えるが如何。
八 (無期雇用派遣の利用制限)
 1 無期雇用を利用した派遣禁止対象業務、偽装請負、出産・育児等休業代替派遣、プロジェクト派遣、日数限定業務派遣、偽装請負による派遣についても、常用代替防止の趣旨にしたがい、徹底して監督権限を行使し、法の適正な運用をはかる必要があると考えるがどうか。
 2 上記の場合にも「雇用申込みなし」制度の適用があるが、派遣労働者が直接雇用を求めたときには、切れ目なく派遣先就業を確保し、派遣元からの妨害を排するなど法を適用して果敢に指導監督すべきと考えるが如何。
九 (雇用申込みなし制度)
 1 雇用申込みなし制度は、規制を逸脱して派遣労働者を受け入れた派遣先については、派遣労働者が有期であるか無期であるかを問わず、当該派遣労働者に対して労働契約締結の申込をしたものとみなすものであるが、規制を逸脱した時点から派遣先は当該労働者に対して雇用を申し込んだものとみなされ、労働者の意思表示によって労働契約上の義務を負担することになるものであるが、そうした理解でよいか。
 2 有期雇用派遣にかかる労働契約申込みなし制度は、過半数労働組合等からの意見聴取を行わずに上限を超えて労働者派遣を受け入れた派遣先について適用となるものであるが、その趣旨は、常用代替防止を趣旨とする事業所単位の期間制限等規制の遵守を徹底し、もって派遣労働者の保護をはかることを目的として、派遣先に対して派遣労働者に対する雇用責任を負わせるものであると理解してよいか。
 3 雇用申込みなし制度の運用において、派遣労働者に対し切れ目のない就労の機会の保障を旨とする指導監督が徹底されるべきと考えるが如何。
十 (意見聴取制度)
 1 正規雇用労働者としての雇用確保の観点からすると、過半数組合ないし過半数代表者に対する意見聴取手続きが常用代替防止の法の基本趣旨を損なうようなものであってはならないと考えるが如何。
 2 意見聴取の手続き及び内容については、派遣先事業所における「常用代替防止」の基本趣旨に沿った法の運用を確保すべく、省令及び指針に定めを置いてこれを徹底すべきと考えるが如何。
 3 さらにその内容は、将来的な予測も含めて派遣労働者の受け入れが臨時的・一時的な業務及びポストに限定されることになるか否かの判断を可能とするものであることが不可欠と考えるが如何。
 4 実質的な労使間の話し合いが可能な仕組みを構築すべきであると考えるが如何。
 5 常用代替防止の趣旨が実質的に徹底されるといえるためには、事業主による説明は事前が原則であり、これらの説明に欠落があるときにも、意見聴取にかかる違反行為があったものとして「雇用申込みなし」制度の適用があるものとすべきであるが如何。
十一 (派遣労働者の雇用安定措置)
 派遣労働者の雇用安定措置については、労働契約上の権利となるよう就業規則に記載等することが求められると考えるが如何。また、その旨を何らかの方法で周知すべきと考えるが如何。
十二 (派遣労働者の教育訓練)
 派遣労働者に対する体系的な教育訓練の実施については、就業規則など社内規定に定められていることを確認のうえで許可をなすべきと考えるが如何。
十三 (結社の自由及び団体交渉権)
 派遣労働者の結社の自由及び団体交渉の権利については、派遣先に雇用される労働者との間で実質的に不利益にならないようにすべきと考えるがどうか。その点で、派遣先が負うべき使用者としての責任について指針に定め、労働者・労働組合・事業主等の関係者に対する周知徹底が不可欠であると考えるが如何。
十四 (労働契約法二十条の適用)
 有期(登録型)派遣労働者については、労働契約法第二十条の適用により配置の変更の範囲等を考慮したときには格差是正を行うことが困難であるため、労働者派遣の特殊性をふまえ、無期雇用派遣と有期雇用派遣労働者の待遇格差の解消のための手段を検討すべきと考えるが如何。
十五 (派遣労働者の待遇の改善)
 派遣労働者の待遇改善及び均等待遇・均衡処遇の徹底に向けて、派遣先及び派遣元事業主に対し、格差に関する合理性の有無について説明責任があることを指針に明記すべきと考えるが如何。
十六 (派遣労働者の妊娠・出産・育児等の権利の保障)
 労働者保護の強化、派遣労働者の雇用の安定や待遇の改善を見直し法案の基本的趣旨及び目的とするならば、派遣労働者の妊娠・出産・育児・介護のための権利を実質的に保障すること、たとえば、派遣労働者が有期であろうと無期であろうと、雇用を失わないで(不利益を加えられることなく)権利を行使し、休業明けにはスムーズに就業の機会を与えられるようにすることが不可欠と考えられるが、この点についての政府の認識は如何。また、関連する法制度の見直しを行うべきであると考えるが如何。

 右質問する。



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