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令和二年十一月三十日提出
質問第六五号

横浜市と神奈川県の地震被害想定の違いによる震災対策における格差と、県によるその調整に関する質問主意書

提出者  早稲田夕季




横浜市と神奈川県の地震被害想定の違いによる震災対策における格差と、県によるその調整に関する質問主意書


 国は防災基本計画において、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波を想定し、対策を推進する」旨を規定しているところ、横浜市は最大クラスの地震として東日本大震災以前に行った想定を基礎とした「元禄型関東地震」を採用し、そのデータを基に、市内の十八区毎に物的・人的被害及び経済被害の予測を行い、横浜市地震被害想定調査報告書として二〇一二年十月に公表している。他方、神奈川県は最大クラスの地震として東日本大震災以後に行った想定を基礎とした「大正型関東地震」を採用し、そのデータを基に、同じく横浜市内十八区毎の物的・人的被害及び経済被害の予測を行い、神奈川県地震被害想定調査報告書として二〇一五年三月に公表している。
 この二つの報告書を見比べてみると、例えば栄区でいえば、建物の全壊棟数が市の想定で六百七十棟に対して県の想定は四千七百四十棟、十八時に発災した場合の死傷者数は市の想定で五百十五名に対して県の想定は三千六十名、一か月後の避難者数は市の想定で四千九百六十三名に対して県の想定では四万三千百十名となっており、実に六倍から八倍の開きとなっている。
 そして両者は、横浜市内の被害想定についてこのような差異を調整することなく、それぞれに防災計画と地震防災戦略を策定し、公表している。県の地震防災戦略においては、大正型関東地震の死者数を概ね半減することを減災目標として各種行動計画を策定している一方で、市のそれにおいては、元禄型関東地震の死者数を半減することが減災目標と設定され各種行動計画が策定されている。
 さらには二〇一九年四月、改正災害救助法の施行により、内閣総理大臣は横浜市を救助実施市に指定し、これにより救助の実施主体が神奈川県から横浜市に変更されたところであるが、六分の一から八分の一の被害想定しか行っていない横浜市に救助の実施主体が変更されたことで、救助や避難に必要な物資の備蓄や供給、あるいは避難所の設置や応急仮設住宅の供与などの数量が減ってしまうのではないかとの不安が市民の一部にある。このような状況を踏まえ、以下質問する。

一 改正災害救助法による救助実施市の指定は、広域の大規模災害に際し、都道府県が救助実施市以外の市町村における救助に注力できることを狙いとしていると承知しているが、政令市が被害想定を都道府県より小さく見積もっている場合、救助実施市に指定されることで、市の防災計画や地震防災戦略に基づいて実際に行われるところの市民の救助や避難に必要となる物資の備蓄や供給、あるいは避難所の設置や応急仮設住宅の供与などの数量が減らされることはないか。法制度上の一般論として、政府として承知しているところをあきらかにされたい。
二 災害救助法第二条の三に基づき、神奈川県による連絡調整機能が働くことで、質問一で述べたような行政サイドの備えについての懸念は当たらないとしても、横浜市栄区が配布している震度分布予測マップが、区民に最大クラスの地震の可能性を周知していないこととなるなど、市民自身が自助や共助で災害に備えるにあたり、県と市で想定震度や被害想定が大きく異なることは、望ましいことではない。横浜市と神奈川県の被害想定が大きく異なる原因は、異なる過去の地震データを使用していることにある。国が防災基本計画において自治体に求めている「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震」は、知見の蓄積に応じて適時に更新されるべきで、政令市の防災計画における想定地震と道府県の地域防災計画との異同を全国的に調べたところ、多くの救助実施市で府県と調整されており、京都市、岡山市、福岡市などでは同じ地震データを採用していることも明らかになった。横浜市においても、より最新の知見であるところの神奈川県が想定する「大正型関東地震」とその地震データを採用し、地震被害想定調査をし直して、県の被害想定と整合性を持たせるべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
三 横浜市防災計画では、仮設住宅については神奈川県の配分計画に基づくこととなっていたり、神奈川県の地域防災計画においては、避難所は市町村において指定する前提で書かれており、両者の防災計画上は一定の調整が働いていることがうかがわれる。しかし横浜市防災計画では、避難所となる施設名の記載がある一方で収容定員が公開されていないため、想定している避難者数全員を収容できるかどうか、市民にはわからない。災害対策基本法第四十二条第六項において、「都道府県知事は、前項の規定により市町村地域防災計画について報告を受けたときは、都道府県防災会議の意見を聴くものとし、必要があると認めるときは、当該市町村防災会議に対し、必要な助言又は勧告をすることができる。」とある。震度や被害の想定は、地域防災計画を作成する際に基となる数値であって地域防災計画そのものではないが、この条項を根拠として、神奈川県は横浜市に対して、神奈川県が採用しているところの、最新の知見に基づく「大正型関東地震」を最大クラスの地震として採用し、地震被害想定調査をし直すことで、県と市の地域防災計画に基づく市民の災害救助上の調整、連携をより精緻なものとするとともに、地震防災戦略や区民に配布する震度分布予測マップも改定するなど必要な情報が市民に行き渡るよう、助言するべきではないかと考えるが、政府の見解を求める。また、神奈川県が助言をしない場合、国としてどのように対応するのか。
四 東日本大震災以後に行った想定を基礎とした「大正型関東地震」を採用した地震被害想定調査報告書を神奈川県が二〇一五年三月に公表した後も、横浜市がその最新の知見を採用して被害想定調査を行わない理由として、市の防災計画の期間がまだ数年残っていることや、市の財政的・人的資源などを勘案し、やむなく対応可能で現実的な震災対策を維持しているのではないかとの指摘もあるが、防災基本計画に明記した「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波を想定し、対策を推進する」上で、各自治体の財政的・人的資源上の制約による震災対策の格差はどの程度まで許容されると考えているか。また政府は、許容される格差の幅に対する基準や、自治体の震災対策に関する監査について具体的なガイドラインの策定を検討すべきではないかと考えるが、政府の見解をあきらかにされたい。

 右質問する。

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