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令和七年六月十一日提出
質問第二五二号

中国資本の影響による火葬・葬儀に関する質問主意書

提出者  鈴木庸介




中国資本の影響による火葬・葬儀に関する質問主意書


 全ての人は必ず死を迎える。生涯を終えた後、我が国では誰もが火葬や埋葬を避けて通ることができない。全国の火葬場の約九十七%は市区町村などの運営である。東京二十三区は異質で、全九施設中七施設を民営が占め、東京博善株式会社は六施設とシェアをほぼ独占する。東京博善はその親会社である廣済堂ホールディングスの株式構成の変遷により、実質的に中国資本の傘下に入っている。東京博善は廣済堂ホールディングスの子会社として収益を上げていたが、廣済堂の本業である印刷業の不振により経営が厳しくなり二〇一九年から二〇二二年にかけて廣済堂ホールディングスの株式を巡る動きが活発化した。当初、アメリカ系の投資ファンドや村上ファンドなどが廣済堂の株式を取得しようとしたが不成立に終わり、その後、家電免税店ラオックスグループの社長を務めた中国出身の実業家・羅怡文氏が関連会社を通じて廣済堂の株式を取得し二〇二二年一月には廣済堂の持株比率を四十%以上に引き上げ、筆頭株主となった。これにより東京博善は実質的に羅氏が率いる中国資本の傘下に入った。火葬料金は二〇二〇年までは六万円を切っていたが値上げが続き、今では九万円に達する。都と広域組合運営が運営する公営火葬場は二カ所あるが、料金は民間相場と事実上連動するため都外地域より高い四万〜六万円であり、残る一カ所は民間運営の戸田葬祭場で八万円である。厚生省(当時)の通知では、火葬場の経営主体は「原則として市町村等の地方公共団体」とする。全国の火葬場のうち九十七%が自治体などの公営で料金設定は一万〜二万円である。これに対し、人口が密集や地価の高騰で火葬場の新設が難しかった東京二十三区では、民間事業者が寺院など古くからあった火葬場を買収し、規模を拡大した経緯がある。東京博善が自社で葬儀事業に参入し、競合他社を締め出すような動きや、ウェブ広告での火葬場画像使用禁止など不公正な取引が指摘されており、中国資本の影響による変化として指摘されている。火葬場が国民生活に密接に関わる公共性の高い施設である以上、その運営主体が外国資本となることについては、前記のようないくつかの安全保障上の懸念が指摘されており、今後の動向を注意深く見守る必要がある。特に、重要インフラとしての位置付けや、データ管理、独占的経営による社会への影響については、継続的な議論と検証が求められると考える。
 これに関連して、以下質問する。

一 東京二十三区に火葬場は九カ所あり、七カ所が民営で、そのうち六カ所を運営するのが東京博善である。安倍晋三元総理、アントニオ猪木元参院議員がだびに付されたのも東京博善が運営する桐ヶ谷斎場であり、皇室と縁の深い落合斎場や代々幡斎場を運営するのも東京博善である。火葬場は故人の情報や遺族に関する個人情報を多く扱う。中国資本の傘下に入ったことで、これらの情報がどのように管理・利用されるのか、という懸念がある。日本にはいわゆる個人情報保護法があるが外国資本の企業が運営する施設において取得されたデータが国外に持ち出されたり、不適切な形で利用されたりする可能性は常に注視すべき点である。日本の重要ポストに就いた方や皇族方の個人情報が中国に流れているのではないかと非常に心配であるが、政府の見解を伺いたい。
二 全国的に見れば大半の火葬施設の運営は公的機関が担っているが、東京二十三区では六カ所を東京博善が運営する。他県の平均では火葬料金は一〜二万円程度のところもある中で東京博善では二〇二四年六月から火葬料金を九万円に設定した。東京二十三区内にある民営火葬場で、東京博善以外が運営しているのは、板橋区にある戸田葬祭場のみで二〇二二年四月から火葬料金が値上げとなったが、最上等の火葬料五万九千円、骨壷一万三千九百七十円だったところを、火葬料八万円、骨壷無料という価格に変更された。実質、約七千円の値上げと考えても、やはり東京博善の値上げ幅は大きい。地価が高騰する中で都内に新たに公的機関の火葬場を作るのは非常に厳しいと考える。生活苦の方や葬儀を簡素に行いたい方にとっては非常に苦しい料金設定であるが、これが正当な金額であるかについての政府の見解を伺いたい。
三 東京二十三区内の民間火葬場のほとんどを東京博善が運営しているという独占的な状況が、中国資本の傘下に入ったことで、さらにその影響力を強めることに対する懸念がある。東京博善が自社で葬儀事業に参入したことで、これまで共存してきた他の葬儀社との関係が悪化し、競争環境が不透明になる可能性も指摘される。葬儀のゴールデンタイムの割当てにおいて独占的にグループ会社を優遇しているという話もあり、これが進むと最終的にサービスの質や選択肢の低下につながることも考えられるが、これらについての政府の見解を伺いたい。
四 外国資本による買収は、その経営方針や意思決定プロセスが不透明になりがちであり、日本社会の慣習や公益性を軽視した経営が行われるリスクも指摘される。これらについての政府の見解を伺いたい。
五 火葬場は国民の生活に不可欠な公共性の高い施設であり、ある意味でライフラインの一部とみなすことができる。日本では、二〇一九年のいわゆる外為法改正により、外国人投資家による日本企業の株式取得において、事前届出が必要な持ち株比率が従来の十%以上から一%以上に引き下げられるなど、重要インフラ関連企業に対する外資規制が強化されている。これはサイバー攻撃や物理的な妨害など、安全保障上のリスクを低減するための措置である。現状では、火葬場がこの重要インフラの定義に明確に含まれているとは言えないため、今回の買収が直ちに法的な問題を引き起こすわけではないが、もし火葬場の運営が混乱したり、何らかの意図を持って機能不全に陥った場合、国民生活や社会秩序に大きな影響を及ぼす可能性は否定できない。これらについての政府の見解を伺いたい。
六 火葬は日本において非常に重要な葬送儀礼であり、宗教的・文化的な側面が強くある。外国資本による運営が、日本の葬送文化にどのような影響を与えるのかという点も懸念材料である。宗教的・文化的な背景が異なる資本が運営することで、日本の伝統的な葬送儀礼や慣習に対する理解が不足し、不適切な対応がなされる可能性もゼロではない。これらについての政府の見解を伺いたい。
七 災害、戦争、疫病などにより日本に大量の死者が出た場合に火葬場が機能不全になると公衆衛生上重大な事態を引き起こす。これらについての政府の見解を伺いたい。
八 一方で、中国にはいわゆる中国国防動員法があり、有事には海外在住の中国人にも国家に協力する義務がある。有事の際には中国資本が中国政府の命令によって東京二十三区の火葬場で火葬を行わなくなることも懸念されるが、当該懸念に対する政府の見解を伺いたい。
 
 右質問する。

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