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令和八年一月二十三日提出質問第三号
旧皇室典範以来の皇族の養子縁組禁止の立法趣旨に鑑みた旧宮家男系男子の養子受入れ案に関する質問主意書
提出者 たがや 亮
旧皇室典範以来の皇族の養子縁組禁止の立法趣旨に鑑みた旧宮家男系男子の養子受入れ案に関する質問主意書
昨年の首班指名選挙の前日にあたる十月二十日に自由民主党と日本維新の会が結んだ連立合意では、「古来例外なく男系継承が維持されてきたことの重みを踏まえ、現状の継承順位を変更しないことを前提とし、安定的な皇位継承のため、皇室の歴史に整合的かつ現実的である「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする」案を第一優先として、令和八年通常国会における皇室典範の改正をめざす」と記載されている。
この間、私は「国民の圧倒的多数は女性天皇容認」であることや、二〇〇五年十一月に政府が受けた有識者会議報告書で「安定的で望ましい皇位継承のための方策」として皇位継承の「女子・女系への拡大は、社会の変化の中で象徴天皇制を安定的に維持する上で、大きな意義」があるとされていることも示しながら、国民の総意に基づく天皇の地位を継承するあり方については民意を尊重していくこと、すでに二十年経った政府への有識者会議の提言を安定的な皇位継承を維持するための方策の検討の俎上に載せるべきと質問主意書で首相に問うてきた。しかし、前述の連立合意では、答弁などで「尊重する」としてきた二〇二一年十二月提出の「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議の報告書で前述「養子受入れ案」と共に提言されていた「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持すること」については、まるで検討課題から落とすような扱いにも受け取れるくらい、「男系男子養子受入れ」に連立政権が傾倒するかの印象を受ける。私は、政府が引き続き否定していない二〇〇五年十一月有識者会議報告書の皇位継承の「女子・女系への拡大」こそ、現状の皇室が置かれた状況、女性皇族の方々の御年齢等に照らして喫緊の課題であり、それに合わせて「旧宮家からの男系男子養子受入れ」よりも「女性皇族の婚姻後の皇籍維持」の課題の方こそ優先されるべきだと考える。それは、これ以上長期にわたり「女子・女系への皇位継承拡大」が遅らせられるならば、事実上、これが不可能となるのは明白だからだ。
これに鑑みるなら、自民党と維新の連立合意は「男系男子継承」に拘泥するあまり、実際は一般国民である旧宮家から「血筋」だけを根拠に養子受入れをして人為的に皇位継承者を維持しようとするものにしか見えない。これは、かえって現在我が国が直面している少子化社会の現実の下で生じている皇統維持の危機を解決するどころか、皇位継承対象者の確保難を深刻化させ最終的には途絶えさせることにつながりかねないものである。まして、現在の憲法と社会規範、社会構造から考えた場合、「旧宮家男系男子の養子受入れ」は一部、昨年までの「全体会議」での議論でも明らかになったように、様々な問題点があり、特に憲法第十四条の「社会的身分・門地による差別禁止」「貴族制度・特権の否定」などの平等規定に抵触する可能性が高いものと考える。また、そもそも旧皇室典範から皇族が養子を受け入れることは禁止されており、現皇室典範もその規定を受け継いでいるが、その立法趣旨の検討は有識者会議の報告書を見る限りされている形跡がない。皇統、皇位継承にとって、養子縁組の禁止がいかなる意義があったのか、しっかりと検討がなされるべきであるし、その上で疑義が残るものなら仕組みとして採用されるべきではない。以上の立場から、質問する。
一 「旧宮家の男系男子の養子受入れ」を検討するといっても、対象者が存在しなければ、無意味である。対象者は存在するのか。また、そうした人々は皇族となる意思はあるのか。よく全体会議などで「旧十一宮家の男系男子」という言葉も出たが、旧宮家には事実上、断絶しているところもある。どの旧宮家が男系男子の養子受入れに応ずるべきところと考えているのか。
二 旧皇室典範が皇族の養子縁組を禁じた趣旨について伊藤博文名義になる「皇室典範義解」では「宗系紊乱の門を塞ぐ」、すなわち皇統が混乱する入口を塞ぐとして、養子は人為(意思)で親子関係を作る制度である以上、皇位継承という出来るだけ人為の入り込まない枠組みを維持したい領域に持ち込むことは政治的思惑、家同士の争いなどを反映して継承順位や皇統の正当性に争いが生じる原因となること、「君臣の別」を明確にし、皇族身分を当事者の私的判断で増減させないことを挙げている。これが立法趣旨で、現皇室典範にも引き継がれたものと思われるが、これに照らすなら今日提起されている「旧宮家男系男子の養子受入れ」も、皇室制度維持には望ましくないのではないか。
三 昨年までの「全体会議」での議論の中で、「旧宮家男系男子の養子受入れ」については「憲法上の問題(第十四条一項など)をクリアにする必要がある」と論点に示されると共に、いわゆる憲法第十四条の「平等」規定に抵触するかどうかについては、内閣法制局が憲法適合性について許容的な答弁をしつつ、衆参両院の法制局が「許容論も違反論も両論が成り立ち得る」との趣旨の答弁をするという事態になっている。
つまり、後者の立場に立つなら旧十一宮家の子孫の皇籍復帰を想定する皇室典範改正は、憲法第十四条二項に抵触し得るということだが、この憲法規定の抵触問題について、いかなる見解を持っているか。
四 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議の報告書では、旧宮家について「皇籍離脱後、長年一般国民として過ごしてきた」「現在の皇室との男系血縁が遠い」とし、ここから男系男子を養子受入れすることについて「国民の理解と支持を得るのは難しいという意見もある」と明記している。象徴天皇制は憲法上「国民の総意に基づく」ものであることから、国民の理解と支持が難しい制度変更は国民感情の面を含めて政治的に極めて不安定なものとならざるを得ないのではないか。
五 「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議の報告書は、本来標記「附帯決議」が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」について検討し結果を報告することが求められていたのに、「皇族数の確保」を目途とし「悠仁親王までの皇位継承順位はゆるがせにしない」としつつ「女性皇族の婚姻後の皇籍維持」「皇統に属する男系男子の養子受入れ」を課題として提案した。しかしながら、これを受けての国会外で行われた「全体会議」では、「養子受入れ」についてこれが「男系男子の皇位継承者」を確保する策であるかのような扱いに変わってきていた。そして、前述のように自民・維新の連立合意では女性皇族の問題よりもこちらを優先するという取決めをしている。これは二〇〇五年十一月の有識者会議報告書で提案された「女系・女性天皇容認」「直系長子優先」の皇位継承への移行をただただ男系継承に固執して先送りする姿勢を示すものなのではないか。
右質問する。

