衆議院

メインへスキップ



質問本文情報

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
令和二年六月十二日提出
質問第二六二号

除染なき避難指示解除の政府方針に関する質問主意書

提出者  阿部知子




除染なき避難指示解除の政府方針に関する質問主意書


 経産省、環境省、復興庁は、飯舘村からの要望があったことを前提に、除染せずに避難指示区域の解除(以後、解除)ができるようにすることで一致し、原子力規制委員会にその安全性について諮った結果を受け、今夏にも原子力災害対策本部(本部長・安倍晋三首相)で、新たな解除要件を加える旨が、先ごろ報道された。そのため、さまざまな観点から政府の考え方を確認するため、六月十一日に原発ゼロの会はヒアリング(以下、ヒアリング)を開催した。ヒアリングでは、飯舘村の要望は決して「除染せず」ではなかったことが確認された他、現行の避難指示解除の三要件が確認された。
 ・空間線量率で推定された年間積算線量が二十ミリシーベルト以下になることが確実であること
 ・日常生活に必須なインフラ、生活関連サービスが概ね復旧すること、及び子どもの生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗すること
 ・県、市町村、住民との協議
 その決定資料をたどると、二〇一一年十二月二十六日に原子力災害対策本部が決定した「ステップ二の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」である。
 この三要件に関し、ヒアリングでは、一番目の「二十ミリシーベルト以下」は高すぎるという意味で有識者から異論があがり、二番目については、帰還困難区域は「子どもの生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗」とあるが、子どもが住めるような状態なのかとの疑問が呈された。三番目に関して飯舘村を例にあげて「地元とは何を意味するか」との問いに、内閣府原子力被災者生活支援チームが「首長、村議会、住民である」旨を回答した。
 このような三要件であるから、見直す場合には、慎重な検討が必要である。
 そこで以下質問する。

一 そもそも現在の三要件はどのようなプロセスのもとで決定に至ったのか。関係省庁、原子力規制委員会、原子力災害対策本部の関係性や決定プロセスがわかるように明らかにされたい。
二 解除要件の見直しについての政策決定プロセスは、一に対する答弁と同様のプロセスをたどるのか。そうでないとすればどのようなプロセスを想定しているのか。
三 二〇一三年十一月二十日には原子力規制委員会の「帰還に向けた安全・安心対策に関する検討チーム」が「帰還に向けた安全・安心対策に関する基本的考え方」をまとめ、それが解除と特定復興再生拠点区域復興再生計画の認定について定めた二〇一七年五月のいわゆる「福島復興再生特措法」の改正へとつながった。この認識で間違いはないか。違うとすれば、二〇一七年五月の福島復興再生特措法改正に至る政策決定プロセスを明らかにされたい。
四 解除要件の見直しについての政策決定プロセスは、三で答弁するプロセスをたどるのか。そうでないとすればどのようなプロセスを想定しているのか。また、この政策決定プロセスに原子力規制委員会はどのように関係することが、想定されているのか、明らかにされたい。
五 帰還困難区域の解除については、福島復興再生特措法で「特定復興再生拠点区域復興再生計画の認定」(第十七条の二)という形で規定されているが、「特定復興再生拠点区域」外についての定めはない。この認識に間違いはないか。
六 福島復興再生特措法の運用上の住民の放射線防護レベルは、いわゆる「原子炉等規制法」が原子力事業者に求めている周辺監視区域の線量限度である年間一ミリシーベルトとは矛盾があるが、今後、どのようにこの矛盾を解消していくのか。
七 ヒアリングにおいて、内閣府原子力被災者生活支援チームは、特定復興再生拠点区域内においては、子どもが十分に生活できるレベルを前提に除染をしている旨を回答していたが、そのレベルとは、具体的に空間線量率で毎時何マイクロシーベルトを目安としているのか。
八 ヒアリングで提供された復興庁資料によれば、帰還困難区域を抱える自治体は、飯舘村に加えて、双葉町、大熊町、浪江町、富岡町、葛尾村の計六町村があり、帰還困難区域全体における住民登録数は、飯舘村で二百四十六人、双葉町で五千六百四十四人、大熊町で九千八百六十二人、浪江町で二千九百人、富岡町で三千五百七十二人、葛尾村で百八人おり、計二万人を超えている。
 また、環境省がヒアリングで示した事前質問への文書回答によれば、帰還困難区域の対応については飯舘村以外の五町村に関しても「地元の要望を十分に踏まえつつ、政府全体として検討を進めて」いくとのことである。
 その五町村は目下、除染の実施を強く求めており、福島県の内堀知事も、自治体との十分な協議をしっかり満たすことが大事である旨を公言していることが報道されている。こうしたことを総合的に鑑みた場合、三密回避のために、住民との会合の開催や協議や合意形成も容易ではないなか、今夏にも解除の方針や要件を見直すことは、現実的ではないと考えるがどうか。

 右質問する。

経過へ | 質問本文(PDF)へ | 答弁本文(HTML)へ | 答弁本文(PDF)へ
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.