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令和七年十一月七日提出質問第五一号
クマ被害拡大に対する包括的対策及び共存に向けた制度設計に関する質問主意書
提出者 長友よしひろ
クマ被害拡大に対する包括的対策及び共存に向けた制度設計に関する質問主意書
近年、全国各地でクマによる人身被害や農林業被害が増加し、住宅地・市街地での出没も顕著となっている。背景には、気候変動による餌資源の変化、林業の衰退や放置林の増加、集落と里山の境界管理の脆弱化など、複合的要因があると指摘されている。さらに、狩猟を担う人材の高齢化や減少が深刻化し、被害拡大に対する即応体制の維持が困難になっている実態も見られる。クマによる今年度の死者数は既に過去最多となっており、一部の地域では、クマ被害が危機的状況に達し、自衛隊出動を求める声が知事から上がるなど、国としての危機管理対応の在り方も問われている。
十月三十日にはクマ被害対策等に関する関係閣僚会議が開催され、十一月中旬までに追加的・緊急的な対策を含む「クマ被害対策施策パッケージ」を取りまとめることとされた。緊急対策として、警察官のライフル銃による駆除や狩猟免許を持つ自治体職員(ガバメントハンター)の確保などが検討されている。クマ対策は単なる捕獲・駆除に留まらず、地域環境・生態系・住民生活の全体像を踏まえた総合的施策が求められる。
こうした状況を踏まえ、以下質問する。
一 政府は、クマ被害・出没の拡大要因をどのように体系的に分析しているか。特に、地域特性(林業構造、観光、農業、住民活動等)と環境変化(気候、餌資源、森林管理)との関連性を踏まえた「被害発生モデル」について、どのような知見を有し、今後の政策設計にどのように反映しようとしているか、それぞれ示されたい。
二 現在、自治体単位で防護柵・捕獲・駆除等が実施されているが、捕獲偏重では限界がある。政府として、「生活圏とクマ生息圏のゾーニング」「誘因物除去・防護管理」「クマ行動の科学的モニタリング」「里山再生と地域林業連携」を含む包括的政策をどのように制度化するか、その検討状況と今後の工程表をそれぞれ示されたい。
三 被害状況や地理条件、クマ種(ヒグマ・ツキノワグマ)及び個体数の状況などは地域により大きく異なる。全国一律の対応には限界がある中で、政府は「地域別クマ対策モデル(広域的・越県的な連携を含む)」の策定を支援しているか、また、自治体・地元住民・林業関係者・NPO等が協働するための制度的枠組みと財政的支援をどのように整備しているか、それぞれ示されたい。
四 狩猟免許取得者の高齢化や後継者不足により、狩猟団体である猟友会をはじめとして、被害発生時に対応できる人員が不足している地域が増えている。政府として、狩猟を担う人材の確保・育成の実態をどのように把握しており、技術習得支援、装備更新、活動報酬の確保などを含む財政支援策をどのように講じているか、それぞれ示されたい。
五 一部地域では、被害が急増し、知事から自衛隊派遣の要請があり、政府として派遣を実施する事態にまで至っている。政府として、野生動物被害が人命・生活に重大な影響を及ぼす場合における自衛隊・警察・自治体の連携体制をどのように位置づけているか。また、災害派遣や地域防災計画等の枠組みの中で、野生動物被害に対応するための法的整理・運用指針を検討しているか、それぞれ示されたい。
六 クマ対策は人身被害や農林業被害の防止だけでなく、生物多様性保全、里山再生、地域振興、観光政策と一体で推進する必要がある。政府として、クマ対策を「持続可能な地域づくり」の柱として位置づける方針はあるか、また、予算配分、研究開発、モニタリング体制をどのように再構築していくか、それぞれ示されたい。
七 被害の予測・予防を高精度化するため、AI・GIS等を活用した「出没予測・警戒システム」「誘因物マッピング」「被害データベース整備」「住民・観光客へのリアルタイム警戒情報」等の導入が期待される。政府として、これらの先端技術を用いた次世代クマ対策の開発・導入・自治体支援の方針をどのように検討していくのか、それぞれ見解を示されたい。
右質問する。

