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令和三年二月十日提出
質問第四二号

地方自治体における小中学校等の施設を提供して行われる面会交流及びDV等支援措置に基づく戸籍の附票等の写しの交付等の制限に関する質問主意書

提出者  山内康一




地方自治体における小中学校等の施設を提供して行われる面会交流及びDV等支援措置に基づく戸籍の附票等の写しの交付等の制限に関する質問主意書


 民法第七百六十六条第一項は、離婚後の子の監護者や面会交流など子の監護に必要な事項について、父母による協議で定めるとともに、その際に子の利益を最優先の考慮事項とすることを定めている。非監護親の面会交流は、子の生活関係、その健全な成長発達の面などからも重要であるとされるが、配偶者からの暴力や児童虐待等が含まれる事案では、事態が急展開などして子に重大な危害が及ぶおそれもある。実際、平成二十五年十二月二十三日には、東京都文京区の小学校で、少年野球の親善試合中に別居中の父親がやってきて、子どもと一緒に灯油をかぶり、火をつけて無理心中し子どもが死亡するという事件が発生している。平成二十九年四月には、兵庫県において、家庭裁判所で定められた面会交流中に、父親が子どもを殺害するという事件も発生している。近年、家庭裁判所においては、禁止・制限すべき特段の事由がない限り、面会交流が積極的に認められる傾向にある。子どもの面会拒否権は、中学生以上の年齢で、且つ、子ども本人が合理的な理由を述べて面会を拒否した場合のみ尊重される。子どもが幼少の場合は、子どもが別居親との面会交流を拒否し、精神的・身体的不調により面会交流を慎重にすべきという医師の診断書があっても面会交流が拒否できない例がある。婚姻中にDV(ドメスティック・バイオレンス)や児童虐待が見られる事例でも、DVや虐待の立証が困難な場合や、加害者が反省した態度を示す事案では、非監護親と子どもの面会交流が認められている。大きな事件に至らない場合であっても、DV被害者や虐待を受けた子どもが面会交流について恐怖感を抱いているケースは少なくない。面会交流にあたっては、DV被害者や子どもの安全確保を最優先に考えて対応する必要がある。
 静岡県藤枝市のウェブサイトには、令和二年十二月十七日更新の情報として、「藤枝市立小中学校における面会交流について」と題する取扱いが掲載されており、同取扱いでは、「裁判所が作成した調停調書、審判書、判決書又は両親の合意書面等により現実の面会交流が認められていない場合や子供に悪影響を及ぼす場合以外は、離婚して親権を失った親でも小中学校の施設管理権を侵害しない範囲内で可能」としている。また、同市立保育園等においても、同様の取扱いがなされている。しかしながら、DVや虐待がある場合においては、当事者間でそもそも面会交流について何も取り決めないという場合も多く、面会交流が調停調書などの明文で制限されることはまれである。また、前述のとおり、非監護親が面会交流を希望すれば、監護親や子どもの意思のみで面会交流を拒むことはできない。面会交流の実施にあたって、特に支障のない事案においては、面会交流はどこでも行える。学校や保育園を利用しないと面会交流が実施できないという事案ほど、背景にDVや児童虐待が存在していて、面会交流が円滑に行われない可能性があるが、対象となる子どもの安全のみならず、その他の児童の安全を第一に考える必要がある。
 さらに、平成十六年の住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票の写し等の交付に関する省令等の一部改正により、配偶者からの暴力、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の加害者が住民基本台帳の閲覧等の制度を不当に利用してDV等の被害者の住所を探索することを防止し、もって被害者の保護を図ることを目的として、DV等の被害者の保護のための住民基本台帳事務における支援措置(以下「DV等支援措置」という。)が可能となり、各市区町村において法令等に基づき戸籍の附票の写し等の不交付など統一的な取扱いが行われている。しかし、近時、戸籍の附票の写しの不交付決定を受けた不服審査申立てに対する令和元年六月三日付けの東京都大田区の答申(第七号)の事案にもあるように、加害者が被害者の住所を知っている場合には、DV等支援措置において保護されるべき対象には含まれないとして、地方自治体にDV等支援措置の撤回を働きかけ、被害者の戸籍の附票の写しを入手しようとする動きもある。
 以上を踏まえて、以下質問する。

一 面会交流が制限されるべき場合について
 婚姻中にDVや子どもへの虐待の申告がある場合や、子どもが面会交流を拒否している場合においては、子の最善の利益をはかるとともに、DV被害者及び子どもの安全を確保する観点から、非監護親と子どもとの面会交流を禁止、制限すべきものと考えられるが、政府の考えを明らかにされたい。
二 地方自治体における小中学校又は保育園等の施設を提供して行われる面会交流
 1 小中学校又は保育園等(以下、「小中学校等」という。)の施設を提供して行われる面会交流が実施された場合、小中学校等で子どもの連れ去り、子どものパニック、子どもに対する暴力や暴言、無理心中などの事態が生じることを予測すべきでないか、そのような場合に備えて小中学校等でどのようにして子どもの安全を確保するべきか、政府の考えを明らかにされたい。
 2 小中学校等の施設を提供して行われる面会交流にあたって、藤枝市では「子どもに悪影響を及ぼす場合以外」という要件があるが、子どもに悪影響を及ぼすか否かについては、どのような基準に基づいて、誰が判断すべきであるのか、政府の考えを明らかにされたい。
 3 一方の親から小中学校等の施設を提供して行われる面会交流の申し込みがあった場合、他方の親が拒否した場合はどのように取り扱うべきか、その場合に、学校が夫婦間(もしくは元夫婦間)の紛争に巻き込まれる可能性がないか。また、両親は同意しているが子どもが拒否している場合は、どのように取り扱うべきか、子どもの意思の確認にあたって教職員が聞き取りを行うことが適切か。以上の調整に関する教職員や保育士の負担は、教育や保育という通常業務に加えて過重な負担とならないか。以上について、政府の考えを明らかにされたい。
 4 小中学校等が、保護者でない非監護親から面会交流の希望を受けた場合、小中学校等に回答義務はあるか。回答をすること自体が個人情報保護法違反ではないか。場合によってはDVや虐待から逃れてきた被害者の安全を脅かすことにならないか。面会交流を受け付けるにあたって、戸籍謄本を確認する権限があるのか。以上について、政府の考えを明らかにされたい。
 5 運動会や授業参観など、不特定多数の者が学校敷地内への立入りが予定されている学校行事において、非監護親が自己の子である児童又は生徒を学校内から連れ出そうとする場合又は当該児童若しくは生徒が、「止めて」「嫌だ」など明確に非監護親を拒否する発言や態度を示している場合には、児童又は生徒の精神的・身体的安全を確保する観点から、非監護親と児童又は生徒とを一時的に引き離すことが重要である。このような場合に、教職員等は、学校における施設管理権を根拠として、非監護親に対し、学校敷地内からの退去を求めることができ、非監護親が退去要請に任意に応じないときは、警察署に通報することができるとすることの可否及びそのように考える理由を明らかにされたい。
三 地方自治体におけるDV等支援措置に基づく戸籍の附票等の写しの交付等の制限
 1 DV等支援措置に基づき戸籍の附票等の写しの交付、住民基本台帳の一部の写しの閲覧及び住民票等の写し等の交付等の制限をしている場合において、加害者である請求者が、秘匿した住所を興信所等を使って探り当てる事案も生じているところ、加害者である請求者が、仮に被害者の住所を知り、被害者の住所を探索するものではないとしても、市区町村においては、被害者の現在の住所を確認し、又は調査する義務はないので、これらの写しの交付等を拒否すべきとする取扱いとすることの可否及びそのように考える理由を明らかにされたい。
 2 被害者と同居している子について、加害者がその子の親権を有している場合において、加害者が市区町村に対して、その子の住所を明かさないのは親権を侵害し違法だと主張して、住民票上の住所の情報の開示を求める事案があるが、このような事案においても、子の住所を明かすことにより被害者の住所が明らかとなるため、被害者の住所を探索することと同視し、住民基本台帳法第二十条第五項で準用する同法第十二条第六項に規定する「請求が不当な目的によることが明らかであるとき」に該当し、開示を拒否する取扱いとすることの可否及びそのように考える理由を明らかにされたい。

 右質問する。

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