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平成二十九年九月二十八日提出
質問第一号

政府が進める「鉄軌道等導入に関する課題等の検討基礎調査」と沖縄県が要望する「鉄軌道の事業化」への取り組みに関する質問主意書

提出者  仲里利信




政府が進める「鉄軌道等導入に関する課題等の検討基礎調査」と沖縄県が要望する「鉄軌道の事業化」への取り組みに関する質問主意書


 政府は、平成二十二年度から沖縄県における「鉄軌道等導入に関する課題等の検討基礎調査」を実施してきた。八年間に及ぶ調査では将来需要の予測や概算事業費、事業採算性、コスト縮減方策、モデルルートの一部精査、東海岸ルートと支線の調査・検討等を行ってきた。今後は、沖縄振興特別措置法(平成十四年三月三十一日法律第十四号)第九十一条第二項に基づき、これまでの調査・検討結果を踏まえて、その整備のあり方についてとりまとめ、整備計画をとりまとめる計画段階へと移行するものと期待されている。ところで、計画段階への移行に当たっては、事業化に向けたルート案や事業スキーム、事業採算性、費用便益分析等についての具体かつ詳細な検討が必要となるものと思われるが、その際には、政府が積極的に沖縄県や地元経済界の考えや要望等を聴取して、真摯に構想にとり入れるべきであると思われる。
 一方、沖縄県は、平成二十八年八月十日及び二十九年八月十六日の二回、政府に要望書を提出し、「沖縄鉄軌道の事業化」に向けては「全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度創設に向けた取組を加速すること」など政府の主体的な取り組みを要請している。
 そこでお尋ねする。

一 鉄道事業が、戦後の我が国の経済復興と国民生活の安定に貢献し、現在に至ってもなお我が国の交通体系の根幹として、そして「国の超重点政策」等国策の一つであることは揺るぎのない事実である。然るに、政府は我が国の復興の要となった鉄道の教訓と政策の位置づけを沖縄の振興・開発に反映させようとしなかったのである。なぜならば、沖縄振興開発特別措置法(昭和四十六年法律第百三十一号)等により実施された第一次〜第三次までの沖縄振興開発計画において、政府は道路や空港、港湾、新交通システム(都市モノレール)の建設等に対する公共投資の整備計画は盛り込んだが、定時・定速・大量輸送を可能とする鉄道輸送網の整備とその運営に関する計画は盛り込まなかったからである。また、沖縄振興計画においても、沖縄都市モノレールのほか、「軌道系を含む交通システムについて調査、検討する」との文言が盛り込まれているものの、やはり鉄道関係の計画は同様に全く盛り込まなかったのである。このため、沖縄県民は政府に対して「本土は戦後の経済復興と国民生活の安定を鉄道で成し遂げたのにもかかわらず、沖縄にはそれを生かそうとしなかった」との批判や不満を抱き続けている。よって、政府は、沖縄振興開発計画と沖縄振興計画に「鉄道関係の計画」を盛り込まなかった理由や経緯について明らかにされたい。
二 「沖縄振興開発計画」決定後の国会審議において、「沖縄県知事案には含まれていた鉄道整備が削られている」ことが指摘された。また、その指摘をした上で、「鉄道の敷設の計画等を求める質問がある」ことや、復帰前の沖縄振興開発計画策定でも「縦貫鉄道が提起されたものの、見送られた」ことが指摘されている。
 よって、これらの指摘について政府の承知するところを明らかにした上で、なぜ沖縄県知事案に「鉄道の敷設」とあることを「国鉄の敷設は基本的に考えていない」と捻じ曲げて答弁したのか、挙句の果てには「モノレール方式というのも一つの交通緩和には役立つ」とかわして答弁したのか、知事案を政府が一方的に削除することは沖縄振興開発特別措置法及び同法に基づいて策定・実施される沖縄振興開発計画の趣旨や内容から妥当と言えるのか、などについて政府の認識と見解を答えられたい。
三 沖縄を除く全国では、鉄道整備について、事業の助成に関する事項を規定した法律として「全国新幹線鉄道整備法」や「都市鉄道等利便増進法」、「鉄道軌道整備法」が、経営主体の組織、事業計画、事業監督等を規定した法律として「独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法」が、それぞれ制定されており、さらに鉄道に関わる法律や省令等も多数存在しているものと承知している。その中で、既に整備・運営されている既存の鉄軌道をさらに使いやすく、高度化させることを目的に制定されているものもある。例えば、「都市鉄道等利便増進法(平成十七年法律第四十一号)」では「都市鉄道のネットワークが相当程度拡充されている現状において」も、なお「そのネットワークを有機的に活用して都市鉄道の機能の高度化を図るために必要な都市鉄道施設の整備等を促進する」とし、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成十八年法律第九十一号)」では「高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保する」ため、「公共交通機関の旅客施設及び車両等の構造及び設備を改善するための措置、その他の措置を講ずる」とし、さらに鉄軌道の根幹となった「鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)」では「輸送の安全を確保し、鉄道等の利用者の利益を保護するとともに、鉄道事業等の健全な発達を図る」ため、「鉄道事業等の運営を適正かつ合理的なものとする」とし、また「鉄道営業法(明治三十三年法律第六十五号)」で「鉄道の設備や係員等について」規定し、「軌道法(大正十年法律第七十六号)」で「軌道事業全般について」規定するなどしている。沖縄を除く他都道府県ではこのように鉄道事業に関して「至れり尽くせり」の感があるが、沖縄県だけがその対象から外されているように思われる。なぜ沖縄県と他都道府県との間で、このような不公平や違いが生じているのか、明らかにされたい。
四 昭和四十五年五月十三日に成立した「全国新幹線鉄道整備法(昭和四十五年法律第七十一号)」では、その目的が「高速輸送体系の形成が国土の総合的かつ普遍的開発に果たす役割の重要性にかんがみ、新幹線鉄道による全国的な鉄道網の整備を図り、もって国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資すること」となっている。同法の目的からすれば、「沖縄県」も含まれて然るべきであると思われる。また、目的に掲げる「国土の総合的かつ普遍的開発」や「全国的な鉄道網の整備」、「地域の振興」の観点からしても「沖縄県」が含まれるべきであると思われる。
 よって、政府は、同法において沖縄県を除外する理由は何か、その根拠は何か、などを具体的に明らかにされたい。
五 政府がこれまで進めてきた沖縄における「鉄軌道等導入に関する課題等の検討基礎調査」は、全国の中で沖縄県だけに唯一基幹的公共交通システムの鉄道がない状況にかんがみ、政府が主体となって「沖縄県における鉄軌道の事業化」を推進するため、実施しているものと承知するが、政府の認識もそのとおりであるか、明らかにされたい。
六 報道によれば、去る八月十八日、沖縄県が設置した有識者による「沖縄鉄軌道計画検討委員会」において、委員から「戦争によって沖縄から鉄軌道がなくなった。戦後復興の視点で国家プロジェクトとして位置付ける必要があるのではないか」との意見があったところである。また、本職も平成二十八年三月二十四日付質問第二〇九号及び同年四月二十日付質問第二五一号で「沖縄に戦前及び戦中にあった沖縄県営鉄道(軽便鉄道)が米軍の空襲により完全に破壊されたが、政府は戦時補償の一環と位置付けて、政府主導で沖縄に鉄軌道を整備すべきではないか」と強く指摘したところである。戦後七十二年たった現在においても、沖縄では今なお戦争による影響が色濃く残り、県民生活に様々な支障を与え続けていることは政府も十分承知しているものと考える。その中でも戦争により県民の宝であった軽便鉄道が破壊され、未だに復旧されていないことも戦争による影響の一環として位置付けるべき事案である。
 よって、政府は県民の総意を踏まえて、戦後復興の一環として「基幹的公共交通システムとなる鉄軌道」の整備を行うべきではないか。
七 質問六に関連して、本職は、平成二十八年三月二十四日付質問第二〇九号及び同年四月二十日付質問第二五一号で、昭和四十六年十一月十日に開催された「沖縄及び北方問題に関する特別委員会」において、山中貞則国務大臣が沖縄振興開発特別措置法の趣旨説明として「県民への償いの心をもって事に当たるべきである」との発言を踏まえて、「戦時補償の一環として県営鉄道に代わる鉄軌道の整備を主導して行うべきである」と提言した。しかし、政府は「償いの心で鉄軌道の整備を行う」か否かについては全く触れず、単に「鉄軌道の調査を実施している」と回答するのみである。本職をはじめ沖縄県民は、「鉄軌道の整備」に当たっては、山中国務大臣が言うように「県民への償いの心をもって事に当たるべきである」と考えるが、政府がそのような認識と見解を基本的に有しているか、明らかにされたい。
八 沖縄県が政府に要望した「全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度創設」の趣旨と内容について、本職は「@「沖縄県における鉄軌道」の「基本スキーム」は、無償の公的資金を投入して建設すること、Aそのため、建設主体は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構とすること、Bこのようにして建設された施設を採算可能な額で運営会社に貸し付けること、Cこのことにより沖縄県における鉄軌道の公共性と運営会社の採算性を同時に確保することを可能とすること、である」と理解するが、沖縄県の要望について政府の承知するところを明らかにした上で、同要望に対する政府の今後の取り組みや対処方針について見解を答えられたい。
九 質問八に関連して、沖縄県は同要望を具現化するため、「特例制度創設に向けた取組を加速すること」も併せて要望している。このことについて、本職は、沖縄県における「鉄軌道の事業化」の重要性は近年ますます高まってきていることや、他都道府県が「国策による全国津々浦々までの鉄道網の整備」により多大な恩典に預かってきたのに対して、沖縄県だけが疎外され、県民の間に不満を感じてきたこと、平成二十八年三月二十四日付質問第二〇九号で指摘したように「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律」に基づき、国鉄の恩典に全く与らなかった沖縄県民も国鉄長期債務の支払いを余儀なくされたため、県民の間には著しい不公平感が募っていたこと、等にかんがみて、沖縄県の要望の趣旨は「政府がイニシアチブを取り、建設に関する基本的な計画の作成・決定を行い、設置してもらいたい」ということであると理解するが、沖縄県の要望について政府の承知するところを明らかにした上で、同要望に対する政府の今後の取り組みや対処方針についての認識と見解を答えられたい。
十 政府は、平成二十五年度の内閣府調査報告書において、平成二十六年度より全国新幹線鉄道整備法も含め、様々な制度について研究・検討を行うとしていると承知している。ついては、これまでの検討状況及び結果について政府の承知するところを明らかにした上で、沖縄県が求める全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度の創設の可能性について政府の認識と見解を答えられたい。
十一 内閣府が行った調査では、モデルルートを複数設定し、さらには構造等も様々に組み合わせ、コスト縮減策等について検討を行ってきた。次年度予算においても、同様な調査に係る経費を概算要求しているものと聞き及んでいる。一方、沖縄県では、県民との合意形成を図りながら、今年度中にルート案を一つに絞り込み、県としての構想をとりまとめることとしていることから、政府におかれては、最早モデルルート等の調査・検討を行うのではなく、県の構想と要望を真摯に踏まえて、事業化に向けて具体的な検討を行うべきであると考えるが、政府の認識と見解を明らかにされたい。
十二 質問十一に関連して、政府の今後の調査の方向性と、県の構想との整合性について政府の認識と見解を明らかにされたい。

 右質問する。



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