答弁本文情報
平成十三年二月十三日受領答弁第六六号
内閣衆質一五〇第六六号
平成十三年二月十三日
衆議院議長 綿貫民輔 殿
衆議院議員保坂展人君提出スティーブンスジョンソン症候群に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員保坂展人君提出スティーブンスジョンソン症候群に関する質問に対する答弁書
一の(1)について
スティーブンス・ジョンソン症候群は、皮膚粘膜眼症候群とも呼ばれ、発熱、関節痛等の症状とともに、多形滲出性紅斑様皮疹が急激に全身に生じ、口腔、眼、外陰等の粘膜にも広範なびらんが発生する疾病であり、多形滲出性紅斑の重症型と考えられている。また、マイコプラズマ肺炎、腎炎等をしばしば合併する。
スティーブンス・ジョンソン症候群は、大正十一年にアメリカ合衆国において初めて報告されたものであるが、我が国の医療従事者に認知された時期は不明である。
医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(以下「機構」という。)が医薬品の安全性に関する情報等をインターネットにより医師等に提供する医薬品情報提供システム(以下「医薬品情報提供システム」という。)に掲載されている医療用医薬品の添付文書のうち、スティーブンス・ジョンソン症候群又は皮膚粘膜眼症候群に関する記載があるものは、本年一月三十一日の時点において千百七十五枚である。
なお、スティーブンス・ジョンソン症候群の発症の機序がいまだ明らかになっていないこと、同症候群を発症した患者には複数の医薬品が併用されている場合が多いこと等から、同症候群を生じる医薬品が何種類あるかを示すこと及びその代表的な医薬品の名称等を示すことは困難である。
薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号)第七十七条の四の二(平成九年三月三十一日までは、同法第六十九条第一項)の規定に基づき医薬品の製造業者等が厚生労働大臣に行う報告(以下「製造業者等報告」という。)及び「医薬品等安全性情報報告制度への御協力について(お願い)」(平成九年五月十五日付け薬発第六百三十三号厚生省薬務局長通知)等に基づき医療機関が厚生労働大臣に行う報告(以下「医療機関報告」という。)によれば、平成六年度以降のスティーブンス・ジョンソン症候群及び同症候群と類似の皮膚障害である中毒性表皮壊死症の症例報告の件数は、別表第一のとおりである。
なお、現在、平成五年度以前の製造業者等報告及び医療機関報告は保存していない。
製造業者等報告及び医療機関報告によれば、平成十一年度におけるスティーブンス・ジョンソン症候群の性別及び年齢別の症例報告の件数は、別表第二のとおりである。
なお、患者の所在地別の件数は把握していない。
スティーブンス・ジョンソン症候群を含め、医療用医薬品による副作用が疑われる症例報告に関する情報は、医薬品情報提供システムにより広く提供しており、現在、製造業者等報告については平成十一年七月二十六日から平成十二年三月三十一日までの間に、医療機関報告については平成十年四月一日から平成十二年三月三十一日までの間に報告があったものを掲載している。
なお、医薬品情報提供システムにおいては、平成十一年五月の情報提供開始以来、最新の情報を掲載することに重点を置いており、現時点において、これらの症例報告に関する情報を更に過去にさかのぼって掲載する予定はない。
一般用医薬品である風邪薬及び解熱鎮痛薬について、まれではあるが、アナフィラキシー様ショック、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症等の重篤な副作用が生じたとの症例報告があったことを踏まえ、「医薬品の使用上の注意事項の変更等について」(平成七年九月二十一日付け薬安第八十八号厚生省薬務局安全課長通知)を発出し、添付文書中の使用上の注意の記載を変更するとともに、一般用医薬品を購入し、又は使用する者に対して、薬局等の店頭においてこれらの医薬品の使用上の注意を伝え、服薬指導等を徹底するよう、医薬品製造業者等に対して注意喚起を行った。
さらに、「かぜ薬等の添付文書等に記載する使用上の注意について」(平成十一年九月三十日付け医薬審第千五百十四号厚生省医薬安全局審査管理課長通知・医薬安第百十五号同局安全対策課長通知。以下「平成十一年九月三十日通知」という。)において、一般用医薬品である風邪薬及び解熱鎮痛薬について、添付文書の使用上の注意の中でスティーブンス・ジョンソン症候群の別名である「皮膚粘膜眼症候群」を明記するよう通知したが、その後、より分かりやすい表現にするため、「一般用医薬品(かぜ薬、解熱鎮痛薬)の使用上の注意事項の変更等について」(平成十二年十二月四日付け医薬安第百五十五号厚生省医薬安全局安全対策課長通知。以下「平成十二年十二月四日通知」という。)において、「皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)」と明記するよう通知したところである。
また、これらの添付文書中の記載については、医薬品製造業者等としての責任に基づき措置することとしており、政府として特段の予算的措置を講じてはいないが、今後ともスティーブンス・ジョンソン症候群に関する情報提供の充実に努めてまいりたい。
なお、スティーブンス・ジョンソン症候群に係る国民一般の認知状況を示すデータ及び個々の市販の風邪薬の添付文書中に同症候群に関する記載又はこれに関する記載が行われるようになった時期は把握していない。
現在、義務教育諸学校で使用されている教科書においては、スティーブンス・ジョンソン症候群について記述している事例はない。
教科書以外の教材については、どのような教材を使用するかが各市町村(特別区を含む。以下同じ。)の教育委員会の権限とされており、文部科学省においてはスティーブンス・ジョンソン症候群の記述の有無を把握していない。
また、文部科学省で作成し、かつ、配布している養護教諭を含む教員用の指導資料においては、スティーブンス・ジョンソン症候群について記述したものはない。
スティーブンス・ジョンソン症候群の発症の機序がいまだ明らかになっていないことから、その有効な予防策も明らかではない。また、ウイルス、細菌等によって発疹が発現する場合もあること等から、スティーブンス・ジョンソン症候群の発症の可能性を完全に排除することは困難である。
なお、一般的には、薬疹が発現した場合、原因薬剤を特定し、その使用を中止することが薬疹の重症化を防ぐために必要とされており、原因薬剤を特定するための試験として、薬剤の貼付試験又はリンパ球刺激試験が行われることが少なくないが、これらの試験を行った場合も、常に原因薬剤を特定できるとは限らない。
患者のり患している疾患が特定され、かつ、その疾患の治療方法が確立されている場合は、その確立された治療方法に基づいた治療が行われるが、患者のり患している疾患が特定されない場合又はその疾患の治療方法が確立されていない場合は、一般に、医師は症状の緩和を目的とした対症療法を行うこととなる。
対症療法においては、医師は個々の患者の症状に対応した治療を行うこととなり、各患者の症状は様々であることから、医療機関のスティーブンス・ジョンソン症候群に関する認識の違いが治療方法に及ぼす影響について述べることは困難である。
なお、一般に、スティーブンス・ジョンソン症候群にはステロイド投与が行われることが多いが、原因不明の重度の滲出性紅斑にもステロイド投与が行われることが多いため、ステロイド投与の有無についても医療機関における同症候群に関する認識の違いによる特段の差異はないものと考えられる。
スティーブンス・ジョンソン症候群については、少なくとも昭和六十年以降の医師国家試験出題基準の中で皮膚・頭頸部疾患の一つとして明記されているが、各大学の医学部においては、このことも踏まえた上で自主的に教育内容が決定されているものと考えられる。また、厚生労働省において収集した医薬品、医療用具等に係る副作用、不具合等に関する情報は、「医薬品・医療用具等安全性情報」等を通じて広く医療関係者等に提供しており、スティーブンス・ジョンソン症候群に関する情報も、昭和六十年六月の「医薬品副作用情報」及び平成十二年十一月の「医薬品・医療用具等安全性情報」に掲載したところである。
スティーブンス・ジョンソン症候群の初期症状等を知っている者であれば、当該症状が発現した際に本人の判断で医療機関に早期に受診し、治療を受けることが期待できると考えられる。
スティーブンス・ジョンソン症候群の重症例では、結膜の瘢痕化、涙嚢開口部の閉塞によるドライアイ、角膜上への結膜侵入等により、後遺症として高度の視力障害を生じることがある。その治療方法としては、人工涙液を点眼しつつ、ステロイド点眼を行うことが一般的である。
スティーブンス・ジョンソン症候群は、電解質補正、栄養補給等の全身管理を行うこと及び状況に応じてステロイド投与を行うことによって、多くの場合は治癒するが、角膜等に障害が残ったり、場合によっては死亡に至ることもある。
平成十二年度から厚生科学研究費補助金ヒトゲノム・再生医療等研究事業において、スティーブンス・ジョンソン症候群等の難治性角膜疾患に対し羊膜移植が有効であるとして、羊膜培養法等の研究を推進している。
また、近年注目されるスティーブンス・ジョンソン症候群の治療方法について、平成十二年十二月にアメリカ合衆国、スウェーデン、ドイツ及びフランスの各国に所在する日本国大使館を通じて各国政府に対して照会し、本年一月三十一日現在、アメリカ合衆国、スウェーデン及びフランスから回答を得ているところであるが、これらの回答の中には、現在我が国で行われている治療方法以外の治療方法に関する情報は含まれていない。
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成九年厚生省令第二十八号)において別表第三のような規定を設けているところであり、治験を依頼する医薬品製造業者等から治験を実施する医療機関等に対して、必要に応じてスティーブンス・ジョンソン症候群の発症の危険性に関する情報の提供が行われているものと承知している。
また、薬事法第八十条の二第六項は、治験依頼者が被験薬の副作用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生等を知ったときは、その旨を厚生労働大臣に報告しなければならない旨を規定しており、同項に基づき平成十年から平成十二年までの三年間にあったスティーブンス・ジョンソン症候群の症例報告は、二件である。
製造業者等報告及び医療機関報告によれば、日本レダリー社製抗生物質製剤コスモシン(以下「コスモシン」という。)が販売された昭和六十二年から平成七年までの九年間に症例報告のあったコスモシン投与患者に係るスティーブンス・ジョンソン症候群の件数は合計七十二件、中毒性表皮壊死症の件数は合計三十五件である。
コスモシンの製造業者に対して行ったスティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症に関する主な行政指導は、別表第四のとおりである。
コスモシンの製造業者が行政指導に基づき平成四年八月から平成五年七月までの間及び平成五年九月から平成六年八月までの間に実施した重篤な皮膚障害の発現状況に関する調査によれば、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症の合計で、それぞれ十症例及び十一症例が把握されたが、この調査結果は特に公表していない。
さらに、コスモシンの副作用により健康被害を受けた者等については、その健康被害の程度に応じて、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法(昭和五十四年法律第五十五号。以下「機構法」という。)第二十八条第一項各号に規定する給付(以下「救済給付」という。)の対象となるが、コスモシンの製造業者から厚生労働省に対する症例報告はプライバシーの保護の観点から個人を特定しては行われないことから、当該症例報告に係る患者等が実際に救済給付を受けているかどうかは確認できない。
原因が不明であって、治療方法が未確立であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾患のうち、希少性等を有するために全国規模で研究を行わなければ原因の究明及び治療方法の確立が進まないものについては、特定疾患対策研究事業として病因、病態等の研究を進めており、その対象疾患の選定は、学識経験者から成り、定期的に開催される特定疾患対策懇談会の意見に基づいて、厚生労働省において行われる。
また、特定疾患対策研究事業の対象となっている疾患のうち、診断基準が一応確立したものであって、難治度及び重症度が高く、かつ、患者数が少ないため、医療費について一定の公費負担を行わないと原因の究明、治療方法の開発等に困難を来すおそれのあるものについては、特定疾患治療研究事業において、医療保険給付等に係る自己負担分の全部又は一部を公費により負担しているところであり、その対象疾患の選定も、特定疾患対策懇談会の意見に基づいて、厚生労働省において行われる。
スティーブンス・ジョンソン症候群をこれらの事業の対象疾患とするか否かについても、特定疾患対策懇談会の意見等を踏まえて、厚生労働省において慎重に検討してまいりたい。
なお、小児慢性特定疾患治療研究事業においては、スティーブンス・ジョンソン症候群が児童の健全育成を阻害するおそれのある疾患であること等から、その対象疾患とされており、医療保険給付等に係る自己負担分の全部を公費により負担しているところである。
救済給付が支給されるためには、医薬品が適正な目的で適正に使用されたにもかかわらず、使用した医薬品の副作用によって、入院を要すると認められる程度の治療が必要な状態にあること、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法施行令(昭和五十四年政令第二百六十八号。以下「機構法施行令」という。)別表に定める程度の障害の状態にあること等一定程度以上の健康被害が生じたことが必要であることから、これらの要件の充足が確認されない場合には、救済給付の支給は困難である。
機構法に基づく救済給付に関する制度(以下「救済制度」という。)の周知は重要な事柄であると認識しており、全国厚生労働関係部局長会議等において各都道府県等から医療機関に対する周知をお願いするとともに、救済制度の実施主体である機構において医療機関、行政機関、医療関係団体等へのパンフレットの送付、医療関係雑誌等への広報の掲載及び機構のホームページでの制度内容の詳細な紹介を行う等、救済制度の周知に努めてきたところである。また、平成十二年十一月以降は「医薬品・医療用具等安全性情報」においても救済制度の紹介を行うこととしたところであり、今後とも救済制度の一層の周知を図ってまいりたい。
広範囲の角膜輪部機能不全を伴っているスティーブンス・ジョンソン症候群の症例においては、通常の角膜移植のみを行っても、免疫学的反応のために拒絶されてしまうことから、現在、確立された治療方法はない。
また、保険医療機関における角膜移植に係る療養に関しては、角膜移植術(二十万六千円)、角膜の材料(九万円)、入院料等の費用が必要となり、医療保険各法の規定に基づき患者はその費用のうち一部を負担することとなるが、患者の負担が一定額を超えた場合には、高額療養費が支給される。
救済給付については、機構法第二十八条第一項の規定により、救済給付を受けようとする者(以下「請求者」という。)の請求に基づき、機構が支給を決定することとされている。救済給付の請求に際しては、使用した医薬品の副作用によって一定程度以上の健康被害が生じたことを確認するための書類の提出が必要とされているが、請求者に対して副作用による疾病とその原因とみられる医薬品との間の厳密な意味での因果関係の証明まで求めているものではなく、最終的には、請求者が提出した書類等に基づき、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて厚生労働大臣が医学的薬学的判定を行い、その判定結果に基づき機構が支給又は不支給の決定を行っているところである。
医薬品は、一般に有効性とともに副作用を伴うことが不可避であるため、副作用が生じた場合にもその製造業者等に対して民事責任を問うことが困難な場合が多く、予期せぬ副作用による深刻な健康被害を受けた者に対しては、社会的に何らかの救済策を講ずることが必要と考えられる。このため、民事上の損害賠償制度とは別に、すべての医薬品製造業者等からの拠出により医薬品の副作用による一定程度以上の健康被害について定型的な給付を行う救済制度が設けられているところであるが、この制度は、医薬品の副作用による健康被害を受けた者(以下「副作用被害者」という。)の簡易迅速な救済を図ることを目的として設けられたものであり、副作用被害者が被った損害のすべてを補填することを目的とするものではない。
なお、副作用被害者は、医薬品製造業者等の民事責任が認められる場合には製造物責任法(平成六年法律第八十五号)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)に基づく損害賠償請求を行うことが可能であり、また、国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)に基づく障害基礎年金(以下「障害基礎年金」という。)、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)に基づく保護(以下「保護」という。)等の各制度においても、それぞれの要件を満たす場合には、給付が受けられるものである。
救済制度は、五の(7)及び(8)についてで述べたとおり、医薬品の副作用による一定程度以上の健康被害について定型的な給付を行うことにより、簡易迅速な救済を図ることを目的として設けられた制度である。機構法第二十八条第一項に規定する障害年金又は障害児養育年金(以下「障害年金等」という。)の支給に当たっては、機構法施行令別表に定める障害の状態にあることが必要とされており、同表には障害を有する者に対する給付の基準となる障害基礎年金の障害等級と同様のものが定められているところである。したがって、矯正後の両眼の視力の和が〇・〇八以下でなければ、同表に定める他の障害の状態にある場合を除き、障害年金等を支給することは困難であると考えている。
救済制度は、将来発生し得る医薬品の副作用による健康被害に備えて、医薬品製造業者等が共同して拠出し、発生した健康被害の簡易迅速な救済を図るという一種の保険原理に基づく制度である。このため、救済制度は、機構法附則第一条第二項に基づき、昭和五十五年五月一日以後に使用された医薬品が原因となって同日以後に医薬品の副作用による疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した者に適用することとされており、同日前に使用された医薬品が原因となって疾病にかかり、障害の状態となり、又は死亡した者(以下「適用日前被害者」という。)に対して救済制度を適用することは、救済制度の趣旨に照らし困難である。
なお、適用日前被害者も、障害基礎年金、保護等の各制度においては、それぞれの要件を満たす場合には、給付が受けられるものである。
当初副作用被害者又はその者を養育する者が医薬品の副作用による健康被害であるとの認識を持っていなかった場合においても、その後当該健康被害が重症化し、機構法施行令別表に定める障害の状態に該当するに至った場合は、その時点で機構法第二十八条第一項の規定に基づく請求を行うことにより、当該請求のあった日の属する月の翌月から障害年金等の支給を受けることが可能である。
請求者に治療を行った医師のカルテは、請求者がスティーブンス・ジョンソン症候群であること及び入院を要すると認められる程度の医療を受けたことを証する書類として有効と考えられるが、当該カルテのみでは請求者に対してどのような医薬品がどのような形で使用されたかを確認することができないため、救済給付の前提となる厚生労働大臣の医学的薬学的判定に当たっては、当該カルテに加えて、同症候群の原因とみられる医薬品の投与を行った医師の投薬証明書等の書類が必要とされているところである。
ライオン社製解熱鎮痛薬バファリンについて、平成六年度から平成十一年度までの六年間に症例報告のあったスティーブンス・ジョンソン症候群の件数は、製造業者等報告及び医療機関報告ともに三件であった。なお、御指摘のような製薬会社の説明があったか否かについては承知していない。
御指摘のような事実関係の有無については承知していない。仮に医薬品製造業者が自らが製造する医薬品の副作用によるものと疑われる疾病等の発生を知りながら、厚生労働大臣に報告しなかったことがあったとすれば、薬事法第七十七条の四の二に違反するものである。
医薬品の添付文書又はその容器若しくは被包に記載する事項(以下「記載事項」という。)は、医療従事者又は医薬品を購入し若しくは使用する者による医薬品の適正な使用を図るためのものである。このような記載事項の目的にかんがみれば、救済制度に関する記載を義務付けることは困難であるが、救済制度の対象となる程度の医薬品の副作用による健康被害が生じた場合には、医療機関において治療を受けると考えられるため、医療機関から患者に対して救済制度に関する情報提供が行われるよう、医療機関に対する救済制度の周知に努めているところである。さらに、個々の患者に対しても、薬と健康の週間等の機会に市町村の広報等を通じた救済制度の紹介を図るとともに、機構に設置されている消費者くすり相談室において広く医薬品の副作用に関する相談に応じているところであり、こうした各般の活動を通じて、国民への救済制度の普及を図ってまいりたい。
医薬品製造業者等は、有効性及び安全性の高い医薬品の開発、市販後の情報の収集及び提供による迅速な安全対策の実施、健康被害が生じた場合の製造物責任法等に基づく損害賠償等の責任を有しており、これらを適正に実施することにより、社会的責任を果たしていくことが必要である。
なお、五の(7)及び(8)についてで述べたとおり、救済制度は、すべての医薬品製造業者等からの拠出により医薬品の副作用による一定程度以上の健康被害について定型的な給付を行うことにより、簡易迅速な救済を図ることを目的として設けられているものであり、救済制度の対象とならない場合に、医薬品製造業者等が医薬品に係る健康被害にどのように対応するかは、医薬品製造業者等の判断にゆだねられるべきものであり、また、医薬品製造業者等の民事責任が認められる可能性も否定されない。
スティーブンス・ジョンソン症候群の患者に対する治療内容及び治療費又は生活費の保障について、平成十二年十二月にアメリカ合衆国、スウェーデン、ドイツ及びフランスの各国に所在する日本国大使館を通じて各国政府に対して照会し、本年一月三十一日現在、アメリカ合衆国、スウェーデン及びフランスから別表第五のような回答を得ているところである。
なお、当該回答による限りでは、我が国の救済制度は、これらの国と比較して、同等以上のものであると考えられ、現時点で新たに検討すべき事項は見られなかった。
二の(1)及び(3)から(5)までについてで述べたとおり、平成十一年九月三十日通知及び平成十二年十二月四日通知により、一般用医薬品である風邪薬及び解熱鎮痛薬の使用上の注意の中で「皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)」と明記するよう通知したところである。
また、厚生省の要請に基づき、社団法人日本薬剤師会は平成十三年一月一日発行の「日本薬剤師会雑誌」第五十三巻第一号にスティーブンス・ジョンソン症候群等に関する記事を掲載するとともに、日本大衆薬工業協会は薬局等で掲示するためのポスターを作成し、また、風邪薬又は解熱鎮痛薬の購入者に対するお知らせのための様式を示すことにより、同症候群に関する情報提供の充実に努めているところである。
厚生労働省においては、薬事法第七十七条の三第一項に基づき医薬品製造業者等に対してスティーブンス・ジョンソン症候群に係る副作用情報等の提供を行わせるとともに、「医薬品・医療用具等安全性情報」への関係記事の掲載及び機構のホームページを通じた関連情報の提供並びに救済制度及び小児慢性特定疾患治療研究事業の実施に努めてきたところである。
スティーブンス・ジョンソン症候群に関しては、引き続き医薬関係者、医薬品の使用者である国民等に対する情報提供の充実を図るとともに、救済制度を始めとする各制度の適切な運営に努めてまいりたい。
製造業者等報告及び医療機関報告を通じて収集される情報の活用等により、引き続きスティーブンス・ジョンソン症候群に関する実態の把握に努めてまいりたい。
別表第一
年度 | スティーブンス・ジョンソン症候群 | 中毒性表皮壊死症 |
平成六年度 | 八十九件 | 六十三件 |
平成七年度 | 百四十五件 | 七十六件 |
平成八年度 | 百八十三件 | 八十一件 |
平成九年度 | 百八十四件 | 七十七件 |
平成十年度 | 二百三十一件 | 八十九件 |
平成十一年度 | 百九十九件 | 百二件 |
別表第二
患者の年齢 | 零歳から二十歳まで | 二十一歳から四十歳まで | 四十一歳から六十歳まで | 六十一歳以上 | 不明 | 計 |
男性 | 二十一件 | 二十六件 | 十九件 | 二十一件 | 一件 | 八十八件 |
女性 | 二十二件 | 三十七件 | 二十一件 | 三十一件 | 百十一件 |
別表第三
条項 | 規定の趣旨 |
第十条 | 治験の依頼をしようとする者は、あらかじめ、被験薬の安全性等に関する必要な情報に基づき作成された治験薬概要書等を治験実施医療機関の長に提出しなければならない。 |
第二十条第一項 | 治験依頼者は、被験薬の品質、有効性及び安全性に関する事項その他の治験を適正に行うために必要な情報を収集し、検討するとともに、治験実施医療機関の長に提供しなければならない。 |
第二十条第二項 | 治験依頼者は、被験薬の副作用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生等を知ったときは、直ちにその旨を治験実施医療機関において治験に係る業務を統括する医師又は歯科医師(以下「治験責任医師」という。)及び治験実施医療機関の長に通知しなければならない。 |
第五十一条第一項第五号 | 治験責任医師等は、治験薬を投与される者に対して、予測される不利益について記載した説明文書を交付しなければならない。 |
別表第四
文書名 | コスモシンに関する指導内容 |
「医薬品の使用上の注意事項の変更について」(平成元年十一月十日付け薬安第百八十四号厚生省薬務局安全課長通知) | 使用上の注意の副作用の項に、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症を追記すること。 |
「医薬品の使用上の注意事項の変更等について」(平成四年八月六日付け薬安第九十二号厚生省薬務局安全課長通知) | 使用上の注意の一般的注意の項に、スティーブンス・ジョンソン症候群及び中毒性表皮壊死症が現れることがあること及び投与中止後に症状が現れることがあるので投与後も十分注意する必要があることを追記すること。また、平成四年八月以降の一年間にコスモシンを投与した全症例についての重篤な皮膚障害の発現状況並びにコスモシンの月別の出荷数量及び納入医療機関数に関する調査を実施すること。 |
「医薬品の副作用調査について」(平成五年九月二日付け薬安第八十号厚生省薬務局安全課長通知) | 平成五年九月以降の一年間にコスモシンを投与した全症例についての重篤な皮膚障害等の発現状況並びにコスモシンの月別の出荷数量及び納入医療機関数に関する調査を実施すること。 |
「医薬品の使用上の注意事項の変更について」(平成六年四月十五日付け薬安第二十七号厚生省薬務局安全課長通知) | 使用上の注意に警告の項を新設し、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症等の重篤な副作用が現れることがあるので、他剤が無効の場合にのみ投与を考慮する旨を記載すること。また、禁忌の項に本剤の成分又はセフェム系抗生物質に対し過敏症の既往歴のある患者を追記すること。 |
別表第五
調査国 | 回答内容 |
アメリカ合衆国 | 連邦政府においては、医薬品により生じる健康被害であること又はスティーブンス・ジョンソン症候群であることに着目した給付等は行っていないが、民事責任が認められる場合には、個別の企業において副作用被害者に対する補償がなされている。(注) |
スウェーデン | 医薬品を製造し、又は輸入しているすべての企業が加入する民間保険により、副作用被害者に対して健康被害の程度等に応じて補償が行われており、政府において、スティーブンス・ジョンソン症候群であることに着目した給付等は行っていない。 スティーブンス・ジョンソン症候群の治療としては、初期でやむを得ない場合にはコルチコステロイドが処方されるが、回復期においては適切な食事を摂り、安静にしていること等が推奨されている。 |
フランス | 政府においては、医薬品により生じる健康被害であること又はスティーブンス・ジョンソン症候群であることに着目した給付等は行っていないが、個別の企業において副作用被害者に対して示談に基づき補償が行われた事例はある。 スティーブンス・ジョンソン症候群の治療については、症状に対応した処置が行われており、有効性は立証されていないが、免疫グロブリンの大量投与によって同症候群の進行を抑えることができたという事例もある。 |