質問本文情報
令和七年十二月十日提出質問第一三五号
円借款の国内経済波及効果と財源構造に関する質問主意書
提出者 杉村慎治
円借款の国内経済波及効果と財源構造に関する質問主意書
私が第二百十七回国会で提出した質問主意書(質問第二八七号)(以下、前質問主意書という。)で指摘したとおり我が国は、開発途上国支援の一環として、国際協力機構(以下、JICAという。)を通じた有償資金協力である円借款を実施している。この円借款は、円建てで供与されることを通じ、原則、円借款の資金が、結果的に国内企業の受注によって日本国内で消化され、国内企業による調達・建設・技術供与等を通じ雇用と需要を生み出す点で、我が国経済の成長を後押しするとともに、円借款の原資となる資金は、日本銀行の信用創造による金融政策や市中銀行の信用創造により生み出される国内資金で賄われており、外貨準備を取り崩す必要がない。この特徴が、我が国の通貨安定に資してきた。
しかしながら、こうした「円建て・国内消化」という円借款の国益上の特性を裏づける制度的・統計的な説明は十分に整備されてこなかった。このため、前質問主意書で政府に明確な答弁を求めたが、政府の答弁は曖昧であった。
そこで、以下、改めて政府に質問する。
一 政府は、円借款案件の国内経済へ与える具体的波及効果を「定量的に把握することは困難」と答弁しているが、過去にJICAや財務省において国内企業を含む企業の受注状況や関連産業への波及効果を推計した例があった。
1 政府は、円借款がもたらす国内企業への受注額、雇用創出効果、関連サプライチェーンへの影響を現時点でどの程度把握しているのか。可能な限り、私を含む国民が分かるように、具体的数値を示して説明されたい。
2 1に対する答弁として、数値化は困難であると答えるのであれば、その理由を、どの部分が技術的・制度的に計測不可能なのか、明確に示されたい。
二 政府は、「円借款は国際協力の枠組みであり、国内経済への効果は主目的でない」旨答弁した。しかしながら、財投債発行で調達した資金を原資として実施されている以上、国内経済面への影響把握は円借款実施の前提条件と考える。
1 政府は、円借款事業に伴い国内に発生する経済効果について、政策評価の観点から、どのように位置づけているのか。
2 1について政策評価からの位置づけを行っていないのであれば、その理由を示されたい。
3 円借款供与に伴う日本円支出に必要な財投債の調達資金は、基本的に、日本銀行による金融政策や市中銀行の信用創造により生み出される国内資金で賄われていると認識するが、政府としてその実態をどのように認識しているか示されたい。
三 前質問主意書に対する政府答弁には、円借款を通じた日本企業の海外展開支援に関する言及はなかったが、円借款が慈善事業としてではなく我が国の外交政策として行われている以上、円借款の効果を具体的に把握することは必要であると考える。
1 日本企業の海外進出、技術移転、国際競争力強化への円借款の効果を、政府はどのように評価しているのか。政府の見解を示されたい。
2 これらを評価するために、KPI(重要業績評価指標)を設定し評価しているのであれば、その内容を示されたい。設定していないのであれば、その理由を示されたい。
四 円借款案件における国内企業の受注状況について、透明性を図るためのデータ公表は必要不可欠と考える。
1 案件ごとに、国内企業の参画状況、受注額、関連産業への波及情報を、政府が定期的に公表することが、当該案件の成功にもつながり、ひいては国益に適うと考えるが、政府の見解は如何か。
2 1について、政府の答弁が否定的である場合、その制度的要因を具体的に示されたい。
右質問する。

