質問本文情報
平成二十八年八月一日提出質問第一三号
北陸新幹線敦賀以西ルート整備に関する質問主意書
提出者 田島一成
北陸新幹線敦賀以西ルート整備に関する質問主意書
北陸新幹線敦賀以西ルートについて、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの「中間とりまとめ」として絞り込まれた、@小浜舞鶴京都ルート(敦賀駅−小浜市附近−舞鶴市附近−京都駅−新大阪駅)、A小浜京都ルート(敦賀駅−小浜市附近−京都駅−新大阪駅)、B米原ルート(敦賀駅−米原駅)の三ルート案について、国土交通省が着工の判断に資する項目の調査を実施しており、その結果が今秋までに報告されることとなっている。
北陸新幹線敦賀以西の整備に当たっては、厳しい財政の制約も考慮に入れながら、従来の二十世紀型公共事業の延長線にある国土強靱化ではなく、自然と共生し、スリムでしなやかな国土を形成する、二十一世紀型社会資本整備を念頭にルートを検討する必要があり、国民全体の効用と経済合理性に優れる「米原ルート」が最適と考える。
よって、「前回答弁書」(内閣衆質一九〇第三〇二号)、「前々回答弁書」(内閣衆質一九〇第一九一号)を踏まえ、質問する。
平成二十三年十二月二十六日付け「整備新幹線の取扱いについて」(政府・与党確認事項)において、整備新幹線の着工にあたっては、整備期間を通じた安定的な財源見通しの確保が必要なことから、北陸新幹線敦賀以西の整備については、「財源の限界等から新たな三区間に係る事業が完了するまでの間の整備は難しい」とされており、現在、建設が行われている整備新幹線三区間のうち、最も時日を要する北海道新幹線札幌延伸は平成四十二年度末の完了・開業とされている。
一方、国土交通省においては、与党が絞り込んだ北陸新幹線敦賀・大阪間の三ルート案について、この秋を目途として、将来の着工の判断に資するための調査を実施しているところであるが、東海旅客鉄道株式会社がリニア中央新幹線東京・名古屋間の平成三十九年開業に向け建設工事を進めるとともに、政府においては大阪延伸の前倒し議論を始めているなど、北陸新幹線敦賀・大阪間の着工・完成時期をどのように想定するかで、国土交通省が実施している調査の前提が大きく異なってくるものと思料される。調査を実施するうえで必要な前提でもある、北陸新幹線敦賀・大阪間整備の完成時期について、政府の見解を示されたい。
二 社会資本の純現在価値について
社会資本は、費用や便益の発現が長期にわたるため、発現時期の異なる費用や便益を適切に評価する必要が有る。このため「国土交通省所管公共事業の新規事業採択時評価実施要領」に基づく「鉄道プロジェクトの評価手法マニュアル(二〇一二年改訂版)」では、社会的割引率を用いて、異なる発現時期の費用や便益を現在価値に割り戻して合計し、費用便益分析の評価指標を算出することとされている。
この社会的割引率は「公共事業評価の費用便益分析に関する技術指針」(平成二十一年六月国土交通省)で四%とされ、費用や便益の計算対象期間は、建設期間に供用開始から耐用年数を勘案した五十年を加えた年数の各年の現在価値の合計としている。
このことから建設期間が長いほど、現在価値に割り戻した総便益及び総費用は小さな値となるが、特に便益は、供用開始によって初めて生じることから、建設期間の長短により、その値が大きく上下する。社会的割引率四%で建設に十年要した場合、供用開始初年度の便益は割り戻す前の約六十七%であるが、建設に二十年要した場合には約四十五%まで小さくなる。
このように建設期間の設定は、費用便益分析の結果を大きく左右するものと思料され、調査を実施するうえで必要な前提でもある、北陸新幹線敦賀・大阪間整備についての建設期間について、政府の見解を示されたい。
三 社会資本整備の意義について
前回の質問で新規の新幹線鉄道プロジェクトについて評価する際の基準を問うたところ、「整備新幹線整備事業の新規事業採択に当たっては、『国土交通省所管公共事業の新規事業採択時評価実施要領』(平成二十三年四月一日付け国官総第三百六十七号・国官技第四百二十二号国土交通事務次官通知)等に基づき、費用便益分析、地域経済効果、環境への効果又は影響、安全への効果又は影響等の項目について、総合的に評価を実施することとしている。」とする答弁がなされている。
この「国土交通省所管公共事業の新規事業採択時評価実施要領」では、「公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の一層の向上を図るため、新規事業採択時評価を実施する。」とあるが、ここでいう「公共事業の効率性」とは何か、政府の見解を示されたい。
四 リダンダンシー機能と公共事業の効率性の比較考量について
前回質問主意書で、「敦賀開業時点での北陸新幹線が有するリダンダンシー機能について、政府の見解を示されたい。」と問うたところ、「前回答弁書」(内閣衆質一九〇第三〇二号)では、「西日本旅客鉄道株式会社の新快速列車等が京阪神都市圏と敦賀駅との間で運行されていることから、北陸新幹線金沢・敦賀間が開業することによっても、敦賀駅において新幹線とこれらの新快速列車等が接続できるという限りにおいて、幹線鉄道の多重化が確保されると考えられる。」とする答弁をなされている。
この答弁から、北陸新幹線敦賀以西の整備について、既に確保されている幹線鉄道の多重化(リダンダンシー)をルート検討の指標にすることは、公共事業の効率性の観点から必要性に乏しいものと考えるが、北陸新幹線敦賀以西の整備に求めるリダンダンシー機能の位置付けについて、政府の見解を示されたい。
五 北陸新幹線の基本計画について
全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号。以下、「全幹法」という。)第四条第一項に基づく基本計画(以下、「基本計画」という。)において定められている北陸新幹線の主要な経過地を示されたい。
六 北陸新幹線の整備計画について
基本計画は、政令により、建設線の路線名、起点、終点及び主要な経過地を定めることとされ、全幹法第七条第一項に基づく整備計画(以下、「整備計画」という。)には政令により、走行方式、最高設計速度、建設に要する費用の概算額、その他必要な事項を定めることとされている。
北陸新幹線の整備計画にある「その他必要な事項」のうちの主要な経過地に記載され、基本計画には記載されていない主要な経過地がある場合、当該経過地の全幹法上の位置付けについて、政府の見解を示されたい。
七 新幹線鉄道の路線について
全幹法第一条において、「この法律は、高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もつて国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする。」とし、同法第三条において、「新幹線鉄道の路線は、全国的な幹線鉄道網を形成するに足るものであるとともに、全国の中核都市を有機的かつ効率的に連結するものであつて、第一条の目的を達成しうるものとする。」とされているが、第三条における「中核都市」の定義について、政府の見解を示されたい。
八 北陸新幹線敦賀以西ルートに係る国土交通省調査について
前回の質問で、国土交通省が北陸新幹線敦賀以西ルートについて改めて調査する目的を問うたところ、「北陸新幹線敦賀・大阪間について、所要時分、路線延長、概算事業費、需要見込み等の具体的なルートの選定の検討を行うために必要となる項目について、分析し、及び整理することを目的としている。」とする答弁をなされている。この類の調査は、全幹法によると第四条第一項の規定により基本計画を決定しようとする場合に必要な政令に基づく調査と、第七条の整備計画を決定する際に必要な第五条第一項に基づく調査があるが、国土交通省が実施している調査は全幹法の何れの条項に基づく調査なのか、政府の見解を示されたい。
九 根元受益の取扱いについて
前々回の質問で、北海道新幹線(新青森〜新函館)、北陸新幹線(上越〜金沢)の根元受益とは、具体的にどの整備新幹線区間に係る根元受益を指すのか問うたところ、「北海道新幹線(新青森・新函館北斗間)に係るものは東北新幹線(八戸・新青森間)等の営業主体であるJR東日本に、北陸新幹線(上越妙高・金沢間)に係るものは北陸新幹線(長野・上越妙高間)等の営業主体であるJR東日本に、それぞれ生じる受益を指しているものである。」とする答弁をなされている。また、「北海道新幹線(新青森・新函館北斗間)の営業を開始することにより、東北新幹線(八戸・新青森間)等の営業主体であるJR東日本に生じる受益」を根元受益とし、「当該受益の程度を勘案し、JR東日本と協議した結果、毎事業年度においてJR東日本から支払を受ける額は二十二億円とされたところである。」とある。
新たに建設する整備新幹線の早期着工のための財源確保の観点、また、国民の税負担において賄われた整備新幹線によって得られた利益の帰属が公益と私益のバランスを失しないためにも、根元受益の算定に当たっては、受益の及ぶ全ての区間を勘案すべきと考えるが、このJR東日本から毎事業年度に支払を受ける二十二億円とは、どの路線のどの区間の受益の程度として勘案したのか具体的に示されたい。
右質問する。