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令和元年八月一日提出
質問第一五号

Facebookなどが提唱するブロックチェーンベースのデジタル通貨「Libra(リブラ)」とそれらに関連する金融・経済政策に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




Facebookなどが提唱するブロックチェーンベースのデジタル通貨「Libra(リブラ)」とそれらに関連する金融・経済政策に関する質問主意書


 世界で二十七億人程度の利用者がいると言われているSNSサイトFacebookを中心とする企業グループが、二〇二〇年にデジタル通貨「Libra」(以下「リブラ」という。)のサービスを始めると発表した。
 リブラを軸におく金融システム構想は、二〇一九年六月十八日に、そのホワイトペーパーが公開され、VISA、Mastercard、Uber Industries、eBay、Spotifyなどのメンバー企業で構成された独立組織であるリブラ協会がスイス・ジュネーブに設置される。
 リブラは、二〇二〇年から米ドル等の法定通貨と価格が連動するペッグ型のデジタル通貨であるステーブルコインとして提供されるとしており、これまで金融インフラの恩恵を享受できなかったマーケットを取り込む構想があるとされている。
 二〇一九年七月十八日に閉幕したG7財務大臣・中央銀行総裁会議において、議長国のフランスがFacebookの計画するリブラなどのデジタル通貨について「金融システムの安定や消費者保護を脅かすことのないよう、最高水準の金融規制を満たす必要があるとともに、通貨主権や国際通貨システムの機能にも影響しうることに合意した。」とする議長総括を公表した。このように、リブラは、マネーロンダリング対策、テロ資金対策、消費者とデータの保護、金融制度の安定性などの課題があると考えられる。
 その一方で同議長総括では、「国境を超える決済システムが顕著に改善され、消費者にとってより安価になる必要があることを示していることでも合意した。」とあり、多額のコストと手間がかかっていた従来の送金や決済がより簡単になることで貧困などにより銀行等で提供されている基本的な金融サービスを受けられなかった人々にも恩恵を行き渡らせる「金融包摂(Financial Inclusion)」の促進に繋がり、消費者に多大なメリットを与え、経済活動に大きなインパクトを与える可能性がある。
 こうした状況を踏まえ、我が国においてもテクノロジーの進化を踏まえた金融システムのあり方について本腰を入れて様々な研究・検討すべき時期であると考え、政府の見解を確認したく、以下質問する。

一 リブラをめぐり、財務省、金融庁、日本銀行が連絡会を設置したとのことであるが、現在どのようなことが議論されているのか、その詳細について伺いたい。
二 右記の財務省、金融庁、日本銀行で設置している連絡会の他に、内閣府や経済産業省などを加えた協議体でリブラが経済に与える影響について日本政府として研究・議論を行う予定はあるのか伺いたい。
三 リブラが我が国にどのような影響を与える可能性があると考えているのか、政府の見解を伺いたい。
四 G7財務大臣・中央銀行総裁会議において、リブラが国家の通貨主権や国際通貨システムの機能にも影響しうると各国が懸念を示している。今後のデジタル経済の進展により、国内だけでなくグローバルに通用するデジタル通貨が経済活動に普及していくと想定され、民間企業だけではなく様々な国家がデジタル通貨の発行を進めようと動き出すことは容易に想像できることから、我が国においても金融政策の有効性を確保する観点から中央銀行が発行するデジタル通貨であるセントラル・バンク・デジタル・カレンシー(CBDC=Central Bank Digital Currency)の発行を検討する必要があると考えるが如何か。政府の見解を伺いたい。
五 国際通貨基金(IMF)が二〇一九年七月十五日に発表した報告書「デジタル通貨の台頭(The Rise of Digital Money)」によれば、将来、現金や銀行預金は、通貨建で表示される電子マネーや米ドル等の法定通貨にペッグされたデジタル通貨との競争に直面し、凌駕される可能性すらあるとしている。それと同時に、電子マネーやデジタル通貨の価値の安定性に対して疑問を呈している。そこで、この疑問に対応するために、同報告書では官民共同のソリューションとして、中央銀行が準備預金による信頼性と効率性を提供しつつ、民間セクターが規制の下、消費者と対話しイノベーションを起こすことを可能とする「Synthetic CBDC(シンセティック セントラル・バンク・デジタル・カレンシー)」を提案しているが、Synthetic CBDCについて政府としてはどのように捉えているのか、所見を伺いたい。
六 世界には銀行口座を持たない成人が約十七億人いると言われているが、リブラの構想では、銀行口座を持たなくても個人がデジタル・ウォレット(デジタル通貨の財布)で簡単に資産の保管・管理を行うことができる上に、安価に送金や決済を行うことが可能となる。
 現時点でFacebookの利用者数は約二十七億人であるが、銀行口座を持たない人の約十七億人とのシナジーによって、国境に縛られることのない巨大経済圏が創造される可能性がある。
 デジタル経済時代におけるプラットフォームをGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)やBATH(Baidu、Alibaba、Tencent、Huawei)などに席巻され、我が国の企業が存在感を示せない中で、フィンテック時代の金融プラットフォームでは遅れを取らぬように、法定通貨ペッグ型のデジタル通貨であるステーブルコインの普及を念頭に置いた政策を講じていくべきであると考えるが如何か。政府の所見を伺いたい。
七 日本政府が行っている政策の多くが、社会的に問題が生じた時にその対応を行うというものであり、率先してクリエーション、イノベーションを牽引し、経済を成長させようという気概が見受けられない上に、目覚ましい結果も出ていない。
 暗号資産領域においては、利用者・投資家保護という問題への対応として、暗号資産交換業の規制が強化されているが、規制とイノベーションのバランスについては、省庁を越えた戦略的かつ包括的な政策が必要であると考える一方で、ピントの合っていない規制がイノベーションを阻害しているというベンチャー企業経営者の声が多く聞こえてくる現状がある。
 これは一例であるが、最近、暗号資産の管理などへの規制を強化する改正資金決済法と改正金融商品取引法が可決・成立したことにより、法令遵守コストが高まることを懸念した多くのベンチャー企業が、高いハードルを越えられずに提供サービスの停止を発表した。
 利用者・投資家保護の重要性は理解するが、これからイノベーションが進む暗号資産領域に対して我が国ではベンチャー企業が参入できない方向に規制が進んでいる。その結果として、有能な人財並びに企業が海外に転出しており、国家的には損失であると考える。
 我が国の経済発展において、革新的なベンチャー企業の躍進は必要不可欠であると考えられ、規制によりイノベーションが阻害されている現状並びにベンチャー企業の参入が阻害されている現状に対して政府はどのように捉え、規制とイノベーションのバランスを踏まえた経済政策を進めていこうと考えているのか、所見を伺いたい。
八 財務省は二〇一九年六月二十五日、税金の無駄遣いを点検する予算執行調査の結果を発表した。内容は「ベンチャー企業の育成」に使うべき予算を大企業に充てていた経済産業省の「スタートアップ支援」など十二府省の計三十五事業で問題点を指摘したというものである。今後、予算の見直しや執行の効率化につなげていくとのことであるが、制度の趣旨を曲げた予算執行によってもたらされた、大企業贔屓、ベンチャー企業軽視とも受け止められかねない問題を、今後どのように改善していくのか、政府の所見を伺いたい。

 右質問する。



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