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平成三十年十二月四日提出
質問第一〇五号

肱川流域におけるダムに依存した治水の限界と流域治水に関する質問主意書

提出者  阿部知子




肱川流域におけるダムに依存した治水の限界と流域治水に関する質問主意書


 平成三十年七月豪雨は、命を守るための治水のあり方について多くの教訓を残した。愛媛県を流れる肱川では、ダムに依存した治水の限界と共に、洪水を流域全体で受け止めて防災、減災に努める治水への転換の必要性をも明らかにした。
 そこで、以下、質問する。

一 河川法第十六条の二に基づいて国が定めた肱川水系河川整備計画(三十一頁)には、「大洲盆地内の集落は水害に見舞われる宿命にある」との記述がある。国土交通省は、河川管理者として「大洲盆地内の集落は水害に見舞われる宿命」と考えてきたことを、肱川水系河川整備計画に書き込む以外で、流域住民に対してどのように伝えてきたか。
二 肱川水系河川整備計画(三十一頁)によれば、大洲市東大洲地区は平成五年に「八幡浜・大洲地方拠点都市地域」に指定されたため、多くの企業が進出したとの記述がある。根拠法である地方拠点法によれば、都道府県知事は、関係市町村及び主務大臣と協議の上、地方拠点都市地域の指定を行うことになっている。
 1 国土交通省は河川管理者として「大洲盆地内の集落は水害に見舞われる宿命にある」と考えてきたことを、進出してくる企業に対してどのように伝えてきたか。
 2 平成二十六年までに地方拠点都市地域指定された全国五百三市町村について、指定地域に水害歴のある地域が含まれているかどうかの点検を行わせ、対策を国として呼びかけるべきではないか。
三 平成三十年七月七日に行われた野村ダムの但し書き操作による放流は、最大毎秒約二千立方メートルであり、下流域に死者を含む深刻な被害を引き起こした。
 1 肱川水系河川整備計画が未整備な現状で、野村ダムと鹿野川ダムに挟まれた区間では、川が一度も河道から溢れることなく流れる量は、最大で毎秒何立方メートルか。
 2 野村ダムと鹿野川ダムに挟まれた区間で、肱川水系河川整備計画通りに河道が整備された場合に、川が河道から溢れずに流れることができる量は毎秒何立方メートルか。
 3 七月七日の野村ダムの但し書き操作で放流した最大流量は毎秒約二千立方メートル近かったが、その量を放流した場合に、野村ダムと鹿野川ダムに挟まれた区間のどこで氾濫し、または、水位が何メートルまで上昇するかを国は予測できていたか。
 4 野村ダムで但し書き操作をおこなった場合、どのぐらいの流量を流した場合に、下流で水位がどこまで上昇するかの予測を、常日頃から自治体もしくは住民に対して伝えていた事実はあるか。
 5 今後は、洪水時に迅速にリスク情報が伝わり、避難行動につながるように、野村ダムがどれぐらいの放流を行うと、水位がどこまで上昇するか、放流量と水位を対比させた情報を、河川管理者が住民に常日頃から周知した上で、洪水時には河川管理者が直ちに直接、自治体だけではなく、下流住民に伝える手段を確保しておくべきではないか。
四 平成三十年七月七日に行われた鹿野川ダムの但し書き操作による放流は、最大毎秒約三千五百立方メートルであり、広範囲にわたる深刻な浸水被害を引き起こした。
 1 鹿野川ダムから河口までの区間で、現状、川が一度も河道から溢れることなく流れる量は、最大で毎秒何立方メートルか。
 2 毎秒三千五百立方メートル以上を鹿野川ダムから放流した場合に、鹿野川ダムから河口までの区間のどこで氾濫し、水位がどこまで上昇するかを国は予測できていたか。
 3 鹿野川ダムで但し書き操作をおこなった場合、どのぐらいの流量を流した場合に、下流で水位がどこまで上昇するかの予測を、常日頃から自治体もしくは住民に対して伝えていた事実はあるか。
五 ダム放流量と下流における水位上昇を対比させる情報提供をダム設置者に義務付ける河川法改正を検討すべきではないか。
六 平成三十年七月豪雨を踏まえて、肱川水系河川整備計画に書き込まれた堤防整備や河道掘削の未実施区間についての情報を共有し、被災した地域の住民との協議により、事業の優先順序を見直すべきではないか。
七 想定洪水をダムと河道に配分して治水を行う河川法の考え方に加えて、さまざまな治水施策を盛り込んだ滋賀県流域治水の推進に関する条例は今後の治水を考える上で参考になる。たとえば、条例第二十九条では「宅地建物取引業法第二条第三号に規定する宅地建物取引業者は、同法第三十五条第一項に規定する宅地建物取引業者の相手方等に対して、その者が取得し、または借りようとしている同法第二条第一号に規定する宅地または建物に関し、その売買、交換または貸借の契約が成立するまでの間に、当該宅地または建物が所在する地域の想定浸水深および水防法第十四条第一項に規定する洪水浸水想定区域に関する情報を提供するよう努めなければならない」とした。
 国においても、水害の防災や減災のために、土地の売買、交換または貸借の際に、宅地建物取引業者に、滋賀県の条例と同様の努力義務または義務を課す法改正を検討すべきではないか。
八 滋賀県流域治水の推進に関する条例第十三条および十四条では、浸水警戒区域を知事が指定し、高齢者、障害者、乳幼児など災害弱者が利用する施設や学校、医療施設を建築することに一定の建築制限をかけて予め被害を防ぐ規定をおいている。平成三十年七月豪雨においても多くの公共性の高い施設が浸水被害を受けて機能しなかった事案が報告されており、国においてもこの条例を参考にして一定の施設については一定の建築制限をかける法改正を検討すべきではないか。
九 滋賀県流域治水の推進に関する条例第十六条等では、住民が自宅において逃げ遅れても命が守れるように、浸水警戒区域では住まいに避難空間を確保するため、想定水位より上に部屋や屋上があることを県は呼びかけ、補助金制度も整備しつつある。国においてもこの条例を参考にした法改正を検討すべきではないか。

 右質問する。



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