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平成十三年八月三日受領
答弁第一一〇号

  内閣衆質一五一第一一〇号
  平成十三年八月三日
内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 綿貫民輔 殿

衆議院議員首藤信彦君提出核燃料輸送問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。





衆議院議員首藤信彦君提出核燃料輸送問題に関する質問に対する答弁書



一について

 核燃料物質運搬中の事故については、「原子力施設等の防災対策について」(昭和五十五年六月三十日原子力安全委員会決定)において、「万一原子力緊急事態に至ることを想定したとしても、事故の際に対応すべき範囲が極めて狭い範囲に限定されること、輸送が行われる都度に経路が特定され、原子力施設のように事故発生場所があらかじめ特定されないこと等の輸送の特殊性を鑑みれば、原子力事業者と国が主体的に防災対策を行うことが実効的であると考えられる」とされている。
 核燃料物質運搬中の事故が原子力災害対策特別措置法施行令(平成十二年政令第百九十五号)第四条第四項に定める事象である場合には、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十条第一項の規定により、原子力事業者は、直ちに、主務大臣(経済産業大臣又は文部科学大臣及び国土交通大臣。以下同じ。)並びに当該事故が発生した場所を管轄する都道府県知事及び市町村長に通報しなければならないこととされており、通報を受けた主務大臣は、関係省庁事故対策連絡会議の開催、国の職員及びあらかじめ登録された専門家の現地派遣等を行うこととしている。
 また、当該事故が同法第二条第二号の原子力緊急事態に当たる場合には、内閣総理大臣は、同法第十五条第二項の規定に基づき原子力緊急事態宣言をするとともに、同法第十六条第一項の規定に基づき、内閣総理大臣を本部長、主務大臣を副本部長とする原子力災害対策本部を設置するものとされており、同法第十七条第八項の規定に基づき設置される現地対策本部において、必要に応じて事故発生場所を管轄する都道府県及び市町村に対し事故現場周辺の住民避難等の指示を行うなど、一般公衆の安全を確保するために必要な措置を講ずることとなる。

二について

 核燃料物質の運搬に関しては、安全規制担当省庁(経済産業省又は文部科学省及び国土交通省。以下同じ。)その他の関係省庁が、原子力事業者又は原子力事業者から運搬を委託された者(以下「原子力事業者等」という。)に対して核燃料物質の運搬を行う際にとるべき措置について指導している。原子力事業者等は、その指導に基づいて輸送物積載車両のほかに伴走車両を配置した輸送隊の編成、事故発生時の緊急連絡体制の確立等の措置をとっており、仮に事故が発生し、輸送物積載車両の乗員が重大な障害を負ったとしても、伴走車両の乗員による通報等により、関係機関に迅速な通報が行われるものと承知している。

三について

 運搬中の核燃料物質については、原子力施設内にある場合よりも不法移転及び妨害破壊行為(以下「妨害破壊行為等」という。)に対しぜい弱であり、適切な核物質防護対策をとる必要があるため、政府としては、運搬中の核燃料物質に対する妨害破壊行為等を未然に防ぐという観点から、原子力事業者等及び原子力事業者から協定に基づいて情報提供を受けている地方公共団体に対し、運搬日時、経路等の運搬に係る詳細な事項について、適切な情報管理を行うよう要請してきたところである。
 他方、核燃料物質の運搬に当たっては、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号。以下「原子炉等規制法」という。)等に基づき、その安全確保のために十分な措置を講ずるとともに、万一事故が発生した場合でも、一についてで述べたとおり、事故の際に対応すべき範囲が極めて狭い範囲に限定されること等の輸送の特殊性にかんがみれば、原子力事業者等と国が主体的に防災対策を行うことが実効的であることから、原子炉等規制法、原子力災害対策特別措置法等に基づき、迅速に安全確保及び災害対策を図るための対応体制を整えているところである。
 また、核燃料物質を運搬する者は、原子炉等規制法第五十九条の二第五項の規定に基づき、核燃料物質の運搬の経路である区域を管轄する都道府県公安委員会に対し、運搬日時、経路等について事前の届出を行っているところである。
 したがって、政府としては、運搬日時や警備体制等、事前に公開することにより核物質防護の実効性を損なうおそれのある情報については、今後とも慎重に取り扱うべきであると考えている。

四について

 原子炉等規制法第六十四条第一項の規定により原子力事業者等は、地震、火災その他の災害が起こったことにより、核燃料物質による災害が発生するおそれがあり、又は発生した場合においては、直ちに応急の措置を講じなければならないこととされており、また、関係省庁においても、核燃料物質の運搬を行う輸送隊には、核燃料物質の取扱いについての専門家を同行させるよう指導しているところである。
 また、このような場合においては、同条第三項の規定に基づき、経済産業大臣、文部科学大臣又は国土交通大臣は、緊急の必要があると認めるときは、原子力事業者等に対し、核燃料物質による災害を防止するために必要な措置を講ずることを命ずることができるとされている。

五について

 核燃料物質運搬中の事故が発生した際は、国及び原子力事業者等が緊急事態応急対策を主体的に講ずることとしているが、この考え方に基づき、事故が発生した場合には、原子力事業者等が直ちに応急の措置を講じ、また、安全規制担当省庁においても、速やかに関係省庁事故対策連絡会議を開催するとともに、国の職員及びあらかじめ登録された放射線医学総合研究所、日本原子力研究所、核燃料サイクル開発機構等に所属する専門家を現場へ派遣することとしている。
 また、放射性同位元素使用施設等については、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和三十二年法律第百六十七号)第三十三条第一項の規定に基づき、放射性同位元素の使用者等は、地震、火災その他の災害が起こったことにより放射線障害のおそれがある場合又は放射線障害が発生した場合においては、直ちに応急の措置を講じなければならないこととされているとともに、関係省庁においても、放射性同位元素の使用者等からの連絡に基づき安全確保に必要な措置を講ずることとなる。

六について

 アメリカ合衆国(以下「米国」という。)原子力軍艦が我が国に寄港するに際しては、千九百六十四年八月二十四日の「外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明」(以下「声明」という。)に基づき、米国海軍は、外務省に対し、通常、入港の少なくとも二十四時間前に、その原子力軍艦の寄港地、入港予定時刻、停泊又は投びようの予定位置等について通報(以下「事前通報」という。)を行っている。米国原子力軍艦が寄港する際には、この事前通報を受けて、文部科学省、海上保安庁及び関係地方公共団体が緊密な連携の下に放射能調査を実施している。
 また、我が国に寄港した米国原子力軍艦において原子炉に係る事故が発生した場合を想定した緊急連絡網が整備されており、事故発生時には、在日米国大使館が外務省に対し通報し、これを受けて、外務省が関係地方公共団体を含め国内関係当局に対し連絡することとされている。米国政府は、事故の発生により航行不能となった米国原子力軍艦を安全な状態とする責任を負う旨声明において明らかにしており、我が国政府は、米国政府に対し、適切な措置を講ずるよう要請することとなる。
 政府としては、米国原子力軍艦の寄港に際しては一層の安全確保と事故防止に万全を期すよう、今後とも米国政府に対して申し入れてまいりたい。



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