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令和二年九月十六日提出
質問第二六号

JR東海による水収支解析等に関する質問主意書

提出者  阿部知子




JR東海による水収支解析等に関する質問主意書


 国土交通省が提案した「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」(以後、有識者会議)が会合を重ねるうちに、静岡県とJR東海の間の最大の争点であった水問題に関して、これまで明らかになっていなかった水収支解析が明らかになった。
 他方、JR東海は、新型コロナウイルスの影響で、二〇二〇年四月〜六月期連結決算が七百二十六億円の赤字を抱え、東海道新幹線の利用客は前年度比八十四%減であり、今後も厳しい経営環境が続くとの見通しを示している。
 リニア中央新幹線は、内閣府の国土強靭化推進本部が二〇二〇年六月十八日に公表した「国土強靭化年次計画二〇二〇」で、「建設主体であるJR東海が、国、地方公共団体等と連携・協力しつつ、整備を推進する」と位置付けられており、事業の進捗は、地方公共団体等における公共投資や民間投資にも大きく影響する。
 重要な局面に直面しているため、現時点での政府の認識を以下、質問する。

一 第一回有識者会議(二〇二〇年四月二十七日)の国土交通省鉄道局長の冒頭発言と資料によれば、静岡県は、県独自の検証を行っており、県の専門部会の委員や県職員とJR東海の議論がかみ合わないことが、国土交通省が有識者会議を立ち上げた理由であると推察できるが、この認識で間違いはないか。
二 有識者会議で扱う論点のうち二つは、「トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方」及び「トンネルによる大井川中下流域の地下水の影響」ということであり、国土交通省としては、有識者会議が科学的・工学的な議論の場となることを目指している。この認識で間違いはないか。
三 有識者会議開催について国が静岡県について提案した際、静岡県からは、以下の五事項の確保が要望されていた。これらを国は確保しているのか。五事項それぞれについて明らかにされたい。
 1 会議は、透明であること
  会議は、全面公開で行い、静岡県とJR東海のこれまでの対話の内容をよく踏まえた上で、県民にわかりやすい議論が行われること
 2 議題は、引き続き対話を要する四十七項目全てとすること
  貴職御提案の二項目だけでなく、生物多様性、水環境等を含むこと
 3 会議の目的は、国土交通省によるJR東海への指導とすること
  これまでの県とJR東海との間で行われてきた科学的根拠に基づく対話を評価した上で、JR東海に対してデータ等に基づく適切かつわかりやすい説明を促すこと
 4 委員選定は、中立公正を旨とすること
  これまでの経緯を踏まえて、静岡県の見解を避けずに議論のできる人選とすること
  議題に関連する省庁の専門家や県の推薦者(専門部会長等)が委員として参加すること
  利水関係者等地元住民の代表者がオブザーバーで参加できること
 5 会議の長は、中立性を確認できる者とすること
  JR東海の設置した委員会や県の専門部会の委員、利害関係者等を除くこと 
四 二〇二〇年七月十六日開催の第四回有識者会議でJR東海が示した水収支解析によれば、南アルプス国立公園の特別保護地区及び特別地域内の地下水位が三百メートル以上低下する。
 この解析については、静岡県中央新幹線対策本部長である難波静岡県副知事が、「この内容は、環境影響評価書に示されていないもので、本県としても初めて目にしたものです」と二〇二〇年八月十三日に環境省の和田総合環境政策統括官に宛てた「「リニア中央新幹線静岡工区 有識者会議」においてJR東海が行った水収支解析について」(以後、「水収支解析について」)で指摘している。
 このような重要な水収支解析が、環境影響評価書に示されていなかったことについては、環境影響評価法に照らしてどのような問題があると考えるか。
五 環境省は「中央新幹線(東京都・名古屋市間)に係る環境影響評価書に対する環境大臣意見(二〇一四年六月)」で、「山岳トンネル部の湧水対策は、事前に精度の高い予測を行った上で対策を検討しておく必要がある」と指摘していた。
 精度の高い予測を確保し、それが信頼されるためには、環境影響評価書が公開され、そこに十分な情報が記載され、客観的な検証が可能になっていることが重要であり、その検証可能性にこそ、環境影響評価の高い意義であると考えられるが、どうか。
六 静岡県の「水収支解析について」は、JR東海による「南アルプス国立公園の特別保護地区及び特別地域内の地下水位が三百メートル以上低下する」との解析結果について、これは、「解析における初期の地下水位(工事前)は実測値ではなく、計算上の推定値であり、工事中、工事後の地下水位計算結果もいくつかの仮定を置いた上での計算値であること、また、JR東海のモデルでは、断層等の地質構造を踏まえた地下水位の変化は考慮できていないことなどから、計算結果の信頼度については不確実性が高い」と指摘している。また、「地下水位の低下については、静岡市が別のモデルを用いて解析したものがありますが、その解析結果では、断層に沿って地下水位が低下しており、JR東海のモデルとは明らかに解析結果が異なります」とも言及している。そして、「県として、JR東海が行った水収支解析に基づく地下水変化の計算結果について、更に検証を進めていく方針ですが、その参考として、本問題についての貴省の取扱い方針について、御教示賜りたく存じます」と環境省に求めている。
 「計算結果の信頼度については不確実性が高い」と指摘されていることに鑑み、有識者会議を設置した国土交通省として、どのようにすれば有識者会議が「科学的・工学的な議論の場」となると考えるか、見解を明らかにされたい。
七 国土交通省は、リニア中央新幹線で東京・名古屋・大阪を結び、巨大な経済圏の形成を目指す「スーパー・メガリージョン構想」を策定しているが、今般の新型コロナウイルス対策の中で、テレワークが普及、ビジネス環境が変化し、リニア中央新幹線の必要性は相対的に減じた。
 1 新型コロナウイルス感染症がもたらした社会情勢や経済状況の変化の観点から、スーパー・メガリージョン構想や国土強靭化年次計画二〇二〇の見直しを、政府は行う必要があるのではないか。
 2 静岡県は「引き続き対話を要する四十七項目」を議題とすることを求めており、水収支問題だけでも解決には時間を要するため、事業期間の長期化は避けられず、事業費の増大は必至である。国はリニア中央新幹線の推進に、現在までにどれだけの公費を費やし、税の減免を与えてきたかを明らかにして、その費用対効果がどのようなものになるか、現時点での評価を明らかにされたい。
八 未着工の静岡工区以外の着工済みの工区で、水枯れ、土砂崩壊、地下水の湧きだし、陥没事故、有害物質の発生等が起きているとの指摘があがっているが、これまでに国土交通省として把握している、工事に伴って指摘されている問題とその対策について、工区ごとに明らかにされたい。

 右質問する。

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