質問本文情報
令和七年十一月二十日提出質問第八四号
スルガ銀行及びSBIアルヒの不正融資問題に関する行政横断的対応及び被害者救済の実効性確保に関する質問主意書
提出者 上村英明
スルガ銀行及びSBIアルヒの不正融資問題に関する行政横断的対応及び被害者救済の実効性確保に関する質問主意書
一 問題の背景について
スルガ銀行は、不正融資事件が平成三十年に発覚した後、金融庁から業務改善命令を受け、同命令は七年が経過した現在も解除されていない。さらに、フラット35を投資用に不正利用したSBIアルヒ問題など、同様の構造を持つ金融犯罪的行為が確認されている。
これらの事件は、通帳改ざん・書類偽造などの刑法犯に該当する可能性があるにもかかわらず、警察による実効的な捜査・逮捕は十分に行われていない。また、消費者庁は「銀行法は所管外」として被害者救済に直接関与せず、金融庁も「民民の問題」を理由に、行政的救済を講じていない。結果として、被害者は裁判・自己破産等に追い込まれ、生活の再建どころか命を絶つ者まで現れている。
令和七年六月十三日の衆議院内閣委員会では、林内閣官房長官が、関係機関が連携して早期解決に向けて取り組む旨の答弁をしたが、その後、具体的な施策は示されていない。よって、被害者救済及び行政監督の実効性確保の観点から、次の事項について政府の見解を問う。
二 質問事項
1 省庁横断的な連携体制について
ア 令和七年六月十三日の衆議院内閣委員会において、林官房長官は、関係機関が連携して早期解決に取り組む旨答弁したが、その後の関係省庁(金融庁・警察庁・消費者庁・国土交通省等)による合同会議や情報共有の実施状況を具体的に示されたい。
イ 多くの被害者が精神疾患・自殺未遂・家庭崩壊に追い込まれている現状を踏まえ、内閣官房として、金融犯罪被害者の生活再建を支援するための特別対策室やワーキングチーム設置を検討しているか。
ウ 行政の縦割りによって、被害者がどの省庁に相談してもたらい回しになる現状を是正するため、政府として、相談等を一手に引き受ける省庁横断的な「金融犯罪被害者ワンストップ窓口」を創設する考えはあるか。
2 警察庁・国家公安委員会の対応について
ア スルガ銀行事件では、通帳改ざん・文書偽造等の証拠が存在するにもかかわらず、静岡県警察が組織的な捜査を行わなかった理由を警察庁は把握しているか。また、同様の事件での都道府県警察への再捜査指示または再点検を行う考えはあるか。
イ 行員が関与するかたちで通帳改ざん・文書偽造等が行われたと金融庁が認定したスルガ銀行の事案で検挙がなされないことは、国民から見れば法の下の平等に反するように映る。警察庁として、こうした金融犯罪の検挙基準の明確化を検討する考えはあるか。
3 消費者庁及び内閣府の対応について
ア 令和七年六月十三日の衆議院内閣委員会において、鳩山内閣府副大臣が、「投資や不動産等のトラブルについて、各地の消費生活センターに寄せられる相談情報を踏まえ、継続的に注意喚起を実施しています」と答弁しているが、この答弁で言うところの「投資や不動産等のトラブル」に関する直近三年分の相談件数、相談内容並びに金融・保険サービスに係る消費生活相談及び不動産関連に係る消費生活相談に占める割合の推移を示されたい。
イ 消費者庁は「銀行法は所管外」として被害者救済に踏み込んでいないが、サブリース問題について、平成二十七年時点で苦情を把握していた金融庁に対して、消費者安全法に基づく措置要求を行わなかったのはなぜか。
ウ 消費者庁は他省庁の管轄にまたがる被害救済に対応できるよう、省庁横断型の消費者保護法制の立法を検討しているか。
4 政府全体の再発防止と制度整備について
ア 金融犯罪や組織的不正融資に関して、金融庁の監督権限と警察の捜査権限が交錯し、結果的に「誰も責任を取らない構造」が生じている。この制度的欠陥を是正するため、政府として金融犯罪特別調査委員会(仮称)の設置を検討しているか。
イ 被害者が民事裁判に頼らざるを得ない現状を踏まえ、国として被害回復基金制度(行政ADR・利息減免・再建支援等を含む)の創設を検討しているか。
三 結語
スルガ銀行及びSBIアルヒの不正融資事件は、単なる金融トラブルではなく、行政の監督不作為と連携不全が生み出した国家的失策である。「民民の問題」として放置すれば、被害を苦に命を落とす犠牲者が次々と発生し、金融システムそのものへの国民の信頼が崩壊しかねない。政府は、金融庁任せではなく、内閣府・警察庁・消費者庁等の関係省庁が一体となり、実効性ある救済と再発防止策を早急に講じるべきである。
よって、質問事項に対する政府の明確な答弁を求める。
右質問する。

