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令和七年十一月六日提出質問第四八号
パワーハラスメント及びセクシュアルハラスメントに係る慰謝料等の国際比較及び制度的課題に関する質問主意書
提出者 八幡 愛
パワーハラスメント及びセクシュアルハラスメントに係る慰謝料等の国際比較及び制度的課題に関する質問主意書
我が国におけるパワーハラスメント及びセクシュアルハラスメント(以下「ハラスメント」という。)の被害者が、加害者又は使用者に対し民事上の損害賠償請求を行う場合、裁判所が認定する慰謝料等の額は、欧米諸国と比較して著しく低いとの指摘があると承知している。例えば、国内では数十万円から数百万円の範囲にとどまる事例が多いのに対し、米国では、同様の行為に対して数百万ドルから数千万ドルに及ぶ賠償命令が出されることがある。
このような差異は、懲罰的損害賠償制度の有無や、労働者保護・人権侵害に関する社会的意識の違い、立証責任の配分、被害者支援制度の整備状況など、法制度的及び文化的要因が複合的に影響していると考える。
よって、政府の見解を明らかにするため、以下質問する。
一 政府として、我が国の裁判所におけるハラスメント被害事案の慰謝料及び損害賠償の認容額の平均又は相場を、過去十年間の判例に基づいてどのように把握しているか。また、その傾向について分析しているか。
二 米国、英国、フランス、ドイツ等における同種事案の慰謝料及び損害賠償額の相場及び算定根拠について、政府が把握している統計又は国際比較を示されたい。
三 米国など懲罰的損害賠償制度(punitive damages)を導入している国々では、加害者や企業に対して高額の損害賠償が命じられることが、ハラスメント抑止に寄与しているとの指摘がある。政府は、懲罰的損害賠償制度の有無がハラスメント防止効果に与える影響について、どのように認識しているか。
四 我が国では、民法上の損害賠償は「被害回復」を目的とし、「制裁」目的の懲罰的賠償は認められていない。もっとも、ハラスメントの再発防止の観点からは、制裁的意味合いを持つ制度を導入すべきとの意見もある。政府は、我が国の法制度において懲罰的賠償又はこれに準ずる措置を導入する可能性をどのように評価しているか。
五 ハラスメント被害者が慰謝料を請求するに当たり、加害行為の存在及び精神的損害の因果関係を立証する責任が被害者側に偏っているとの批判がある。政府は、立証責任の分配に関し、被害者保護の観点からの見直しを検討しているか。
六 ハラスメントの被害者救済における慰謝料が低額である現状は、司法的救済制度全体への信頼を損なうおそれがあると考える。政府として、被害者の精神的損害をより適正に評価するため、裁判官・弁護士・労働局職員等に対する研修やガイドライン策定などの取組を行っているか。また今後どのような対策を講じる考えか。
七 諸外国におけるハラスメント救済制度のうち、我が国の制度改善に資する要素(例えば立証支援、損害算定基準、被害者支援機構等)について、政府としてどのような検討を行っているか。
右質問する。

