質問本文情報
令和六年六月十四日提出質問第一五六号
往診距離規制緩和等に関する質問主意書
提出者 緑川貴士
往診距離規制緩和等に関する質問主意書
少子高齢化や人口減少が進む我が国において在宅医療の強化が一層重要となる中、政府は令和五年十二月二十八日、在宅医療における往診、訪問診療(以下、往診等)での距離要件に関する通知「疑義解釈資料の送付について(その六十三)」を発出し、医療機関の所在地と患家の所在地との距離が半径十六キロメートルを超えている(圏外)場合で、患者から依頼を受けた当該医療機関の医師の往診等について、当該患者が圏内で受診又は相談等を行っている医療機関や医師が不在な場合や、いても対応できなかったり、連絡がつかない場合等は「絶対的な理由がある場合」として報酬の算定が認められることとなった。
一 往診では、例えば、急な発熱や呼吸状態の悪化等の患者の急変や、がん患者の看取り等、緊急の対応が求められるが、圏内の医療機関で対応できないという確認を取る際、圏内に複数の医療機関が存在している場合もあり、確認に時間を要する。患者への対応が遅れてしまう可能性があることから、より迅速に確認を取れる仕組みを考える必要があるのではないか。政府見解を求める。
二 政府は、往診等を距離で規制する理由について「患者の急変時に緊急に往診するなど適切な医療を提供するには、医療機関と患者の家の距離が近いことが望ましい」と説明するが、「半径十六キロメートル」という数字の根拠は何か。
例えば、信号機の多い都市部に対し、比較的少ない過疎地域では一定時間に移動できる距離(時間距離)は都市部より長く、物理的距離による一律な規制には疑問がある。加えて、圏内に医療機関や医師が不在であったり、存在していても往診対応ができないケースは過疎地では特に多く、このような「絶対的な理由がある場合」を確認する煩雑な作業が発生しやすい。
地理や交通事情等が考慮されないのは非合理的であり、少なくとも物理的距離で規制するのであれば、過疎地域と都市部とを区別し、過疎地域での規制距離を長くする等、見直す必要があるのではないか。政府見解、対応を問う。
三 往診を担う医療機関の負担は大きく、往診を「ボランティアのようなものだ」と話す医師もいる。特に過疎地域では、医師の高齢化や人手不足等により圏内の診療所が閉鎖になったり、圏外の医療機関でも往診対応が困難になっている所が増えている。不測時に患者の命を救う基盤を維持するために、高騰する医療資器材費、医師・看護師等の人件費等を含む支出を支える必要があり、往診の診療報酬の引上げが不可欠であると考える。政府の真摯な対応を求め、認識を問う。
四 「令和六年度診療報酬改定」において往診に関する評価が見直され、普段から訪問診療を行っている患者等以外の患者に対する緊急往診の診療報酬の大幅な引下げが行われた。かかりつけ医の機能強化や、在宅医療の質の向上をはかるための見直しである反面、かかりつけ医が常時訪問診療を行いながら急な往診にも対応することは非常に困難であり、従来これを補完する形で対応してきた往診専門機関では、同改定の下げ幅では事業を継続できないと判断して撤退した所もある。在宅医療の質の向上をはかるというが、在宅医療提供がかえって困難になる地域が増える懸念があり、逆行するものではないか。政府見解を問う。
五 在宅歯科医療においては、様々な病気の予防、全身の健康につながる口腔ケアが重要であり、歯科衛生士は高齢者施設や災害現場等でも活躍の場が広がっているが、全国歯科衛生士教育協議会によれば、令和四年度の歯科衛生士の求人倍率は二十三倍以上で、人材確保が急務となっている。待遇改善をはかる等の離職防止策に加え、歯科衛生士の資格を持つ人で実際に働いている人の割合は半分に満たず、離職者の復職支援が課題となっている。政府対応を伺う。
右質問する。