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令和四年六月十日提出
質問第一三六号

原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書

提出者  山崎 誠




原子力損害の賠償負担金に関する質問主意書


 賠償負担金は、原子力損害の賠償に関する法律(以下、「原賠法」という)および原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下、「支援機構」という)法に基づく電気事業法施行規則第四十五条の二十一の三(以下、「改正規則」という。)によって規定されている。
 平成二十八年十二月二十日閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針」(以下、「基本指針」という。)の二十六頁「(前略)国民全体で福島を支える観点から、福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う。」に基づき、改正規則では「(前略)原子力損害(原賠法第二条第二項の原子力損害)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、旧原子力事業者が平成二十三年三月三十一日以前に原価として算定することができなかったものを、一般送配電事業者が行う接続供給によって回収しようとするとき」の資金を「賠償負担金」としている。福島第一原子力発電所事故前に「原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金」の意味するところを含め、これらの法令等の適用、解釈、運用等を確認するため、以下質問する。

一 原子力事業者は、福島原発事故前(以下、「事故前」という。)には原賠法第六条に基づき原子力損害の損害賠償措置(備え)として、原子力損害賠償責任保険契約(以下、「責任保険」という)及び原子力損害賠償補償契約(以下、「補償契約」という)を結んでおり、それぞれ保険金及び補償金千二百億円(同第七条)を原子力損害の賠償に備えた資金としていたのではないか。また、事故前に原賠法上、賠償措置額以外に原子力損害の賠償に備えた資金は他にあったのかどうか、見解を示されたい。
二 「改正規則」にある「原子力損害の賠償に備えておくべきであった資金」とは、原賠法でいう「損害賠償措置」であり、資金とは「賠償措置額」のことを意味するのではないか。違うとすれば、何を意味しているのか、明確に示されたい。
三 支援機構は、原賠法第十六条に基づく事故後の「資金援助」のための組織である。
 1 「資金援助」は、原賠法第七条の「賠償措置額千二百億円」では足りなかった損害賠償費用の資金を援助しているのでないか。それが支援機構法第四十一条の「要賠償額から賠償措置額を控除した額を限度として、損害賠償の履行に充てるための資金」であり、損害賠償交付金額は「賠償措置額」の不足金額ではないのか。違うとすれば、その理由を明確に示されたい。
 2 改正規則の「事故前に備えておくべきであった資金」とは、賠償措置額千二百億円(補償金は千八百八十九億円)の備えでは足りなかった損害賠償交付金を意味するのではないか。違うとすれば、何に備えておくべき資金なのか、明確に示されたい。
 3 改正規則のいう原賠法上の「事故前に備えておくべきであった資金」とは、事故前に「備えておかなかった資金」あるいは「備えておけなかった資金」となる。何故、事故前に備えておかなかったのか。あるいは備えておけなかったのか。その理由を明確に示されたい。
 4 この資金を事故前に「備えておかなかった責任」は、誰が負うべきものと考えるか。例えば、政府、原子力事業者かが負うべきものではないか。見解を問う。少なくとも、需要家には、この資金を事故前に「備えておかなかった責任」はないと考えるが、見解を問う。責任があるという見解であれば、その理由を明確に示されたい。
四 令和三年十二月二十四日、当方が経済産業省(以下、「経産省」という。)より説明を受けた際、当方からの質問への回答では、改正規則にある事故前に「原子力損害の賠償のために備えておくべきであった資金(以下、「過去分」という。)」とは、全需要家の負担すべき過去分であり、資金額は三・八兆円であり、保険料及び補償料ではない、と示された。
 1 右の回答に誤りはないか。誤りがあるとすれば、明確に示されたい。
 2 「過去分」三・八兆円の資金は、原賠法上の保険金あるいは補償金なのか。原賠法とは関係ない資金であれば、いかなる法令に基づく資金なのか、明確に示されたい。
 3 「過去分」三・八兆円を全需要家が負担するということは、原子力事業者は「過去分三・八兆円」を回収することになる。では原子力事業者の負担する「過去分」の資金の金額はいくらか。「過去分」の資金の全額と合わせて、明確に示されたい。
 4 「過去分」は需要家だけが負担するものなのか。原子力事業者の負担する「過去分」は存在するのか。その理由を含めて、明確に示されたい。
 5 事故前に原子力事業者は、原賠法上及び原子力損害賠償保険契約上の負担義務を負い、「責任保険」の保険料、「補償契約」の補償料を負担していたと考えるが相違ないか。また、それら以外に負担していたものがあれば、示されたい。また、事故前に原子力事業者に原賠法上の保険料及び補償料以外に負担義務がないとすれば、事故後に原子力事業者が、過去分三・八兆円の資金を負担しなければならない理由を明確に示されたい。
五 「基本指針」二十四頁には、「交付国債の償還費用の元本分は、原子力事業者の負担金を主な原資として、支援機構の利益の国庫納付により回収される。」とある。
 1 事故後、原子力事業者は、保険料でも補償料でもない「過去分三・八兆円の資金」を支援機構への「一般負担金」として納付し負担している。この納付した過去分は、東電への交付金の返済金として、支援機構から全額国庫納付されている。何故、事故前の「過去分」が、事故後の支援機構の交付国債の返済金となっているのか、その理由を明確に示されたい。併せて、法令上の根拠を示されたい。
 2 事故前の「過去分三・八兆円」を回収する目的は、支援機構が事故後の東電への交付金分(交付国債)の借入を返済するためか。見解を問うとともに、その目的を明確に示されたい。
 3 支援機構法第三十八条は、原子力事業者は「機構の業務に要する費用に充てるため、機構に対し、負担金を納付しなければならない。」と規定している。この「一般負担金」で支援機構は、借入金の交付国債の返済を行っている。借入金の返済金は、「業務に要する費用」に当たるのか、その理由を含めて明確に示されたい。
 4 支援機構の借入金を「一般負担金」で返済するとすれば、交付国債の借入枠十三・五兆円及び東電への投資資金一兆円などの借入金の返済も「一般負担金」で行うことを意味するのか。違うとすれば、その意味を含めて明確に示されたい。
六 「基本指針」二十三頁注十二には「(前略)交付国債の発行により対応すべき費用としては、(中略)平成二十九年度予算において、支援機構に交付する交付国債の発行限度額(現行九兆円)を十三・五兆円に引き上げる。」とある。
 1 「過去分」三・八兆円とは別に、東京電力ホールディングス株式会社(以下、「東電」という)以外の原子力事業者は、東電の事故後の「確保すべき資金」として損害賠償費用資金八兆円のうち三・七兆円を支援機構への「一般負担金」で分担して負担している。東電以外の原子力事業者が東電の損害賠償費用三・七兆円の資金を分担負担しなければならない理由と法的根拠を明確に示されたい。これは原賠法第四条に定める責任の集中に反すると考えるが見解を問う。また、反しないとすれば、その理由を明確に示されたい。
 2 東電以外の原子力事業者の負担する損害賠償費用三・七兆円の「確保すべき資金」は、令和二年度からの「一般負担金」のうち、一年間でいくら支払うのか、その金額と、何年にわたって支払うのか、その期間を示されたい。
 3 「過去分三・八兆円」と東電以外の原子力事業者の負担する「損害賠償費用三・七兆円」は、意味するところは同じなのか、見解を問う。併せて、それぞれ原賠法及び支援機構法上で、どのように位置づけられているのか、明確に示されたい。
 4 原賠法上の「事故前に備えておくべきであった資金(過去分)」は、事故後には原賠法上の「備えておくべき資金(将来分)」となるのではないか。原子力事業者は、「事故前の過去分」とは別に「将来の事故の備えとして」の三・八兆円を支援機構に納付しなければならないと考えるが、見解を問う。また、納付を必要としないとすれば、その理由を明確に示されたい。
 5 将来の原子力損害事故に備えるとすれば、原賠法における賠償措置額を千二百億円から、少なくとも東電の損害賠償費用として交付している金額の八兆円に見直す必要があると考えるが見解を問う。併せて見直す必要がないとすれば、その理由を明確に示されたい。

 右質問する。

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