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令和七年六月十日提出
質問第二四一号

インボイス制度の実態と今後の改善措置に関する質問主意書

提出者  八幡 愛




インボイス制度の実態と今後の改善措置に関する質問主意書


 政府は、二〇二三年一月から適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)を導入したが、制度施行から一年半が経過した現在、民間団体が実施した実態調査(本年五月に公表された一万人のインボイス実態調査。以下、「実態調査」という)において、制度に対する深刻な懸念が多く寄せられた。同調査の回答者(以下、「調査協力者」という)は、制度反対の立場からの声が多く集まった可能性があることは否定できないものの、同時に調査協力者の属性や業種、売上規模、地域分布は多様であり、制度の課題について幅広い実態が明らかになったことも看過できないと考える。
 特に、回答者の九十七・三%がインボイス制度に反対しているとの結果、価格転嫁が困難であるとの回答が八割超に及ぶとの実態、さらには所得や貯蓄の切崩し、借金による納税といった深刻な影響が明らかとなったことは、租税制度の公平性や税制の担税力原則の観点からも問題があると考える。また、自由記述欄には「死にたい」との声が五十件以上も寄せられるなど、精神的影響の深刻さも浮き彫りとなったと考える。
 こうした状況を踏まえ、政府に対し質問する。

一 価格転嫁の実態について
 1 実態調査によれば、回答者の約八割が価格転嫁が困難と答えており、そのうち四割超が納税のために所得や貯蓄を切り崩し、一割超は借金で納税しているとされる。このような状況で課税の公平性と担税力の原則が確保されていると考えるか。具体的な根拠とともに見解を示されたい。
 2 インボイス制度導入時に政府が想定していた価格転嫁率は何%であったかを示した上で、現状の価格転嫁率との差をどう分析し、是正のためにどのような対策を講じる予定かをそれぞれ示されたい。
二 公共インフラや地域経済への影響について
 1 実態調査によれば、将来不安を抱く事業者が六十五%にのぼり、運輸、建設、通信といった社会インフラ業種で廃業や転職の意向を示す事業者が約二割存在するとされる。政府はインボイス制度がこうしたインフラ業種に与える影響をどのように評価しているか、具体的に示されたい。
 2 小規模事業者の廃業や地域経済の縮小により、コミュニティの担い手が失われる影響が懸念されているが、政府としてインボイス制度が地域経済・社会に与える波及的影響をどのように把握及び分析しているか、またその結果を公表する意向があるかについて、それぞれ示されたい。
 3 地域によっては災害協定の担い手確保が困難になるとの報告もあると承知している。政府はインボイス制度の地域防災体制への影響をどのように評価しているか。
三 優越的な地位の濫用の横行について
 1 実態調査によれば、インボイス制度を契機とした取引条件の不利益変更や排除が多発している一方、不利益を被ったフリーランスから公正取引委員会への申告件数は全体の三%未満にとどまっているとされる。政府はこの申告の割合の低さについて、どのように評価するか示されたい。
 2 取引先との関係悪化を懸念して声を上げられない事業者が多数いるとの実態に鑑み、インボイス制度の公正性を担保する観点から、匿名性を担保した通報・救済制度の整備を検討する意向はあるか。ない場合は、その理由についても示されたい。
四 公的支援の利用実態について
 1 実態調査によれば、IT導入補助金や相談窓口を利用した事業者は一割未満にとどまっているとされる。この低利用率の原因について政府としてどのように分析しているか。分析結果と改善策をそれぞれ示されたい。
 2 政府は、今後、公的支援策を実際の利用者目線で設計し直す意向があるか。また、重要業績評価指標を設定した改善計画を策定する考えはあるか、それぞれ示されたい。
五 インボイス制度導入時の影響評価と再検討について
 1 インボイス制度導入に際して政府が行った影響評価の詳細な内容を可能な限り示された上で、当初想定と現実との間に乖離がある場合、その理由をどのように分析しているかそれぞれ明確にされたい。
 2 負担軽減措置を延長ないし恒久化しない場合、インボイス制度の維持による税収増額見込みと、廃業増に伴う防災の担い手不足やメンタルヘルス対策費等の社会的コスト試算を比較した費用便益分析を実施し、その結果について、負担軽減措置を廃止する前の通常国会までに公表する方針はあるか。
六 実態調査に基づく請願の扱いについて
 本年五月二十八日、民間団体であるインボイス制度を考えるフリーランスの会は、二割特例・八割控除の延長等を求める請願書を、公正取引委員会、財務省、国税庁、中小企業庁の四機関に提出したと公表している。
 請願については、日本国憲法第十六条により「何人も、損害の救済(中略)に関し、平穏に請願する権利を有」すると規定され、さらに請願法第三条第一項で「請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。」、同法第四条で、「請願書が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。」と規定されている。
 1 公正取引委員会、財務省、国税庁、中小企業庁は、それぞれ提出された請願書を同法第三条第一項に基づき正式に受理したか。
 2 請願法第四条は、誤って所管外官庁に提出された請願書について「正当な官公署」に送付する義務を定めている。四機関は、それぞれ提出された請願の所管官庁であると認識しているか。請願を所管する官庁が別に存在すると判断した場合には、どの官庁が所管と判断したか、いつ送付(又は指示)を行ったかをそれぞれ具体的に示されたい。

 右質問する。

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