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令和二年一月二十日提出
質問第一五号

通信と放送が融合する新時代におけるNHKのインターネット関連業務のあり方に関する質問主意書

提出者  中谷一馬




通信と放送が融合する新時代におけるNHKのインターネット関連業務のあり方に関する質問主意書


 地方のローカル局では、ネットワーク組織へ番組を送り出す放送局であるキー局が地方局を通じて番組を全国放送し、地方局が広告収入を得る全国系列ネットワーク型のビジネスモデルを展開している。
 そうした中、NHK(日本放送協会)の常時同時配信に民放のキー局が追随して、配信エリアを制限せずに、ネット上で多くの番組を流すことになると、地方のユーザーも視聴可能になるため、地方局のビジネスモデルを崩す可能性がある。
 これに関連してNHKは地域制限を行うこととしており、民放連(日本民間放送連盟)もNHKが常時同時配信を行うに当たって重視すべき事項として地域制限を挙げている。
 またNHKは現在インターネットの活用業務の実施基準においては、受信料財源業務の実施に要する費用の上限を受信料の二・五%としている。
 しかしながら近年では、Netflix、hulu、Amazon Prime等のOTT(Over The Top)と呼ばれる海外の事業者が日本でも巨大な資本を生かした良質なコンテンツの制作による動画配信サービスを展開しており、テレビ離れが進んでいる若者を中心に視聴する人が多くなっている現状がある。これらに関連して、以下質問する。

一 本来インターネットは、ネットワークを通じて世界を結び、情報の共有を行うことを利点としている技術であるが、わざわざ地域制限を行い、誰もが番組を見ることができる状況を阻害することは、インターネットの利点を潰してしまうと考えるが如何か。政府の所見を伺いたい。
二 OTTが、世界的に非常に強くなり、公共放送、民間放送事業者がどのように対抗していくのか策を求められている中、NHKが常時同時配信を行うにあたって地域制限を実施してわざわざ作ったコンテンツを抑制するような対応はピントがずれているように感じる。
 世界的にコンテンツ提供の市場原理が変わっている状況を踏まえれば、インターネット鎖国のような海外との通信規制でもしない限りは、NHKが常時同時配信に地域制限をかけたとしてもOTTのコンテンツには制御がかからないので、既存の放送局が行っていたビジネスモデルでは維持できないことは想像に容易い現状があると考えるが如何か。政府の所見を伺いたい。
三 イギリスでは、国策として公共放送と民間放送が協力して動画配信サービスを行うことにより、海外展開を行い、収益を上げていくことでOTTに対抗しようとしている。
 インターネット配信は、日本全国の特色ある番組、コンテンツを作成して、我が国に限らず全世界に提供することが可能となり、地方の自然、文化、暮らしなどの情報を広く紹介できる良い機会にもなると考えるので、本来的には公共放送で作成した番組、コンテンツを広く配信させる方が好ましいと考える。
 こうした観点から日本においても地域制限というナンセンスな対策ではなく、NHKと民放の両者が協力し、OTTに対抗していくような前向きな対策を講じることが必要であると考えるが如何か。政府の見解を伺いたい。
四 現在NHKはインターネットの活用業務の実施基準においては、受信料財源業務の実施に要する費用の上限を受信料の二・五%としている。
 これは民放連等がNHKの肥大化、民業圧迫等を理由に、常時同時配信が行われることになったとしても、この二・五%の上限の維持を求めていることに配慮していることが大きな要因であるとされているが、このように公共放送におけるインターネット活用業務に要する経費の上限規制をかけている諸外国の事例は他国の公共放送には存在せず、日本独自の規制であるという認識で正しいか、政府の所見を伺いたい。
五 私の認識が正しく、他国には事例がない日本特有の変わった規制であるとすれば、放送と通信の融合する新時代においてこれからますます視聴者が増えるであろうインターネット戦略にかける予算に対して上限をかけることに違和感を感じる。
 NHKにおける受信料の二・五%は、約百七十億円程度の規模になるが、世界の例を見るとイギリスの公共放送BBCは二〇一七年にインターネット活用業務に要する経費として約四百八億円、全体に占める割合としては七・五八%の予算規模で事業を進めている現状がある。
 またNetflixに至っては、二〇二〇年に約一兆八千六百億円(百七十億ドル)の制作費を支出するとしており、百倍以上の規模となっている。テレビ離れ・スマートデバイスファーストが進む中、公共放送においてもインターネットでの視聴が中心となることが想定される令和時代のNHKのあり方を考えるにおいて、こうした状況を放置しても問題ないと政府は考えているのか所見を伺いたい。
 またOTTへの対抗策など新たな戦略やビジョンがあればあわせてその展望についても政府の見解を伺いたい。
六 国民・視聴者の目線で見ると、公共放送、民間放送の区別なく、質の高い番組を見たいというニーズがある。
 そうした中、慶應義塾大学の中村伊知哉教授は、「例えば、ネット業務のためにNHKと民放の共通の基金を作るなど、次の市場、次のメディア環境をどう作っていくかを議論してほしい」と述べている。この意見には私もまったく同感であり、二・五%の上限を設けて発展の足を引っ張り合うような対策ではなく、むしろ、民放との共同事業にNHKが積極的に投資することで、民放とのWin―Winの関係を築く方が、海外の事業者との競争においても有益であると考える。
 次の市場、次のメディア環境を作る目線で、民放との共有基金の組成やインターネット配信プラットフォームの構築に際しては、NHKからも積極的に投資を行い、民間と共同してグローバルマーケットで戦うことのできる建設的な事業戦略を描く必要があると考えるが如何か。政府の見解を伺いたい。
七 NHK経営委員会は常時同時配信の実現に尽力した上田良一現会長に代わって、次期会長に元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸氏を選任した。
 前田次期会長は、これから常時同時配信に関わる課題に対応し、世界の通信事業者と放送事業者に対抗する経営戦略を前に進めていかなければいけない。
 前田次期会長はみずほ時代に株価を十倍超まで引き上げた経営手腕をお持ちであると伺っているが、就任が決まった際の記者会見で「実はインターネットやパソコンを持っていない。古い人間で常時配信がどんなものかもわかっていない。一月までにもうちょっと勉強させてほしい」と発言されている。政府はこの発言についてどのように捉えているのか所見を伺いたい。

 右質問する。

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