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令和七年三月二十一日提出質問第一二〇号
中国の半導体研究機関とわが国研究機関との提携に関する質問主意書
提出者 島田洋一
中国の半導体研究機関とわが国研究機関との提携に関する質問主意書
兵器や軍事転用可能な技術が、いわゆる懸念国やテロリストに渡るのを防ぐため、わが国を含む各国で「国際輸出管理レジーム」を作り、連携を強めており、そのため、日本の国際的な技術優位性を確保するためにも先端技術、軍民両用技術、機微技術の漏洩や窃取を防ぐ対策が急務である。中でも先端半導体は、極超音速ミサイルや人工知能対応兵器の開発に使われるなど軍事利用を最も警戒すべき電子部品であると考える。
そのため政府は、わが国由来の先端半導体関連技術が懸念国に軍事転用させないよう、二〇二四年七月、半導体製造装置(二十三品目)のうち一部装置の規制閾値等の見直しを行った。周辺技術に関しても、輸出に当たって国に許可を要する「輸出管理」の対象に加えていく方針とされる。併せて、懸念国からの留学生による先端半導体をはじめとする軍民両用技術の移転も防止していくとしている。
ところが、文部科学省が公表した「海外の大学との大学間交流協定(令和四年度実績)」によると、東北大学と名古屋工業大学が、中国科学院半導体研究所と提携している。同研究所は、半導体超格子微細構造国家重点実験室、集成光電子学国家重点連合実験室、表面物理国家重点実験室、国家光電子技術センター、光電子デバイス国家光学研究センター、光電子材料・デバイス重点実験室、半導体材料科学重点実験室、半導体照明研究開発センターなどの研究施設を備えた国家機関である。このうち前三者は中国政府が特に力を入れる「国家重点実験室」に位置付けられている。
二〇二三年九月、文部科学省は、大学の研究力を高めるために予算化した十兆円規模の大学ファンドにおいて、初の支援対象候補に東北大学を選んだ。同大学は、中国科学院半導体研究所との間で、学術交流協定書を結んでいる。同大学には、国際集積エレクトロニクス研究開発センター、マイクロシステム融合研究開発センター、マテリアル・イノベーション・センターなどの施設がある。同大学の深見俊輔教授らは、「STT−MRAM素子の極限微細化技術」で、「半導体・オブ・ザ・イヤー二〇二四」半導体デバイス部門で優秀賞を受賞するなど最先端の研究を行っている。
また、名古屋工業大学は、中国科学院半導体研究所との間で、学術交流協定を結び、教職員交流、共同研究、資料交換などを行っている。同大学は、シリコンカーバイドパワー半導体の高性能化につながる技術、材料の研究開発に強く、高機能の窒化物半導体パワーデバイスの研究開発も行ってきた。いずれの半導体も軍民両用技術である。
これら日本の大学と中国科学院半導体研究所との提携により、わが国の先端半導体関連技術が中国に移転され軍事転用されるリスクが高まる事態は看過できないと考える。
そこで、以下質問する。
一 政府は、中国科学院半導体研究所から東北大学および名古屋工業大学に、近年、何名の研究者、留学生が派遣されたか把握しているか。
二 政府は、東北大学から中国科学院半導体研究所に開示ないし共有された研究内容を把握しているか。
三 政府は、名古屋工業大学から中国科学院半導体研究所へ開示ないし共有された研究内容について把握しているか。
四 わが国の大学が、中国科学院半導体研究所に対し、米国商務省のエンティティリスト(貿易制限リスト)で規制されたテクノロジーの移転を行うと、米国にとって抜け穴を提供する行為とみなされ、米国による制裁の対象となりかねないと考える。政府は、その旨を各大学に周知し、指導、監督を行うべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。
右質問する。